広がる「育成型」AO入試 出願前から高大連携で進路指導

高大接続に向け、九産大では昨年4月、芸術学部の授業に高校生も加わり、広告のアイデアを出し合った
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AO入試志願を前に昨年10月、パソコンソフトを使った芸術学部の授業を受ける高校生
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高い中退率、18歳人口減も背景

 学力ばかりではなく、生徒の個性や適性を重視した大学入試「AO入試」で、「育成型」と呼ばれる新方式を導入する大学が増えている。出願前から高校と大学が連携し、生徒の面談などを通じ、より的確な進路選択につなげる狙いがある。背景には、大学入学後の高い中退率や18歳人口の減少などもあるようだ。

   ◇   ◇

 九州産業大(福岡市東区)は2017年度から、育成型A0入試を導入した。同大は2001年度にAO入試を導入。書類審査や面接で合否を判定しているが、中退率が9%と全体平均の約2倍に上る。

 同大学では「大学の意向と高校生の間に、何かミスマッチが生じている」として、出願前の段階から高校生と面談し、進路指導に関わることにした。

 「漫画家になりたいので、芸術学部に入りたい」という高校生には「うちの芸術学部のどういった特色に魅力を感じていますか」などと質問。「数学が苦手なので、経済学部に入りたい」という生徒には「経済学部には数学の力も必要」などの助言もしたという。

 面談結果については離島以外、大学担当者が高校を直接訪問して伝え、進路指導に活用してもらった。

 志望する学部学科の授業を、実際に大学生と一緒に受講してもらい、リポートにまとめる機会も設けた。遠方からインターネットを使って授業を受講する生徒もいた。リポートは800字程度。何を学んだのかなど、授業の要約や自分の考えをまとめる。自身の適性や進路を考え、大学の授業を事前に体験できるメリットがある。

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 本年度、事前面談を実施した高校生235人のうち208人が出願。基礎学力テストと面接で78人が合格した。同大には毎年約2700人が入学し、AO入試での入学者が2割弱を占め、増加傾向にある。

 高校側の評価は上々だ。「大学と高校の間でどんなミスマッチが生じているのか、事前に分かり、指導に役立つ」「大学と高校の段差を解消する『高大接続』にもつながる」などの意見が寄せられたという。

 背景には、18年度から始まる18歳人口の減少もあるようだ。大学入学者数が減少する中、大学側は経営に危機感を募らせている。高校在学中から進路指導にあたることで、より大学の実態を知ってもらいつつ、入学者を確保し、中退率も減少させようとする狙いもあるようだ。

 文部科学省は14年度、大学を支援する「大学教育再生加速プログラム」で、追手門学院大(大阪府)が導入した育成型AO入試を初めて採択。同大は9月にも合格が決まるため、残りの期間、勉強をしない学生が続出。AO入試で合格した学生の成績が、一般入試の学生に比べて低い傾向にもあり、高校との連携を深めたという。

 育成型AO入試はこのほか、愛知東邦大(名古屋市)▽北陸大(金沢市)▽武蔵野大(東京都)▽北海道科学大(札幌市)などでも導入されている。

 文科省の山田泰造・入試室長は「AO入試は、生徒の個性重視の入試選抜方式として広がっているが、合格発表時期や評価方法を含め、見直すべき点も少なくない。『育成型』の導入は、高大接続という視点も含めた、新たな取り組みとして注目している」と話した。

 ◆A0入試 アドミッション・オフィス入試。学力検査だけではなく、面接や小論文、集団討論を通じ、生徒の能力や適性を総合的に評価する選抜方法。1990年度、慶応大が初めて導入。文科省によると、2014年度は大学の全入学者(59万9234人)の8.6%に当たる5万1362人がAO入試を利用。2000年度のAO利用者(8117人)の6.3倍に上った。

 ◆高大接続改革 高校教育、大学教育、大学入試を含め、高校と大学の接続のあり方を見直す動きが広がっている。2014年の中央教育審議会(文科相の諮問機関)の答申に基づく。グローバル化、人工知能(AI)の時代に対応した動きで、大学入試センター試験に代わり、21年1月に実施される「大学入学共通テスト」もその一環。高校と大学の段差を解消し、学力の3要素(知識・技能の習得▽思考力・判断力・表現力▽主体的、対話的で深い学び)を連携して育成していく狙いがある。

=2018/03/25付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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