さまよう核のごみ(5) 福島 たまる汚染物質

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 何もかも津波で流されていた。ひしゃげたガードレールや壊れた車は放置されたまま。かろうじて残った家屋も雑草に埋もれている。「この辺は震災直後からほとんど変わってないんだよ」

 2月中旬、福島県南相馬市。行政区長連合会長を務める山沢征(すすみ)(69)に同行し、東京電力福島第1原発から20キロ圏内にある小高(おだか)区に入った。

 山沢はつぶやいた。「除染が進まないし、子どものいる家庭は戻ってこれないな」

 ◆「どさくさ」募る不安

 小高区の大半は原発事故直後、立ち入りが禁じられた旧警戒区域。昨年4月から出入り自由となったものの、放射線量が高い場所も残り、宿泊は禁じられている。

 なぜ除染が遅れているのか。除染作業で発生する汚染土やがれきなどを一時保管する「仮置き場」が足らないからだ。

 政府は福島県双葉郡内に汚染土などの中間貯蔵施設を建設する方針だが、地元との調整が難航している。中間貯蔵施設ができるまでの仮置き場なのに、汚染土などを積み上げたまま、ほったらかしにされるのでは-。そんな懸念から地権者の同意取り付けが進まない。南相馬市で見込まれる汚染土や草木類は少なくとも計20万立方メートル。13カ所の仮置き場が必要なのにまだ4カ所しかない。

 人影のない小高区の集落の片隅に、こう記された看板があった。

 「帰りたい。帰りたくない。どうする」

   ■   ■

 原子炉建屋の一部はコンクリートの表面がはがれ、鉄筋の一部がむき出しのままだ。

 廃炉に向けた作業が続く福島第1原発。敷地内には、原子炉冷却に使い、汚染された水を貯めるタンクが所狭しと並ぶ。11月から4号機の使用済み核燃料プールから1533本の燃料を取り出し、敷地内の別施設に移す。1~3号機の原子炉格納容器内の炉心溶融(メルトダウン)によって溶け落ちたとみられる核燃料も、いずれ処分しなければならない。

 汚染された土や水、核のごみ…。すでに膨大な汚染物質を抱える福島に、高レベル放射性廃棄物の最終処分場をつくるべきだとの主張もある。

 昨年9月、堺市で開かれた日本地質学会。日本大教授の高橋正樹(地質学)は、地殻の隆起や火山の活動状況を踏まえ、北海道東部と岩手、福島両県の太平洋側計3地域の地層が最終処分場に適していると発表した。

 高橋は福島に注目する。「原発周辺は当面、人は住めない。最終処分場をつくり、弱点を長所に変えて関連産業を育てれば、長期的には福島のためになる」

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 故郷を追われた人々の心は揺れている。

 福島第1原発から100キロほど離れた福島県会津若松市の仮設住宅。4畳間二つのプレハブで妻と暮らす木幡(こわた)仁(62)は原発から7キロの大熊町の自宅に数カ月に一度、一時帰宅する。少しずつ朽ち果てていくわが家。放射線量が毎時20~30マイクロシーベルトを計測する日もあり、下がる気配はない。

 「もう帰れないのは分かっている」と木幡。汚染土やがれきなど放射性廃棄物の中間貯蔵施設を受け入れ、補償金で新たな生活を始めた方がましだとも思う。

 けれど最終処分場が見つからなければ、結局は中間貯蔵が最終処分になりはしないか。ましてや全国の原発にたまっている核のごみまで-。

 「故郷を思う気持ちはみんな同じ。どさくさに紛れ、何でも福島に持ち込まれるのは困る」

 (敬称略)

=2013/03/06付 西日本新聞朝刊=

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