学校図書館のハテナ?(4)記者ノート 車の両輪

福岡市博多区の東光小では、子どもたちの読書意欲を高めようと、ゲストティーチャーや保護者のボランティアによるお話会も盛んだ
福岡市博多区の東光小では、子どもたちの読書意欲を高めようと、ゲストティーチャーや保護者のボランティアによるお話会も盛んだ
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 学校図書館にいる司書の存在が気になり始めたのは数年前だった。「図書館に古い本が多くて司書が困っているみたい」。間接的にそう聞いた。学校の「図書室」って、ただ本が並ぶだけの部屋じゃなかったっけ? そんな疑問から、今回のシリーズ「学校図書館の?」の取材は始まった。

司書配置を当然の時代に

 さほど頻繁ではなかったが私(38)も小学校時代、授業などで学校図書館を利用した。いつも手に取るのは漫画「はだしのゲン」。他の本をちゃんと読んだ記憶はない。引率役の先生から本を薦められたこともなかった。

 中学校は図書館があったかすらも覚えていない。高校では教室に居づらい時によく行ったが昼寝ばかり。カウンターに人がいた記憶はあるものの司書かどうかは知らない。

 「司書がいる良さを親や先生が体験していないと、子が通う学校にいてほしいとは思わない」。取材中、福岡市の司書の1人に言われ、私自身のことを言い当てられた気がした。

 勤務時間が短く職員会議にも入れない司書は、学校でもどこか浮いた存在になりがちだ。ただ、その役割を知る司書教諭らにとっては、短い滞在時間であっても得難い人材という。

鍵は教員や保護者の声

 小中学校に1人ずつ司書を配置してきた福岡県宇美町は2010年度、2校掛け持ちに変更したが、わずか1年で元に戻した。子どもの教育環境を考え、改善を訴えた教員や保護者の声が後押しした。

 全国の小中学校の司書配置率を押し上げている裏側には、数字には現れない動きがある。それは司書を増やす鍵でもある。司書不在校と配置校の違い、読書の学習効果などへの認識が広がれば、学校図書館に司書がいるのは「当然」という時代が訪れるだろう。

主体的な学びに不可欠

 取材では、本を宝物のように扱い、本の魅力を広く伝えようとする児童にも出会った。

 宇美町の宇美小。西郷隆盛の伝記を探していた女子児童は、司書に薦められた最新の伝記と、時代背景が分かる西南戦争の本を両手で抱きかかえた。誰に向けたものでもない、幸せそうな笑みを浮かべて。

 福岡市博多区の東光小6年の小嶋健心君(12)は「誰も手にしない本も、読んでみたら面白かった。みんなにも薦めたい」と声を弾ませた。同校は読書推進校で通常は1年おきの司書が毎年配置されている。小嶋君は図書委員。多くの子どもでにぎわう同校の図書館は、司書とともに自ら本に触れて面白さを知り、伝える工夫をする図書委員の働きが支えていた。

 子どもたちが疑問や関心を追いかけ、多様で主体的な学びを実践するには教科書だけでは対応できない。学校図書館には、調べものであれ、将来への不安であれ、複雑な課題を解くあらゆるヒントが横たわる。そんな本だけの部屋で「最適の一冊」との出合いを演出するのが学校司書。車の両輪のような関係は、全ての子どもの教育に求められている。

◆読者の声

 今回のシリーズには、現役の学校司書や読書ボランティア、元教員などからさまざまな反響が届いた。

 福岡県の女性は、教科書などを簡単に信じず、疑うことの大切さを訴えるノーベル賞受賞者、本庶佑(ほんじょ・たすく)氏の言葉を紹介。「(疑問に思った時は)図書館の本。それも幼い頃から図書館に使い慣れていれば自分から探す。学校司書の手助けも借りながら課題をこなしていける」と強調した。

 現役の司書は、学校現場で読書冊数を重視するあまり、読書の形骸化を不安視する。「(図書館に来ても)迷路やグロテスクな怪談の挿絵を眺め、うろうろするだけで、漫画の挿絵をたどれば読み進むことのできる本を読む。その繰り返し」「読書週間に全校生徒に各自1冊、お薦めの本を書いてもらうが、『本』と言えるのは1%くらい」

 ある地域の読書活動推進連絡会に参加しているという人は、1~3年で委員が変わり、自治体の読書の計画的な推進ができていないと疑問を呈す。「長いスパンで見通した話はなかなかできません」と記した。

 ゲームやアニメなど娯楽の発達により、読書が遠のく現状を危ぶむ読書ボランティアの女性からの手紙もあった。「小学生に『読む力』をつけるには学校図書館の活性化が必要。読み聞かせた本や紹介した本を児童がすぐに借りられるように、学校図書館が毎日開いていて本を手渡してくれる司書がいてほしい」と訴えた。

 別の司書からは「これからの学校教育を語らないとなぜ学校図書館が重要なのか、そして学校司書が必要かは伝わらない。学習センター、情報センターとしての機能が学校教育には必要」という指摘もあった。


=2019/02/24付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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