連携の春(1)義務教育学校 新制度に島は悩む

5年生の教室で音楽を教える崎野光遥講師(左)。映像や自身の歌声を交えながら、世界各国の音楽について教えていた=3月14日
5年生の教室で音楽を教える崎野光遥講師(左)。映像や自身の歌声を交えながら、世界各国の音楽について教えていた=3月14日
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今のままじゃ駄目なの?

 海も空も青かった。福岡県宗像市の離島にある大島小中学校。取材に訪れた3月中旬、ベランダには布団がずらりと掛けられていた。渡船の欠航時、先生たちが寝泊まりするためのものだという。チャイムはなく、授業の時間になれば、子どもたちは自然と教室に入った。

 児童4人の5年生の教室では音楽の授業が始まった。

 「ウーイーウーウー…」

 崎野光遥(こうよう)講師(28)がモンゴルの伝統唱法「ホーミー」を自ら歌ってみせる。甲高い声とうなり声が同時に混じり合う。

 「いくつ音が聞こえる?」

 先生の問い掛けに、子どもたちは「二つ!」「高い音と低い音が聞こえる」。

 「モンゴルではどうしてこんな歌声が発達したのかな」「モンゴルはどんな場所?」

 ホーミーの成り立ちから始まり、ヨーデル、グレゴリオ聖歌…。「世界の国々の音楽」をテーマに、国の位置、文化や宗教、唱法の違いや共通点を学ぶ授業だった。

 崎野講師はもともと中学、高校の音楽の先生だが、この島では中学3学年に加え、小学3~6年生の授業も受け持つ。

 「歌唱指導などは、小学校から積み上げられるので、やりやすい。小学生に分かる言葉や漢字を選ぶ作業は大変ですが」

   ◇   ◇

 人口約660人の島には小中学校が別々にあったが、校舎新築を機に2004年度から同じ校舎で学ぶようになった。

 06年度からは、学年の区切りを旧来の「6・3」から「4・3・2」に変更した。小1~小4を「前期」▽小5~中1を「中期」▽中2、中3を「後期」と分け、1~9年生と呼んでいる。

 授業では、音楽の他に理科、社会、保健体育、図工の計5教科で、中学校の先生が「兼務教員」として、小学校の授業も教える。小学校から連続して指導に当たることで、児童の理解度やつまずきのポイントも分かり、中学校の学習にスムーズにつながっているという。

 そんな中で昨年夏、学校に市教育委員会から提案があった。「新年度から『義務教育学校』にしたい」

 義務教育学校は、16年度から導入された新制度で、中1ギャップの解消や学力向上に向けた取り組み。全国でも広がりつつあるが、地域や学内からは疑問の声も上がった。

 「今のままの形ではどうして駄目なんですか?」

   ◇   ◇

 「小中一貫をもう一歩前へ進めたい。『学びのつなぎ』をより強くするための改革」。大島中の竹原誠校長は導入の狙いをそう説明した。

 例えば職員室。同校では前、中、後期のグループごとに机が集められている。中期グループでは小中の先生が向かい合って座る。ところが、中学校の先生は休み時間、職員室に戻るが、小学校の先生はほぼ終日、担任の教室にいる。渡船の最終便も午後6時なので放課後もバタバタ。小中の先生がじっくり話し合える時間は、意外と限られているという。

 小中の「学校文化」の違いも根強く、実態として「6・3」の壁が残っているそうだ。

 義務教育学校になれば、小中両方の免許を持つ先生が増え、より柔軟にカリキュラムが組めるようになる。同校では4月から、6年生の全授業で教科担任制を導入する予定だが、まだ「答え」が出ない課題も少なくない。

 教科担任制は小学生のどこまで拡大するのがいいのか。部活動は小学生も参加すべきか。小学校でやっている朝の集会、中学校の朝学習、これも統一した方がいいのか…。

 義務教育学校「大島学園」の開校式は6日。それは「小中一体」の新たな形に向けた、模索の始まりでもあるようだった。

 ◆義務教育学校 学校教育法改正により導入された新制度。旧来の小学校6年、中学校3年の「6・3」ではなく、地域の実情に応じて「4・3・2」「5・4」などの区切りが可能になる。旧来型の小中一貫校では、それぞれの学校に校長を配置し、教職員組織も別だが、義務教育学校では組織が一体化され、校長は1人になる。教員は原則、小中両方の免許が必要。文部科学省によると、2017年度現在、全国に48校あり、18年度には新たに25校で設置される見込み。

=2018/04/01付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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