さまよう核のごみ(4) 中間貯蔵施設の行方は

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 「今年9月に重大発表があります」

 九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町。100人ほどの町民が集まった賀詞交換会のあいさつで、町長の岸本英雄は意気揚々と予告した。2011年1月5日、東日本大震災が発生する2カ月前のことだ。

 岸本の念頭には、核のごみの中間貯蔵施設受け入れ表明があった。

 ◆吹き飛んだ重大発表

 再び燃料として使うために再処理するにせよ、いずれ地下深く埋めるにせよ、使用済み核燃料を一時保管する「中継ぎ役」の施設が必要となる。それが中間貯蔵施設だ。

 岸本や町幹部、町議らは07年、スイスの中間貯蔵施設や、誘致を表明した青森県むつ市を視察した。「地理的条件や施設の安全性を含め、玄海町で実現できると確信した」と町議の一人。町幹部は「老朽化が進む玄海原発1号機の廃炉、5号機の新設も見据えると、第一歩が中間貯蔵施設だった」と打ち明ける。

 震災発生で誘致表明は吹き飛んだが、岸本の底意は変わらない。昨年6月の町議会では、中間貯蔵施設の受け入れは既定路線と言わんばかりに、原発で保管する使用済み核燃料に課税する「使用済み核燃料税」の導入検討をぶち上げた。

 岸本は言う。「今のままでは核燃料サイクル政策は立ちゆかない。近い将来、玄海原発の貯蔵プールも核燃料で満杯になる。中間貯蔵施設は絶対に必要なんだよ」

   ■   ■

 実際、各原発から使用済み核燃料を引き受ける青森県六ケ所村の再処理工場は、技術的なトラブルで完成が遅れている。玄海原発の核燃料の貯蔵プールは容量の8割が埋まり、仮に再稼働してもごみ置き場がなくなれば停止せざるを得ない。

 九電は10年2月、玄海3号機の貯蔵プール容量を2倍に拡張する工事(リラッキング)を国に申請。震災の影響で審査がストップすると、11年8月に“催促”の文書を提出した。「地元状況を考慮すると自治体調整に時間がかかることが想定される」。本紙の情報公開請求に基づき国から開示された申請書類には、九電の焦りが見てとれる。

 使用済み核燃料の収納間隔を詰めて容量増を図るリラッキングの安全性を懸念する専門家もいる。国は判断を先送りしたままだ。

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 町内には不安もくすぶる。主婦新雅子さん(78)は「最終処分場が未定なのに中間貯蔵施設をつくるのはおかしい。なし崩し的に核のごみを押しつけられるのは反対だ」。

 立地自治体もさまざまだ。原発14基を抱える福井県の知事、西川一誠は「電力を消費する地域でも、痛みを分かち合う分担をお願いしないといけない」と、中間貯蔵施設の県内立地を拒否する。

 民主党政権下の昨年11月末。政府は使用済み核燃料の問題解決に向け、新たな枠組みとして対策協議会の新設を決め、全都道府県に参加を要請した。消費地も議論に加える狙いだ。だが返答があったのは原子力関連施設を抱える福井、茨城両県のみ。「将来の原発政策が決まらない中、都道府県も新政権の出方を見ている」と資源エネルギー庁の担当者。安倍政権は核のごみの問題に関し明確なメッセージを発信していない。

 財政的な期待と廃棄物への不安が交錯する立地自治体、素知らぬ顔の消費地、はっきりしない政府-。混迷だけが深まっていく。

 福島第1原発にある大量の放射性廃棄物はどうなるのだろう-。

 (敬称略)

=2013/03/05付 西日本新聞朝刊=

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