【問う語る】(5)の1 特権にあぐら「電力緩んでいる」 西日本シティ銀行・久保田勇夫頭取

 ▼くぼた・いさお 東大卒。1966年、大蔵省(財務省)入省。国際金融局次長などを歴任し、日米の為替交渉などを担った。国土事務次官、米投資会社会長などを経て、2006年から西日本シティ銀行頭取。福岡市出身。
▼くぼた・いさお 東大卒。1966年、大蔵省(財務省)入省。国際金融局次長などを歴任し、日米の為替交渉などを担った。国土事務次官、米投資会社会長などを経て、2006年から西日本シティ銀行頭取。福岡市出身。
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 旧大蔵省で、国鉄(現JR)や電電公社(現NTT)の予算に携わった立場からみても、その特異性は際立つ。誰もが使う電気の供給を事実上、地域で独占。必要経費に利益を上乗せする「総括原価方式」によって、電気料金は決まる。よほどのことがなければ、電力会社は必ずもうかる。

 「よくこんな法律ができたなというくらい強い規定なんです。ほかの業種は倒産や合併もあるが、それとは違う産業として論理構成されている。極めて特殊な地位」

 元大蔵官僚の久保田勇夫西日本シティ銀行頭取(69)はインタビューの冒頭、九電を含む電力会社には、大きな「特権」があると説いた。

 九州唯一の売上高1兆円を誇り、巨額の設備投資で下請けに仕事を回し、確約された利益を文化・スポーツ界、あるいは自治体にまで寄付してきた九電。九州の「もうひとつの政府」ともいうべき地位にあるが、「特殊な制度に支えられ、結果としてリーダーだった。自分に知恵があって、その地位にあると思ってはいけない」と、ばっさり切る。長年、九電と足並みをそろえてきた地場金融界のリーダーの一人の、いら立ちの根本にあるものは何なのか-。

 昨年暮れ。ある会合で、久保田氏が公然と九電の副社長を一喝したことが地元経済人の間で話題になった。「あなた方は(九電の企業統治の在り方などを問う)経産大臣の発言の重みが分かってない」と、「やらせ」問題をいつまでも収拾できない迷走ぶりを強く批判したという。

 九電は自ら依頼した問題を調査する第三者委員会の郷原信郎委員長と、古川康佐賀県知事の問題への関与の報告書への記述をめぐり、すったもんだ。結果として、九電が望む玄海原発の再稼働は一層遠のき、ひいては経済界が強く望む電力の安定供給も、不安が募る状況になった。

 久保田氏は九電にそもそもなぜ、特権があるのか問い直せ、と訴える。

 「私は今の制度自体に異論はない。電力が途絶えれば市民生活や産業に多大な影響が及ぶ。国は電力の安定供給が非常に大事という思想で今の仕組みをつくった。異常だが、不思議じゃない」

 何があっても電力の安定供給だけは絶やさない。そのために特権が与えられている。ただ、久保田氏は、長く優遇される中で「緩んでいる」と語る。やらせ問題すら収拾できない九電の姿に、その任務を貫徹する覚悟があるのか、特権にあぐらをかいてはいないか-。地域の目は厳しい。

 2月3日、九電は液化天然ガス(LNG)火力の新大分発電所(大分市)で設備が凍結し、一時全面停止。同発電所の総出力約230万キロワットは、玄海原発の3、4号機分に相当する。計画停電の危機が現実になりかけた。原因は配管凍結という初歩的なトラブル。シャワー室の熱湯をバケツリレーし、復旧。寒波の訪れは、前日から分かっていた。

 「やるべきことを本当にやっているのか、常に緊張感を持つべきなんです。自制心を極限に高め、監督官庁が突っ込む口実を与えてはいけない」

 しかし、政府は今、発電と送配電事業を分離するなど現在の電力会社体制の解体を志向し、新しい安定供給の道を探る。

 今冬の節電要請では、関西電力は社長自ら記者会見して利用者に協力を求めた。だが九電の真部利応社長は、節電要請のときも、新大分発電所のトラブルのときも、会見は部下に任せた。

 -九電の改革に向けた一歩は何でしょうか。

 「お客さん第一主義を徹底することです」

=2012/03/04付 西日本新聞朝刊=

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