高大接続改革(7)連携の現場 あるべき姿求め

大学生らが先生役の課外授業で光の糸電話作りの指導を受ける高校生=福岡市の福岡工業大
大学生らが先生役の課外授業で光の糸電話作りの指導を受ける高校生=福岡市の福岡工業大
写真を見る

持続性に不安、議論熱く

 少子化への危機感などを背景にして中央教育審議会が1999年、必要性を訴える答申を出したことをきっかけに広がった高校と大学の連携。約20年を経て、さらなる「高大接続改革」という一体的な取り組みが求められる中、双方はあるべき姿を見極める動きを加速させている。

 5日、九州工業大が「高大接続」をテーマに同大サテライト福岡天神(福岡市中央区)で開いた研修会は熱気に包まれた。

 「大学側の出前講座は飽和状態。高校生は長期、定期的に大学生と活動する場を求めているが、受け入れてくれる大学はほとんどない」。福岡県立小倉南高進路担当の大神弘巳教諭の発言に、多くの参加者がうなずいた。

 参加したのは同県内の公私立高教諭ら21人。研修会では、新大学入試から重視される受験生の調査書や志望理由書、ポートフォリオ(活動記録)の評価に関する質問が相次いだ。大神さんは「高校の不安は大きい」と結んだ。

 九工大の安永卓生副学長(入試担当)は「高大接続改革の本丸は高校教育。そのためには入試が変わらないとだめだが、大学の独りよがりになることも懸念している」と語り、情報交換の必要性や大学側への要望を繰り返し求めた。

 大学側には九州大教育学部の木村拓也准教授も同席。木村さんは長崎大と九大で入学者選抜などを担うアドミッションセンターに勤務し、国立大学協会入試委員会のワーキンググループや大学入試センター新テスト実施企画委員会の委員も務めた。

 木村さんは、学びたい学問について問いも答えも自ら探るような大学での主体的な学びが高校でも求められている現状を説明。その上で「大学も高校との交流を通じて学生のさらなる学びにつながることを期待している。ただし“ウィンウィン”にならなければ互いに疲弊するだけで長続きはしない」と、共同作業による手法の工夫を訴えた。

   ◇   ◇

 そうした中でモデルケースになりそうなのが、福岡工業大(福岡市東区)が隣接する同大付属城東高と、2015年度から続ける課外授業。特徴は大学生が高校生を教える点だ。

 同大は科学技術分野で活躍できる人材を育てる「STEM教育」に「情報」を加えた独自の「i-STEM教育」を進めており、授業もその一環という。

 「大学の広報や入試で高大接続が叫ばれる一方、学生が不在になっていた。学生メインで何かできないかという思いがあった」と、指導する同大の丸山勲准教授(物性物理学)は狙いを語る。

 授業を受けるのは、将来のものづくりのリーダーを目指す電気科・電子情報科スペシャリストコースの16人。大学のパソコン教室や実験室などを活用して平日の放課後に年16回開かれ、先生役は大学生と大学院生14人が務める。

 授業は、科学実験やゲームのプログラミング、数式処理、論理回路設計など6テーマがあり、生徒は4人一組のグループに分かれて順に全テーマを受講する。微分方程式など高校では扱わないような高度な内容も含まれる。「高校数学は嫌われ者で、役に立つのか疑問に思う生徒もいる。でも大学の授業で必要と分かれば、高校で学ぶ意欲にもつながる」と丸山准教授。

 今月3日、授業をのぞくと各テーマで高校生たちが大学生らの説明を熱心に聞き入っていた。少人数指導で年齢の近さもあり、和やかな雰囲気が印象的だった。

 スマートフォンなどのゲーム開発にも使えるプログラミングの授業を受けた2年の宮本幸樹さん(16)は「大学の授業を先取りでき、知らない世界に触れられる。将来につながる有意義な時間」と目を輝かせた。

 一方、同大大学院情報システム工学専攻2年の宮本知佳さん(24)は授業にかかわって3年目。「学ぶのは自分自身が理解すれば良いが、教えるのは分かりやすく曖昧だったことも明確にしないといけない。自分の理解を深めることにもつながっている」と語った。

 高校生が大学に入って何をどう学ぶか。また、大学生も自らの学びを社会にどう生かすのか。高大接続の形は一つではない。

STEM教育 科学(Science)、科学技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字を取った理数系教育分野の総称。米国のオバマ前大統領が一般教書演説で触れるなどして注目された。日本でも、2020年度から小学校の次期学習指導要領に基づいてSTEM教育の一つ、プログラミング教育が必修化される。

=2018/10/21付 西日本新聞朝刊(教育面)=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]