睡眠不足、不登校の引き金に? 夜更かしの背景にスマホ

生徒がつづった睡眠日誌。日曜日の睡眠時間はわずか30分だった
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筑紫女学園大の大西良准教授
筑紫女学園大の大西良准教授
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 睡眠不足が不登校の引き金になっている-。筑紫女学園大(福岡県太宰府市)の大西良准教授(社会福祉学)が昨年、福岡県内の中学校で実施した調査から、そんな傾向が浮き彫りになった。調査では半数近くが「よく眠れない」と回答。不登校になる子どもの多くが日常生活で昼夜が逆転しがちになる中、大西さんは「子どもの睡眠状態の調査は、心身の状態の把握にもつながる。質と量、リズムが伴った睡眠の大切さを指導していくべきだ」と“眠育”の充実を訴える。

“眠育”の充実訴え

 大西さんは昨年11月、福岡県内のある中学校の全校生徒約240人を対象に、日常生活について尋ねるアンケートを実施。併せて1週間の就寝、起床時間を一覧表にした「睡眠日誌」を作ってもらった。

 その結果、平均睡眠時間は中学1年が7時間48分、2年が7時間51分、3年が7時間18分。大西さんによると、中学生の必要な睡眠時間の目安は8~9時間とされ、多くの生徒が十分な睡眠を確保できていないことが分かった。

 一方、日誌には日曜日に「6時半就寝、7時起床」とあったり、土日は明け方に寝て昼近くに起きたりするなど、休日前になるとリズムの崩れた睡眠を取る生徒も目立った。

 大西さんは回答から「よく眠れている」=(1)群=と「眠れていない」=(2)群=に分類。睡眠時間は(1)群が7時間53分、(2)群が7時間22分と差は30分程度だった。しかし「いらいらする」「怒りを感じる」「憂鬱(ゆううつ)な気分だ」など心身の状況16項目を4段階で評価してもらった結果、(2)群は(1)群よりストレス反応が大きく出たという。

 中高生に広がるスマートフォンと睡眠の関係も調査。同校では各学年の保有率がいずれも80%以上(親と共有も含む)と高い。このうち1日の利用時間が4時間以上は(1)群の16・0%に対して(2)群は36・9%と大きな差があった。

 また、(2)群の75%が「寝る直前にスマホを操作することがある」と答えており、大西さんによる面談で「スマホを夜遅くまで使っていると、ついつい寝るのが遅くなってしまう」と話す生徒もいたという。

 調査後、大西さんは養護教諭と一緒に、生徒たちに睡眠の大切さを指導する授業を行った。「睡眠に適したゴールデンタイムは午後10時~午前2時」「睡眠不足が続くと、成長ホルモンが出なくなり、病気にかかりやすく成績も下がる」。そう訴え、生徒たちの反応も「成績が下がるのは嫌なので、テスト前は夜更かししない」「睡眠不足に良いことが全然ないと教えてもらった」などと理解が深まった様子だった。

   ◇   ◇

 睡眠日誌は、スクールカウンセラーとして不登校生徒らと日々接する大西さんが面談で活用している。「不登校生は睡眠のリズムが崩れているケースが多く、どうやって習慣を変えていくか“見える化”することが効果的だ」と強調する。

 不登校の原因としていじめや対人関係、学業不振などが注目されがちだが、登校を前に朝起きられない、頭痛がひどいといった身体症状もきっかけになりやすいとされる。

 大西さんによると、年間150日以上遅刻していた生徒の親は夜間に仕事をしていた。必然的に夜型の生活をしていた生徒は、朝起きて学校に行くのがきつくなり遅刻が増えたという。ただ、この生徒は文部科学省が定める年間30日以上欠席という「不登校」には当てはまらない。

 このような生徒への対応は学校頼みで、専門機関のケアが十分に行き届いていない現状がある。福岡県の中学校の調査では「眠れていない」生徒の平均遅刻日数は5・80日で欠席日数は4・21日と、「よく眠れている」生徒の2~4倍だった。文科省の定義から外れた「不登校のリスクが高い子ども」は、10人に1人はいるというのが大西さんの実感だ。

 スマホの利用を巡って文科省は2月、原則禁止としていた学校への持ち込みを見直す方針を示した。「スマホは児童生徒のコミュニケーションツールとして欠かせない一方で、利用時間が増えることによる睡眠への影響についても考える必要がある」。大西さんは警鐘を鳴らす。

 

=2019/03/10付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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