【フクシマの教訓】(8)脱原発、増える負担誰が 国の未来 選択の「夏」

上は、九州電力が福岡県大牟田市に建設したメガソーラー。右は九電の瓜生道明社長。下は原発全停止で財務状況が厳しくなっている九電の本店(福岡市中央区)
上は、九州電力が福岡県大牟田市に建設したメガソーラー。右は九電の瓜生道明社長。下は原発全停止で財務状況が厳しくなっている九電の本店(福岡市中央区)
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 「このまま年度末までいけば、検討の必要がある」。15日、都内で記者会見した九州電力社長、瓜生(うりう)道明は電気料金の値上げについて問われ、初めて値上げの判断時期に言及した。

 1日十数億円-。原発全停止に伴い、火力発電所の発電量を増やしている九電の追加負担額である。九電は火力の燃料となる原油をベトナムやアフリカから、液化天然ガス(LNG)を南米などから追加調達している。その調達額などで毎日十数億円ずつ、余計にかかっているという。

 一部原発が動いていた2011年度の決算(単体)でさえ、売上高1兆4000億円に対し、燃料費がかさみ、費用は1兆6400億円まで膨らみ、1700億円の最終赤字を計上した。これまでの蓄えである利益剰余金を取り崩す形で燃料調達に当たっているが、剰余金は約6900億円から約4800億円まで減少。原発が再稼働しなければ、2年も待たずに底をつくという。そこまでには値上げしたいというのが九電の本音だ。

 赤字経営を立て直す見通しがなければ、借金もままならない。九電は11年度に予定していた1500億円の社債発行を全額中止。市場調達をあきらめ、銀行に頼ったが、幹部は「来年は融資してもらえるか分からない」と不安を口にする。

 だが、値上げには利用者の強い反発が予想される。九電は身を削る努力をしたのか、厳しい目が注がれる。

 電力事業に直接関係のない不動産や有価証券、関連会社などの資産売却はできないのか、国際相場に比べ「高値買い」と指摘される日本のLNG購入価格の引き下げ交渉は十分なのか…。

 原発を基幹電源に自ら選んだものの、その「安全神話」が崩れた以上、電力会社の責務として努力しなくてはならない。

 「値上げするなら、社員の給与削減まで踏み込まざるを得ない」(九電幹部)のは当然だろう。

 ただ、九電の人件費は総額で年間約1600億円。全てを燃料費に回したとしても、単純計算で追加燃料費約4カ月分に充てれば尽きる。

 福島第1原発の事故から1年3カ月がたった。フクシマは私たちに多くの教訓を残した。

 住民避難など万が一の事態を想定した「備え」は十分とは言えない。「安全神話」は今も政官業の原子力ムラに巣くう。原発を動かすには課題が多すぎる。新たに発足する原子力規制委員会が機能するかどうか-。

 一方、市民生活や経済を考えたとき、電力を途絶えさせることはできない。電力会社が地域を独占する現状では、税金を投入してでも破綻させるわけにはいかない。

 再稼働にノーと言うならば、感情論では済まない。当面、私たち利用者も一定の負担を引き受けざるを得ないだろう。

 脱原発依存を目指して、どのように減らし、どのように代替エネルギーを確保し、併せて私たちの暮らし方をどう変えていくか。「原発を上手にたたむための現実的な議論をしなければならない」。電力の歴史に詳しい一橋大大学院教授、橘川(きっかわ)武郎は言う。

 政府は、2030年の総発電量に占める原発比率について「0%」「15%」「20~25%」の選択肢を示した。今年夏、方向性を出すという。

 私たちの社会はどこに向かうのか。私たちが選ぶときだ。「節電の夏」は、日本の未来を考える大切な夏となる。
(敬称略)

 =おわり

=2012/06/20付 西日本新聞朝刊=

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