高大接続改革(5)先進校 注目公立校の取り組みとは

パソコンの前に座り、論文の執筆を進める堀川高校の生徒たち=京都市中京区
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 一見すると大学入試とは無関係のような学習に力を入れ、高い進学率で注目を集める高校が京都市にある。同市立堀川高。約20年前に「人間探究科」と「自然探究科」というユニークな学科を設け、難関国立大への合格者数を飛躍的に伸ばした。同校を訪ねると、生徒の学習意欲を徹底的に引き出す手法と、それを望んで受け入れる生徒の姿があった。目指しているのは「自立する18歳」だ。

探究を授業で先取り

 9月中旬、堀川高の一室で1年生約40人がパソコンに向かい黙々と論文の執筆を進めていた。探究科、普通科に在籍する1年生全員が取り組む探究活動(週1回2コマ)。18歳選挙権や生物との共存など用意されたテーマから一つを選び、まとめる作業の最中だった。

 「1年生はまだ探究の『型』を学ぶ時期。次の段階で答えのないテーマを自ら設定し、悩み考え続けていくことになる」と谷内秀一校長(57)は話す。

 同校は2学期制。探究活動は1年半で完結し、1年前期は基礎学習、後期にクラスを横断したゼミに入りテーマを絞り込む。2年前期に調査研究を通して主張を整理、ポスター発表などをした上で論文に仕上げる。

 大きな節目は1年後期の始まり。10人程度でつくるゼミには生物や国際文化などの分野があり、生徒たちはその中で「何を問い、何をすべきか」を徹底的に練る。活動の重要なポイントになるだけに教員も「答えが既に知られていないか」「社会とどのような関わりがあるのか」「理由と根拠を示して答えを導き出せるのか」と問い続ける。加えてOBの大学院生らも活用、助言役を担う。

答えのないテーマ設定

 同校によると、テーマをなかなか絞り込めない生徒が一部にいるとはいえ、難産の末に決まれば自ら考えて一気に動き始める。そしてまた次の壁にぶち当たり、考え、疑問点を解くということを繰り返すという。

 生徒たちはもちろん探究活動だけをしているわけではない。国語や数学などの通常授業も部活動もある。「すごく忙しくていっぱいいっぱい」「中学では考えられなかったけど、休み時間に友達と勉強するのが日常的」。そんな声が生徒から漏れるが、表情に悲愴(ひそう)感はうかがえない。

 探究活動を通じて育まれる主体性と時間の使い方。それは海外研修などの学校行事の組み立てや委員会活動にも生かされる。昼食後のわずかな時間、教室で打ち合わせをしている集団があちこちで見られた。

 「皆が一生懸命」「3年間を本気で過ごした」「加速度的な成長を遂げた」。卒業生は、学校生活をそう振り返った。

主体性育み難関大突破

 同校に探究科が設置されたのは1999年度。私立人気の高まりで公立離れが進む中、特色ある学校作りを目指す京都市教育委員会の高校改革に現場の意向も踏まえて創設された。

 与えられた使命はもう一つ。進学実績だ。同校では3年生になると、学習の中心が探究活動から進路実現となる。「高い目標を掲げて自らの課題を考え、筋道を立てて行動する。その力は生きている」と谷内校長。生徒は探究活動によって自分はどうありたいのか、進学して何を学ぶのかを明確に述べることができるようになっているという。

 探究科1期生が卒業した2002年春、これまで5人前後だった同校の国公立大現役合格者は100人を超えた。結果が伴ったことで教員側の意識も変わり、進学実績は現在も維持。浪人生を含めた京都大、東京大への進学者は毎年40~60人に上る。

 谷内校長に今後の入試改革に向けた対応を尋ねた。

 「進路保障のため授業の“味付け”は変えるかもしれない。しかし入試が変わる理由を考えると、『自立する18歳を育てる』という堀川の最終目標に揺るぎはない。何をしていいか分からない大学生を増やさないためにも意欲やチャレンジを評価する入試が増えてくればいいと思う」

 変化や困難に自ら対応できる生徒を育て続ける同校だけに、これからの教育改革の荒波を前にしても視界は良好のようだ。

次期学習指導要領と探究  2022年度から高校で順次導入される次期学習指導要領では、生徒に求める資質や能力を社会につなぐことを重視。「何のために学ぶのか」を自覚させた上で「生涯にわたって探究を深める未来の創り手」として送り出す必要性をうたっている。従来の科目も「日本史探究」「地理探究」「理数探究」などと再編し、探究の要素を全面的に打ち出す。

=2018/10/07付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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