原発のゆくえ 岐路に立つ米国(下) 再生エネ 選択捨てず

風力発電の利用促進に取り組むNPO法人「ウィンダストリー」のメンバーたち。ダニエルズ代表(右)は「環境へのリスクもコストに入れるべきだ」と話す
風力発電の利用促進に取り組むNPO法人「ウィンダストリー」のメンバーたち。ダニエルズ代表(右)は「環境へのリスクもコストに入れるべきだ」と話す
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 米中西部のミネソタ州。冬場は氷点下20度まで気温が下がり「アメリカの冷蔵庫」と呼ばれるこの地は、五大湖周辺に吹きつける強い風でも知られる。風力発電量は全米の州で5位に入り、一般家庭での実用化も進む。

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 NPO法人「ミネソタ再生可能エネルギーソサエティー」代表、ジャン・ハバードさんは、州で最も大きいミネアポリス市に家族3人で暮らす。一軒家の屋根には太陽光発電パネルを設置。不足分の電気は、風力でつくられたものを地元の電力会社から購入している。

 州内人口の約半分に電気を供給するエクセル・エナジー社は、火力・原子力か風力か、消費者が発電方法を選べるメニューを提供している。使用電気を100キロワット単位で購入する仕組み。風の有無に左右され、出力が不安定な風力発電が高コストなのは日本と変わらない。火力・原子力なら1キロワット時10セントの電気料金に、風力を選ぶと同1~2セントほどが上乗せされる。

 だが購入電気の全量を風力発電に設定するジャンさん宅でも火力・電子力と比べたコストは月にプラス数ドルで済むといい、「それほど負担だとは思わない」と話す。

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 消費者の負担が小さいのは、連邦政府が電力会社を財政的に支援しているからだ。風力の発電量に応じて法人税を軽減する生産税額控除制度や設備投資への減税など、きめ細かに対応している。

 ミネソタ州エネルギー資源局によると、州の使用電力に占める風力発電の割合は2005年の3・0%から10年には8・9%まで増加。08年に初当選したオバマ大統領が10年間で再生可能エネルギーに1500億ドル(約12兆6千億円)を投資し500万人の雇用を創出する政策を打ち出し、関連事業に約266億ドル(約2兆2千億円)を拠出したことも成長の一因となった。

 「ミネソタの風力資源は州全体の需要を満たす」と、ミネソタ大環境研究所のジョン・シーハン教授。その「財産」を生かすため、州政府も風力産業を支援し、雇用創出と技術革新を後押しする。シーハン教授は「蓄電の技術開発が進めば風力のコストも下がり、競争力が高まる」と話す。

 支援のいらない産業に育てるために、いまは支援が必要なのだ。

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 だが、余裕のない連邦政府の財政事情もあり、支援策には継続性がない。生産税額控除も今年末で終了する。これまでも投資を集中的に呼び込むという理屈で数年単位の期限付き支援策の再開と休止を繰り返してきた。風力発電量はそのたびに増減してきた。

 米国の業界誌「石油&ガスジャーナル」のボブ・ティップ編集長は「安いシェールガスが供給され続ける限り、支援を受けない風力発電がコスト面で競争できるとは思わない」と断言する。

 ただ、シェールガスは掘削過程で使う薬品が環境に悪影響を及ぼすおそれも指摘されている。

 「シェールガスも原発もリスクがある。長い目で見れば、風力発電は決してコストの高い選択肢ではない」。風力発電の導入を促すNPO法人「ウィンダストリー」のリサ・ダニエルズ代表はこう主張する。

 2期目に入るオバマ氏は批判を浴びながらも、再生可能エネルギーの潜在力に期待を託して政策を継続する意向を示している。

 (森井徹が担当しました)

=2012/12/23付 西日本新聞朝刊=

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