道徳の教科化(4)通知表 悩める記述式評価

小学1年生が使っている道徳の教科書。親や子どもたちは初めて受け取った通知表を見て…
小学1年生が使っている道徳の教科書。親や子どもたちは初めて受け取った通知表を見て…
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授業外の姿は評価の「対象外」

 多くの小学校では20日、1学期の終業式を迎えた。待望の夏休みを前に、緊張した面持ちで通知表を受け取った子どもたち。通知表には、本年度から特別の教科・道徳の成績評価も加わった。国語や算数のような数値評価ではなく、記述式で評価される。先生たちは何を根拠に、どう評価したのだろう。

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 〈「人をいやな気持ちにさせるわがままをしたらいけないと思う」と感想を書いていました〉

 先生らを対象にした道徳教育の学習会(8日掲載)では、小学1年生の教科書に登場する「かぼちゃのつる」の評価が議論になった。

 カボチャを擬人化し、元気なつるの成長が隣のスイカ畑や子犬の生活圏、車社会にまで広がり…。そんな物語風の教材で、「わがまま」や「共生」がテーマになっている。

 仮にある先生が、こう記述評価した場合、この視点は妥当か?

 「子どもの感想を取り上げ、評価することは、特定の価値観の押し付けにつながらないだろうか」

 会場からはそんな疑問の声も。

 学習指導要領の解説書では「他の児童との比較ではなく、児童がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め、励ます」「個々の内容項目ごとではなく、大くくりなまとまりを踏まえた評価」などと、評価の考え方が示されている。

 ある自治体も「評価の手引き」として、授業についての児童の感想や、ワークシート(補助教材)などに書いた振り返りの内容を書くことを、指針として示している。

 でも、現場の先生たちは思い悩んでいる。「本人の成長は1時限の授業の中だけでは捉えられない」「授業の中で光り輝いたところを、児童に教えてあげることこそが評価だ」

 学習会では、先生向けの検討資料として、福岡県教育総合研究所が作成した評価文例も示された。

 「友だちの意見を聞き、自分と違った意見に対してもしっかり考え、そのよさを認めることができています」「授業で考えたことや気づいたことを、自分の実際の生活とつなげていこうとしています」

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 道徳の授業で学んだ思いやりの心を、子どもたちが実生活でどう生かすか。「心のバロメーター」(1日掲載)の授業に取り組んだ先生は、単なる授業の学びで終わるのではなく、課外キャンプでの子どもたちの行動を楽しみにしていた。

 ただ、道徳の評価はあくまで授業場面に限られ、キャンプでの行動は評価対象外。仮に思いやり、助け合いの行動があったとしても、それが授業効果によるものか、判別できないからだ。そうした子どもたちの「好プレー」は通知表の「総合的な所見」の欄に記述するという。

 通知表の様式は各学校で異なり、道徳の評価を毎学期実施する学校もあれば、年1回の学校もある。

 この小学校では2学期制が導入され、国語や算数は前後期の学期ごとに通知表で評価するが、総合学習や道徳の評価は年1回。授業中の発言や作文、ワークシートの記述から総合評価したいと考えている。

 校長は「子どもたちの行動を突き動かしている道徳的価値は多様で、複雑でもあり、行為の裏にある心までは見えない。優しい心と言っても、厳しく注意する優しさだってある。1年間の学習を通し、級友の発言などから自分なりの考え方をどう広げ、自分自身を見つめる視点や気づきが生まれたか。心の成長という観点から評価したい」と話した。

 でも先生たちがあれこれ考慮すればするほど、通知表は何だか味気なく、当たり障りのない内容になっていくようで、親や子どもの立場から考えると、そうした通知表そのものの「評価」はどうなのか、とも考える。

通知表

 児童生徒の学校での生活状況について、保護者に伝えるための連絡簿。それぞれの学習・健康状況を記録する「指導要録」は、各学校での作成が義務付けられているが、通知表の作成は学校判断に任されている。ただ、大半の学校で発行され、様式も多様。「通知表」「通信簿」「あゆみ」など、名称も学校によって異なる。

 かつての5段階評価では、各クラスで5=7%▽4=24%▽3=38%▽2=24%▽1=7%-とする「相対評価」が主流だった。ゆとり教育が本格実施された2002年度から、それぞれの学習到達度を認定する「絶対評価」に転換した。

=2018/07/22付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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