さまよう核のごみ(1)の3 原発賛否超え、議論の時

 家庭ごみも焼却したり、埋め立てて処分したりする必要がある。原発から出るごみ(使用済み核燃料)は強烈な放射線を長い間放つ危険物。それを人間界から遠ざけておく最終処分場のめどが日本でも立っていない。

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 日本は原発から出るごみのうち、ウランとプルトニウムを資源として再利用する「核燃料サイクル政策」を維持している。再利用できない放射性廃液は、ガラスと混ぜたガラス固化体として地層処分する方針だ。

 固化体は製造直後、目の前にいる人が20秒で死に至る放射線を放ち、数万年たってようやく自然界のウラン鉱石と同じ程度に線量が下がる。ガラス固化体にせず、フィンランドのようにそのまま直接処分する場合だと、ウランなどが含まれ、鉱石レベルに下がるには約10万年を要するという。

 政府の試算では、原発(出力110万キロワット級)が1年間稼働したとしてガラス固化体(約500キロ)が、30本前後発生。その処分費用(1本当たり約3500万円)は電力会社が電気料金の一部として徴収し、積み立てている。既に電気利用者は費用面で責任を果たしているといえる。

 電力業界でつくる原子力発電環境整備機構(NUMO)などによると、青森県六ケ所村の貯蔵施設など国内に現存するガラス固化体は約1780本。原発施設内などに保管されている使用済み核燃料をガラス固化体に換算すると、約2万4700本に達するという。

 そもそも廃棄物の発生責任を負うのは電力業界のはず。ごみの問題の一切をNUMOに任せたまま、ひたすら原発再稼働を目指す姿勢には疑問の声がある。

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 日本の地層処分は地下300メートル以下に埋めるとしている。名古屋大の吉田英一教授(環境地質学)は「日本では、地質が不安定なところがある。火山発生地帯や直撃しそうな断層を避け、地震の影響が小さいことなどを再確認できる適地を探さないといけない」と指摘する。電力料金から積み立てた資金を使い、NUMOが公募活動しているが、選定のめどはまったく付いていない。

 一方で昨年9月、科学者の代表機関である日本学術会議は「安全性に疑問が残る」として50年~数百年の間、廃棄物を地層に埋めずに置く「暫定保管」を提言して話題になった。その間に、線量を下げる技術開発などに期待する考えだ。

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 使用済み核燃料からウランなどを取り出す再処理工場(六ケ所村)は核燃料サイクルの要だが、いまだに本格稼働していない。今年10月稼働の目標だが、これまで技術的なトラブルで何度も延期されてきた。再処理できないまま原発を再稼働すれば近い将来、各原発内の貯蔵プールの使用済み核燃料があふれ、再び運転できなくなる。

 再処理も、最終処分も見通しが付かないまま長らく原発運営を続けた結果、核のごみは増え、さまよっている。原発の賛否を超えて最終処分のあり方を議論していくのは現世代の責任。同時に行き場のない核のごみを増やさないことが、今後のエネルギー政策の重要課題となっている。

=2013/03/02付 西日本新聞朝刊=

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