高大接続改革(3)模索 高校の現場から

大学入試改革をテーマに開かれた1年生の進路講演会。多くの保護者も参加し関心の高さを示した=福岡市の城南高校
大学入試改革をテーマに開かれた1年生の進路講演会。多くの保護者も参加し関心の高さを示した=福岡市の城南高校
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「正解」見えない不安

 大学入学共通テストの導入など2020年度に始まる大学入学者選抜改革。学力の3要素((1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力(3)主体性を持ってさまざまな人と協働して学ぶ態度)を問い、多面的・総合的に評価するといった、その理念に対し、具体像はなおつかみにくい。新たな入試に臨む高校の現場は、「正解」の見えない不安を抱えながら試行錯誤を続けている。

 13日、福岡市の県立城南高で、1年生約400人と保護者を対象にした進路講演会があった。テーマは、彼らが最初の受験生になる共通テストとの向き合い方。教育支援事業などを行う企業の担当者は、求められる学力などを生徒らに説明し「先生方には『教える』から『学び合い』へ、保護者も子どもの『保護者』から『自立支援者』へ、意識を変えることが重要だ」と強調した。

 毎年、この時期に開く講演会で集まった保護者は例年以上。藤田昭男副校長は「保護者の関心は高い。学校もやれること、やらなければならないことを手探りで始めている」と話した。

 城南高は、アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)を取り入れた授業の改善、定期考査などでの問題作成の工夫、生徒の主体性を伸ばす取り組みを柱に取り組む。具体的には、英語での3人ずつの即興型ディベートや、身近な場面を設定した数学の設問、活動記録のまとめと自己評価の記述などだ。

 「結果として新たな入試の対応になっているが、これまで取り組んできたことの延長上にある」と、進路指導を担当する主幹教諭の下田浩一さんは言う。素地になっているのが、同校独自のキャリア教育「城南ドリカムプラン」だ。学習内容の大幅削減への危機感などを背景に、生徒の学びの動機づけを目指して始めた事業も今年で23年になる。

 社会人講演会や地域探究講座など多彩なメニューをそろえ、生徒たちは自ら学んで議論し、発表することを重ねてきた。下田さんは「曲折はあったが方向性は間違っておらず、教員の熱意にもつながっている」。同校の職員研修では、教員も少人数グループで話し合うアクティブ・ラーニングを実践しているという。

   ◇   ◇

 宮崎県の県立宮崎大宮高(宮崎市)はここ数年、抜本的な授業改善に取り組む。宮崎県は、居住区域ごとに通える学校を定めた普通科高校の通学区域制度(学区制)を10年前に撤廃した。同校にも広い地域から生徒が集まるようになったが、習熟度に幅が見られ、これまでの画一的な詰め込み式教育の限界が浮き彫りになったという。

 進路指導部長を務める山崎慎一教諭は「朝課外、放課後の夕課外を含めて宿題と小テストを繰り返してきたが、中上位層の伸び悩みが顕著だった。ただ鍛えれば良いのではないことに気付いた」と話す。

 同校は、修猷館高(福岡市)や鶴丸高(鹿児島市)など他県の県立進学校に教員を派遣するなどして指導法を学び、課題の精選、課外授業の削減などを実施。生徒の学習定着度をみるため途絶えていた校内模試も復活させ、教科ごとに全学年の教員で記述式の問題などを作成するようにした。

 県内高校の進路指導担当者でつくる進学指導研究会のまとめ役でもある山崎さんは「不安を抱く高校もある。ただ、例えば共通テストの変化も記述式の導入など冷静に見れば一部にすぎない。あれこれと手を出すのではなく、今の路線を着実に進めていきたい」と語った。

 一方、外国人とのオンライン英会話など英語教育の充実や小論文指導による記述式問題への対応、情報通信技術(ICT)教育の推進など、特色作りに力を注ぐ私立高校。福岡県の私立高校教諭は「教育は生もの。形を変えればうまくいくというものでもなく、日々模索している」。

 16日、福岡市で講演した文部科学省初等中等教育局視学官の大滝一登(かずのり)さんは「単にいい大学に入れば良いという時代は終わり、大学の合格者数などで高校の価値も決まらなくなる」と指摘。複雑化する社会に対応できる能力を育てることが改革の目的とした上で「現場には困難を要求しているのかもしれない。しかし特効薬はない」と訴えた。

カリキュラム・マネジメント 子どもたちや地域の実情を踏まえて各学校が設定する教育目標を実現するため、発達段階や学習能力に応じた教育課程(カリキュラム)を編成、実施、評価して改善を図っていくこと。2020年度から順次実施される小中学校、高校の次期学習指導要領では従来の学年や教科別の枠組みを超えて学校全体で取り組む必要性を強調。教科横断的視点での組み立てや、授業増に対応する時間割の工夫、地域など外部資源の活用などを通して「学習効果の最大化」を求めている。

=2018/09/23付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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