生徒が部活動運営、驚きの取り組み 顧問の“拒否権”も 横浜の高校

静岡市であった教研集会の分科会。部活動のあり方についても議論された
静岡市であった教研集会の分科会。部活動のあり方についても議論された
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生徒が顧問選び契約各種行事も自主運営

 目からうろこの部活動の姿だった。静岡市で2月にあった教育研究全国集会(教研集会)。「生徒の自主性」などがテーマになった分科会で、神奈川県立希望ケ丘高校(横浜市)の先生はこんな発表をした。

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 〈部活動の顧問は、学校がお膳立てするのではなく、生徒が先生と交渉して決める。学校対応で納得がいかないことには、生徒が「公開質問状」を提出し、学校全体で話し合う〉

 先生たちの負担要因の一つになっている部活動。各部の生徒たちは毎年、顧問になってもらいたい先生と直接交渉し、約束事や条件を決める。「家庭の事情で土日の練習は見られない」と先生が言えば「じゃあ練習は平日だけにしよう」と折り合ったりするのだという。

 「顧問一人では荷が重い」という場合は、複数の先生と顧問契約を交わすことも可能で、8人の顧問がいる部活動もある。先生には「拒否権」もあり、契約は1年単位で更新。顧問が決まらなければ廃部という原則のため、生徒たちは必死に条件や活動内容を考え、交渉する。

 発表したのは駒村吉則教諭(58)。顧問を務めるラグビー部では、部費の管理や会計処理、用具の注文購入、活動届けなどの書類提出も全て生徒がこなしているそうだ。

 学校・先生中心ではなく、あくまで生徒同士の話し合い、生徒と先生の話し合いで運営していることに、私ばかりでなく、他校の先生たちからも驚きの声が上がった。

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 同校は1897年、神奈川県初の旧制中学校として創立された進学校でもある。東大安田講堂で学生と機動隊が激突した1969年、この高校でも生徒たちが声を上げ、生徒心得(校則)と制服が廃止された。「自律自制」を校訓とする。

 部活動に加え文化祭、合唱祭、球技大会なども、生徒が企画運営する。先生たちは「生徒指導部」ではなく、「生徒支援部」(8人)を置き、支援に徹しているという。

 合唱祭では、生徒たちが話し合い、書類提出が遅れたクラスには「ペナルティー」として、減点するルールに。行事運営のルールは「むしろ先生が決めるより厳しい」という。

 2009年には校舎の耐震補修工事をめぐり「仮設のプレパブ校舎を建てる場所が納得いかない」との質問状が生徒から提出され、校長が翌週の全校集会で説明したそうだ。

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 この取り組みの評価は分かれた。

 生徒の自主・主体性を尊重する運営を評価する声が多かったが「全ての学校で同じようにできるとは思えない」「教師の指導者意識が低くなるのでは」との声もあった。つまり進学校だからできると。

 駒村教諭は「私たち教師は、生徒にできることまで、やり過ぎているんじゃないかな。(教師が)言いたい、やりたいことを我慢し、生徒にやらせてみることが大切だと思う。学校に生徒がいるのではなく、生徒がいるから学校があるのですから」と話した。

 先生たちの多忙化軽減に向け、部活動をめぐっては本年度から、部活動指導員の導入(アウトソーシング)、休養日を設けること(メリハリ)などの文部科学省指針が示され、学校現場で導入され始めた。

 でも部活動の主役って、先生ではなく生徒。本来は生徒たちが練習計画を立て、リーダーを決め、それぞれの目標に向かって、心身の学びを積み上げていく。そんな場であることを忘れたくない。

 「先生が『指導』するのではなく『支援』することが、本来のあり方ではないか」

 駒村教諭はそうも話した。各学校の目指す方向やそれぞれの事情もあるだろうが、つい忘れがちな視点を突きつけられた気がした。

 

 ◆部活動 教育課程外の活動で、生徒の自発的な参加が原則。その一方で、スポーツ庁の2016年度調査によると、「教員全員が部活動の顧問になる」ことを原則としている中学校は約9割に上り、全生徒の部活動への加入を事実上、義務付けている学校も少なくない。日本の教員の課外活動時間は国際的にも突出して長く、部活動は深刻な長時間労働の一因になっているという指摘もある。同庁は3月、国公私立中学校について「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定。学期中は1日の活動時間を平日2時間、休日3時間程度までとし、週2日以上の休養日を設けるよう求めた。高校の部活動にも原則適用される。

 

=2018/05/13付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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