さまよう核のごみ(1)の2 10万年の安全 誰が保証

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 ごつごつした岩肌の薄暗い坑道を車で緩やかに下って15分。地下420メートルの場所にたどり着いた。ドラム缶がすっぽり入りそうな、直径1・75メートル、深さ8メートルの大きな縦穴が四つ掘ってあった。

 約10万年の間、人が近づけないレベルの放射線を出し続ける原発のごみ、使用済み核燃料を直接埋めるための試験地だ。今から10万年前は旧人、ネアンデルタール人の時代。想像を超える時間軸である。

 ◆最終処分先進地 フィンランド

 フィンランドの首都、ヘルシンキから北西約250キロの自治体エウラヨキのオルキルオト。約5キロにわたって掘り進められた坑道は、地下特性調査施設「オンカロ」(フィンランド語で洞穴などの意)だ。最終処分を担うポシヴァ社の地質学者、トウマス・ペレ(31)は試験中の縦穴を指さした。「この穴は使えないよ。亀裂から地下水が出る可能性があるから」

 坑道を移動中、天井から地下水が大量に降ってくる場所もあれば、まったく乾いたところも見られた。地下は気温13~14度と年中安定している。真冬では、外と20度前後の温度差がある。

 オンカロもその一部となる最終処分場が、世界で初めて2022年から稼働する見込みだ。処分場の選定が始まったのは1983年。同国は着実に歩を進めてきた。

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 「地下は19億年前に形成された結晶質岩でできており、岩の厚さは50キロに及んで安定だ。そもそも、フィンランドは火山や地震活動がほとんどない」。案内役のペレは日本との違いを強調した。

 国内の6基(うち計画中が2基)から出る使用済み核燃料は少なくとも約9千トン、最終処分場の費用も数千億円に上る。

 長さ4メートル前後の金属容器で使用済み核燃料を覆い、さらに特殊な粘土を詰め込んで縦穴に放射性物質を封じ込める。「人工バリアー」と呼ばれる。

 高さ6メートル強もあるオンカロの坑道は、爆破などを繰り返し1年に約1キロずつ掘り進めてきた。計画では坑道の総延長は約40キロになる。受け入れ量次第ではさらに延びる。坑道が張り巡らされた巨大な地下施設となる。

 2120年-。使用済み核燃料が埋め終わるのに約100年を費やし、誰も見届けられそうにない。「持ち込みが終われば埋め戻して閉鎖する。そこからは手がかからない。最終処分地は人間が忘れていい存在だ」。同社社長のレイヨ・スンデルはこう言い切った。

 同社の見立てがある。約6万年後には氷河期が再びやってきて2~3キロの分厚い氷に覆われる。人間と隔離された状態が数万年続き、自然がいずれなき物とする-。

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 途中、人間が間違って掘り返す懸念はないのか。スンデルは意に介さない。「この地域は岩盤に有用な資源がない。坑道も大きな石を入れて閉めるつもりだ。そんな恐れはないだろう」

 容器が壊れて放射性物質が将来、地下水などを通じて人間界に近づいてきたとしても、フィンランド人の年間被ばく量の1万分の1の影響しかない、というのが同社の評価。それは10万年にわたって言えるのか。「そうです、そうです」。スンデルは言ってのけた。

 企業の歴史は短い。原発がいつまで使われるのかも分からない。10万年後の安全に誰が責任を持てるのか。雇用経済相のヤン・ヴァパーヴオリはこう答えた。「国が責任を持つしかないだろう」

 やっかいな施設を、フィンランドの地元自治体はなぜ受け入れたのだろうか-。

 (敬称略)

=2013/03/02付 西日本新聞朝刊=

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