模索する専門性(3)キャリア教育 新規事業を提案

訪問した企業のリソース(資源)を使った革新案について意見を交わす福岡舞鶴高の生徒たち
訪問した企業のリソース(資源)を使った革新案について意見を交わす福岡舞鶴高の生徒たち
写真を見る

 社会で求められる力と、学校の学びには隔たりがあるのではないか-。福岡市西区の私立福岡舞鶴高は、地元企業などの協力を得て9月から新たな取り組みを進めている。技術や人材、多角経営など企業の強みを探り、新規事業を提案しようというキャリア教育のプログラム。生徒たちはさまざまな力を培っている。

社会性と学びの隔たり

 中間考査を明後日に控えた11月20日の放課後。福岡舞鶴高の一室に1、2年の約60人が顔をそろえた。

 「先週、企業を訪問してリソース(資源)を探しましたね。誰も思いつかなかったリソースの使い方で、イノベーション(革新)を起こす方法を考えよう」

 担当の島田正親教諭(46)がこの日の課題を説明する。生徒たちは11月中旬、地元のIT企業などをそれぞれ訪問、社員から詳しい会社情報を見聞きしていた。14の班に分かれて次々と意見を付箋に書き出し、テーブル上の模造紙に貼り付けていく。

 「売り上げを細かく公開している」「良くしていくサイクルがある」「人脈がすごい」。意見は尽きない。各班は50分の授業で「革新案」を一つにまとめる作業を続けた。

 島田教諭は「今日の答えが結論ではない。具体的に練り始めたら難しく、変更もあると思います」。授業は全15回で、この日は7回目。最終的には各班がそれぞれの企画を発表する。

   ◇   ◇

 一連のプログラムは、学校支援事業などを展開する「教育と探求社」(東京)が提供した。同社は企業から与えられた課題の解決策などを子どもたちが練り上げて発表するプログラムを2005年から実践しており現在、全国の小中高約140校が採用している。

 同社の宮地勘司社長(55)は「プログラムを通じて誰もが自分らしく、創造的に生きられる社会を目指している」。それは、新学習指導要領が求める子どもの主体性にも通じる。

 今夏、同社から相談された福岡舞鶴高は「教員の授業のヒントにもなる」(島田教諭)と引き受けることにした。本年度の授業計画は既に固まっていたが、通常授業が終わった後、希望する1、2年生を集めて、授業を行うことにした。課外授業扱いにもかかわらず、当初見込んだ定員の倍に当たる生徒が手を挙げた。

 プログラムには福岡市の百貨店、岩田屋三越やIT企業「アンダス」、ラジオ局のラブエフエム国際放送が協力。学校で生徒に事業内容を説明し、企業訪問も受け入れた。アンダスの取締役事業部長の久保直樹さん(44)は「何かを生み出してくれる期待がある」と提案を楽しみにする。

   ◇   ◇

 参加した生徒にとって、どれだけ革新的なアイデアに仕上げられるかは、これからが勝負どころだ。

 5人の班のリーダーを務める1年の外戸口晴香さん(16)は「社会のありようをいち早くのぞける」と、プログラムに参加した。

 7回目の授業ではメンバーから出された複数の案を絞り込まず、班の意見としてそれぞれ残した。「どの意見がいいか、選ぶのではなく、全部をまとめ上げて別のアイデアを生み出したい」。普段の授業との違いについては「いつもは多くの知識を学べる。でも、この授業だと他の人の意見を聞いたり、調整したりしながら、物事を新しい視点で見ることができる」と声を弾ませる。

 授業ごとに集めている生徒の感想には「気付きがすごく増えた」「次までにもっと調べたい」と前向きな言葉が目立つという。普段はおとなしい生徒が多いというが「正解のない答え」を見つけ出そうと、皆が活発に意見を出していた。

 島田教諭は「日常の教科が社会でどう役立つのかを知ってほしい。教員に指示されて実行する(旧来型の)学習法には限界がある。われわれもどうやれば生徒の主体性を引き出せるのか考えている」と言う。

 普通科のみの同校で、予想を超える生徒が積極的に授業に臨む姿勢は、実社会に直結する学習を渇望しているかのようでもある。企画案を練り上げる生徒を見守る教員たちもまた、これまでの指導法を超えるアイデアを模索していた。

キャリア教育
 子どもや若者が将来、社会人、職業人として自立できるよう、必要な能力や態度を育てる教育。20世紀後半に起きた情報技術革新、急激なグローバル化に伴い、重要性が指摘されるようになった。変化に対応できる力を養うため、主体的に学ぶ面白さを体得させる狙いがある。中央教育審議会は1999年の答申で「小学校段階から発達段階に応じて実施する必要がある」と提言した。「キャリア」は単なる学歴や職歴にとどまらず、会社や地域、家庭の中で他者との関わりを通じて得られる自らの役割の積み重ねを指すとされる。

=2018/12/02付 西日本新聞朝刊(教育面)=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]