【フクシマの教訓】(5)あふれ出す核のごみ サイクル政策岐路に

昨年12月、再処理工場を視察する民主党の馬淵澄夫議員。右は玄海原発の使用済み燃料プール。下は事故後の福島第1原発4号機の燃料プール(東京電力提供)
昨年12月、再処理工場を視察する民主党の馬淵澄夫議員。右は玄海原発の使用済み燃料プール。下は事故後の福島第1原発4号機の燃料プール(東京電力提供)
写真を見る

 真っ暗闇の中空に、燃料プールが見えた。

 震災発生から丸3カ月となる昨年6月11日。防護服に身を固めた首相補佐官(当時)、馬淵澄夫は、水素爆発で外壁が吹き飛んだ福島第1原発4号機の原子炉建屋に初めて足を踏み入れた。

 普通のビルに例えれば8階程度の高さに燃料プールはあり、高レベルの放射性物質を含む使用済み燃料など計1535本が収められている。補強工事の真っ最中だが、仮に強い余震で崩れ落ちればどうなるか-。

 「何でこんな形で置かれているのか」。馬淵は恐怖を感じた。

 原発で使われた核燃料の「燃えかす」(使用済み燃料)を再処理し、再び燃料として利用する-。核のごみをごみとして扱わない、日本が目指す核燃料サイクル政策だ。

 使用済み燃料は現在、青森県六ケ所村にある再処理工場に運ばれているが、工場自体、技術的な問題から本格稼働の見通しが立っていない。現実には、福島第1のように各原発内のプールにも保管されている。

 核燃料サイクルは是が非でも進めるべきなのか-。昨年秋、馬淵は民主党議員有志による勉強会を立ち上げた。今年2月、経済産業相の枝野幸男らに手渡した提言には、実用化が遠く現実味に乏しいサイクル政策の「凍結」に踏み込んだ。

 では、現にある使用済み燃料の保管先をどうするか。

 「再処理事業がストップすれば(使用済み燃料は)置いておけない」。再処理工場を抱える青森県知事の三村申吾は断言している。再処理を前提に受け入れているのだから中断になれば各原発に送り返す、という。青森を核のごみ捨て場にしないためだ。

 再処理工場が保管する使用済み燃料は、九州の玄海分がウラン換算で362トン、川内分が89トン。玄海は貯蔵プールの全容量の77・5%が既に埋まり、空きは240トンしかない。川内は返還分を受け入れる余裕があるが、玄海はあふれてしまう。

 使用済み燃料が行き場を失えば、全国各地の原発に核のごみがあふれ、安全対策が施されても再稼働できなくなる。

 関西電力大飯原発を抱える福井県知事、西川一誠は「(保管施設の場所は)消費地を入れて検討してほしい」と話す。核のごみのリスクは電力消費地も背負うべきだ、という考えだ。馬淵の提言には、都道府県ごとに保管施設をつくる案も盛り込んでいる。

 昨年末。馬淵は核燃料サイクル政策の拠点、日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)を視察に訪れた。到着すると、理事長以下、幹部がずらりと待ち構えていた。

 「何が何でもサイクル事業は終わらせない、という強い意思を感じた」と、馬淵は振り返る。

 同志であるはずの仲間の抵抗にも遭った。「支援を受ける電力系労組などから『おまえ何やってるんだ』と責められる」。一人、また一人と勉強会から抜けていった。

 自治体の事情、原子力ムラの既得権益…。調整は容易ではない。「役所には無理。政治しかできない仕事だ」。馬淵はそう考える。

 フクシマを受け、政府は今夏、新たなエネルギー基本計画をまとめる。その中で核のごみの将来も描けるか。
(敬称略)

=2012/06/16付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]