連携の春(2)全国初 山里の中高一貫校

五ケ瀬中等教育学校で3月にあったGF学習の発表会。4年生(高校1年)はテーマの研究状況をグラフやイメージ図を使い発表した
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地域との接点を見つめ

 新緑と絶景が広がる山道。ハンドルを右へ左へ。宮崎県延岡市から車で1時間。五ケ瀬中等教育学校(五ケ瀬町)は1994年、全国初の公立中高一貫校として開校した。1学年40人が全寮制で暮らし、「学びの森」と呼ばれる。

 学びの目玉は「グローバルフォレストピア(GF)学習」。3時限ぶっ通しで隔週、自ら立てた課題の答えを探究する。1、2年は郷土の自然や文化に親しむ「ローカル学」▽3~6年はそれぞれのテーマ研究を進め、視野を世界に広げる「グローバル学」とし、研究発表する。

 2020年度から全国で導入されようとしている「アクティブ・ラーニング」(生徒同士の学び合い)にも既に取り組む。各学年1~2人、計7人程度で縦割り班をつくり、先生が「親」、上級生が「兄、姉」となる「ファミリー制度」を導入。学びの共同体を作っているという。

 各地で広がる公立の中高一貫校。同校はそのトップランナーだが、道のりは平たんではなかった。

   ◇   ◇

 全校生徒229人のうち、五ケ瀬町出身者は5人ほど。町出身でこの春、6年生になる岡田万実さんは「地元から見れば、学校は異質な存在だった」と振り返る。

 卒業1期生で今は教壇に立つ上水陽一教諭(39)によると、開校当時は交通の便が悪く、週末は町内にとどまる生徒が多かった。道路が改良され、やがて実家に帰ることも容易になったが「地元と学校の接点をどこに見いだすか」が課題だった。

 転機は14年度。グローバルな人材育成を目指す、文部科学省のスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定を受けたことだった。

 町の人口は約3700人。半世紀前に比べて半減し、過疎や少子高齢化などの問題が深刻化していた。

 「もっと生徒が地域課題に引きつけた問いを立て、探究できないか」

 地域の現実にも直結する「環境」「経済格差」「エネルギー」「高齢化」の四つの視点から、英語による討論なども盛り込んだ新カリキュラムを導入した。

 3月16日にあった発表会では、4テーマについて、この春6年生(高校3年)になる代表が登壇した。「経済格差」について研究してきた日高波美さんは、5年生が町立中の3年生と学び合う「無料塾」の取り組みを発表し、最優秀賞に輝いた。

 日高さんは、町で進む少子化、都市への人口流出の一因を「教育環境」にあると考え、無料塾の立ち上げに奔走した。「町内外の子どもが集まって学び合う場をつくれば、地域への肯定感は高まるのではないか。中学生と一緒に取り組み、つながりを実感できた」と話した。

   ◇   ◇

 私立校で見られた中高一貫の取り組みが、公立校でも広がり始めたのは2000年代に入ってからだ。宮崎県内でも宮崎市と都城市で県立高校の付属中ができ、中高一貫の流れが加速している。

 発表会で、県教委の担当者は「全国で競合が始まっている。探究テーマを他の人と共有し、問いや仮説を『化学変化』させ、バージョンアップすることが求められる」。単に高校入試がない負担軽減メリットや大学入試対策ばかりではなく、これからは各学校の教育の中身が問われる、ということだ。

 「ヤマメ釣りのできる東大生を育てる」。それがこの学校が開校当初から掲げるスローガンだ。「生徒が地域に溶け込みながら、探究を深めていく」。上水教諭はそう理解している。

 「グローカル」という言葉がある。ローカルとグローバルを重ねた造語で、「草の根」の地域の学びの中にこそ、実は地球規模の広く深い学びの種があるという考え方だ。

 開校から四半世紀。生徒も先生も、そんな原点を見つめ直しているようだった。

 ◆フォレストピア宮崎構想 1987年、当時の松形祐堯(すけたか)・宮崎県知事=故人=が「人間性回復の森林」を理念に打ち出し、五ケ瀬町など県北の山村地域が対象になった。フォレストピアは「フォレスト(森林)」と「ユートピア(理想郷)」の造語。五ケ瀬中等教育学校は、構想の一つである「学びの森」の中核として整備された。

=2018/04/08付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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