模索する専門性(4)商業高 ICTを駆使する

事前に作成しパソコンに保存した資料を教室のモニターに映し出し、発表する福岡女子商業高の生徒たち
事前に作成しパソコンに保存した資料を教室のモニターに映し出し、発表する福岡女子商業高の生徒たち
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1人に1台、パソコン貸与

 定員割れなどの影響で減少傾向にある商業高校。逆風の中、既存の高校にとっては、存在価値を高める教育の実践が急務となっている。私立福岡女子商業高(福岡県那珂川市)は昨夏、全生徒と教職員にタブレットとしても使えるノートパソコンを無償貸与し、授業にとどまらず日々の情報交換にも活用している。

 「“ふわとろ”の食感が伝わるような写真にしました」。10月下旬、同校の教室で情報ビジネス科の授業が行われていた。

 この日のテーマは、企業から仕入れた実際の商品を生徒が販売する学校行事「女子商マルシェ」の広告作り。2日間で1万人規模が訪れ、1千万円を売り上げるという一大イベントが1カ月後に迫っていた。

 生徒たちが発表に役立てているのは学校から貸与されているパソコン。事前に作成して保存していた資料を教室のモニター画面に次々と映し出しながら、説明を加えていく。

 発表を聞く生徒は自席でそれぞれのパソコンを開き、専用ソフトを使って発表の「良い点」と「改善点」を打ち込む。ノートやプリントへの手書きとは異なり、コメントは瞬時に教員の手元に届けられた。

多様な活用法、生徒が提案

 同校は1950年創設。市に移行する前の那珂川町が長く運営していたが、財政負担の重さなどから私立化を決断し移管先を公募、2017年4月から学校法人八洲(やしま)学園(横浜市)が運営している。

 同法人の和田公人理事長(58)が早速打ち出したのがノートパソコン「クロームブック」の導入だった。「将来、必要になるパソコンに慣れてもらいたい」と考えたといい、教育現場での情報通信技術(ICT)の活用は「諸外国では日常的であり、自然な流れ」との判断もあったという。

 同年8月に配備し、何にどう使うかは学校に委ねられた。濱田芳宏教頭(64)は「教員が使い方を覚えて生徒に教えることと並行し、生徒にも主体的に活用法を考えてもらい、新たな学びの形を探った」と話す。

 校内には無線LAN「Wi-Fi(ワイファイ)」が整備され、生徒は自宅で充電したパソコンを持ち運ぶ。各家庭のパソコン所持率は半分ほどといい、早い時期からキーボードの入力になじめる利点が、まずは注目された。

 教員と生徒のやりとりのスピード感も増した。進学を志望する3年の山口結さん(18)は志望動機を書き上げる際、教員と頻繁にメールでやりとりした。夜中に自宅で作成すると、その場でメール。「素早く添削してもらえるのがありがたい」。学校で教員の空き時間を狙って質問しなくても、メールを送っておけば返信をもらうことができた。

 準備期間が1週間に限られる体育祭の練習にも生かされた。これまで予定を合わせ集まって練習していた出し物のダンス。手本となる動きを撮影した動画をパソコンで共有し、それぞれが自宅で練習、本番に備えた。

社会で生きる主体性育成

 福岡女子商業高の卒業生は、進学と就職がほぼ半々で推移している。求人は1人当たり3、4社の募集が毎年寄せられているといい、濱田教頭は「普通科だけの高校とは異なり、絶対的な実績がある。(最近の各業界の)人手不足とは関係なく、企業に信頼してもらっている」と強調する。

 進学でも利点はあるという。その一つが、2020年度の大学入試改革により民間検定試験が評価基準に加わること。同校では授業で英語のGTECの対策に取り組んでおり、学校で試験を受けられるようにもしている。簿記や情報処理などの検定を入試の評価に加える大学もあり、ペーパーテストだけで臨むより合格の可能性が広がる生徒もいるという。

 とはいえ、同校も生徒の定員割れは続いている。720人の定員に対し、現行の生徒は約390人と6割に満たない。「商業高校が検定取得のためのような学校になってきたのが全国的な反省点だ」と濱田教頭。

 パソコン導入をきっかけに、生徒たちが得た技術や主体性を社会で十分に生かせるまでどう高めていくのか。生まれ変わった学校の新たな挑戦は始まったばかりだ。

商業高校 文部科学省によると、高校の商業科は実践的な学習活動を行うことなどを通し、経済の健全で持続的な発展を担うのに必要な資質や能力を育てることを目標としている。学校基本調査によると、2017年度の商業高校は全国で172校。07年と比べて48校減少している。商業科を備える高校も減っており、07年度の761校から17年度は623校になった。

=2018/12/09付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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