【フクシマの教訓】(3)再稼働助言、ムラの専門家に 安全「お墨付き」は誰が

右上は佐賀県の古川康知事。左上は大飯原発3、4号機、下は福井県原子力安全専門委員会
右上は佐賀県の古川康知事。左上は大飯原発3、4号機、下は福井県原子力安全専門委員会
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 迷いのない表情だった。佐賀県知事の古川康は13日の定例記者会見で言い切った。「必要があるごとに専門家に意見を求めてきた。その判断を参考にしながら県としての判断を進めてきた」

 東京電力福島第1原発事故で原発の安全神話が崩壊。事故時の国の機能不全ぶりも明らかになり、自治体独自に原発の安全性を確認する専門家組織の重要性が指摘されている。既に青森、新潟、福井、愛媛、滋賀各県などは設置済みだ。佐賀県では設けないのかと問われ、古川は、不要との立場を強調した。

 昨年夏の初め、古川は九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)に関し、震災後としては全国初となる再稼働に同意するかどうか国と九電から迫られていた。佐賀県によると、県は昨年6月24日、古川の言う専門家2人に意見を聞いた。九電のやらせメール問題の舞台となった国の説明会が佐賀市で実施される2日前のことだ。

 「今回の地震で、圧力容器/格納容器は破損していないと考えてよい」

 「重要機器の機能は維持できていた」

 専門家2人は、原子炉工学が専門の九州大特任教授と核燃料工学が専門の九大教授。2人が県側に文書で示した見解は、福島の事故は、玄海原発の再稼働の障害になるような事故ではなかった、とするものだった。

 古川は、やらせ説明会から3日後の6月29日には、経済産業相(当時)の海江田万里と会談。直後の記者会見で「私どもが疑問に思ってきた問題点はクリアされた」と、「再稼働同意」に向けて踏み込んだ。専門家の意見は、この発言の大きな後ろ盾になったはずだ。その後、当時の菅政権が、再稼働は安全評価(ストレステスト)の結果を踏まえるよう方針転換したために、同意は幻に終わる。

 古川は、なぜこの2人を選んだのか。

 2人は玄海原発周辺の放射性物質などの定期報告を受ける「佐賀県環境放射能技術会議」の委員を務める。県執行部の政策判断に助言するよう委託されているわけではない。県は「専門家だったので助言を求めた」(原子力安全対策課)と説明する。

 しかし、本紙が九州大に行った情報公開請求によると、特任教授には、九大教授時代の2006年度に日本原子力発電から50万円▽核燃料工学専門の教授には、08~10年度に原子燃料工業から毎年50万円-の寄付が確認できる。2人は原子力ムラの支援を受けた原発推進の立場にあった。

 昨年の佐賀県のように国から関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働の同意を求められている福井県では独自組織、県原子力安全専門委員会が議論を重ねた。少なくとも顔触れも審議も公開され、事故時の初動対応の要員確保など独自対策も関電に要請した。

 だが九州では佐賀県だけでなく、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)を抱える鹿児島県も独自組織を設置する考えはない。

 「原子力規制庁、新しい安全委員会が国民の信頼に応える存在になってほしい。地元でどう判断するかに注目が集まるのは、本来の形ではないと思う」。13日の会見でそう述べた古川。九電のやらせメール問題への関与が取りざたされて以来、原発の安全問題で目立った発言をしていない。
(敬称略)

=2012/06/14付 西日本新聞朝刊=

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