さまよう核のごみ(6) どう扱う―識者の見方―

 いまだ・たかとし 48年生まれ。東京大卒業後、75年同大助手に。79年に東工大助教授。88年から現職。05年から日本学術会議の会員。専門は社会システム論。
いまだ・たかとし 48年生まれ。東京大卒業後、75年同大助手に。79年に東工大助教授。88年から現職。05年から日本学術会議の会員。専門は社会システム論。
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 きたやま・かずみ 47年生まれ。東工大卒業後、72年東京電力に入社。原発各部門を歴任。00年から原子力発電環境整備機構。10年から現職。専門は地層処分。
きたやま・かずみ 47年生まれ。東工大卒業後、72年東京電力に入社。原発各部門を歴任。00年から原子力発電環境整備機構。10年から現職。専門は地層処分。
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 原発から出る核のごみをどう扱うべきか‐。国内での地層処分を目指す政府方針に対し、科学者の代表機関である日本学術会議が見直しを迫るなど、識者の間でも意見が分かれている。「最終処分の話を後回しにした原発の稼働は許されない」として核のごみの「総量規制」を提唱する同会議検討委員長で東京工業大の今田高俊教授と、「日本で最終処分場の適地は見つかる」として政府方針を支持する東工大の北山一美特任教授に聞いた。

 ◆排出量上限 まず設定を―今田高俊・東工大教授

 ‐学術会議の提言にある「暫定保管」とは。

 「われわれも最終的に地層処分になることを否定していない。ただ日本だと、知られていない活断層が多すぎて、火山活動も活発という特殊事情がある。そこで、いつでも取り出し可能な状態で50年から数百年保管し、その間に、放射線量を減らす技術開発などを急ぐというやり方だ」

 「地表での暫定管理も危ないので浅い地中での保管にし、常に監視できる形態がいい。活断層が見つかる場合も想定されるので、全国に2カ所、地層も安定した場所を選んでおくべきだ。最終処分はしない、との取り決めも地元と結ぶ。もし仮に、その2カ所のうちどちらかが『地理的に適当』となれば、正式な手続きで選定し直せばいい」

 ‐国は、埋めないと「テロの危険がある」「将来経済力が落ちたら処理できない」と反論する。

 「テロのリスクは今も抱えている。暫定保管のみ責めるのはおかしい。そもそも、国の方針でも30年から50年ぐらい中間貯蔵した後、最終処分に移す計画になっている。50年ぐらい経済は大丈夫だが、数百年後は不透明という理屈も乱暴だ」

 ‐最終処分地の選定作業も進めるのか。

 「そうだ。世界でも国内処理するのが大前提。暫定保管しつつ、真摯(しんし)に処分地を探し続ける努力をしないといけない」

 ‐提言にある「総量規制」の考えも新しい。

 「使用済み核燃料の保有上限を何本にすべきか、答えを持っていない。だが、発生量や貯蔵能力などを数値化して国民に見えるようにし、どれぐらいまで使用済み核燃料の増加を認めるのか議論していくことが大事だ」

 「それは、原発を今後どれだけ減らしていくのかというエネルギー政策と連動する。最終処分の対応を後回しにしたまま、原発稼働をなあなあに続けることはもう許されない。電力会社は、最終処分をニューモ(原子力発電環境整備機構=NUMO)に任せた結果、廃棄物の排出責任から目を背けて経営をしてきたのではないか」

 ‐そもそも、核のごみの責任は誰にあるか。

 「難しい。電力会社も政府も国民も、共犯関係にあったと言わざるを得ない。原子力の増設を知らされずに電力を過剰消費してきた国民はまず、節電意識を高めるべきだ。電力会社は、最終処分場が実現しなければ責任を果たせないという無残な状況。総量規制と暫定保管という考えを使って、国が主体となって議論を深めてほしい」

 ‐世界では原発が増えている。

 「途上国を含め原発は各地にできている。軍事用に転用される恐れがつきまとう核のごみは、いずれ国連安保理で最大の懸案になると予測している。先進国でも最終処分場を決められないのに、途上国はどうするのか」

 ◆最終処分 九州にも適地―北山一美・東工大特任教授

 -地層処分に対する国民不安、不信は根強い。

 「日本は『変動帯』という地質活動が活発なところで、火山も活断層も確かにある。だが、火山フロントと呼ばれる(東日本などの中心部を背骨のように走る)火山集中地帯から太平洋側では約180万年の間、噴火した火山がない。つまり、火山を避けられる地域はある。九州では南東側がそれに当たる」

 「活断層には注意が必要だ。直撃は避けないといけない。ただ、高レベル放射性廃棄物は、埋設の際に注入する特殊な粘土など『人工バリアー』で守られる。実際に処分予定地を掘り進んで断層が見つかった場合、そこは避けながら、処分場を造り上げることはできる。地震については、地表だとエネルギーが放出されて大きく揺れるが、地中だと波が伝わるだけで揺れは小さい。日本でも最終処分場の適地は見つけられる」

 -例えば。

 「茨城県から北側の太平洋側、四国から九州にかけての太平洋側が個人的には良いと思っている。九州では大分や宮崎県など。それはある程度、これまでの地質学の蓄積で判断できることだ」

 「日本では、ニューモが原則公募する形式をとってきたが、地理的な『適地』はここだ、と明確に示すべきだった。その方が選定作業が今より進んでいた。私もニューモにいたので反省している」

 -学術会議が提言している「暫定保管」「総量規制」をどうみるか。

 「暫定保管している間に、放射線量を抑える技術開発を進めるべきだと言っているが、その技術開発は容易でない。仮に研究開発が進んだとしても、商業ベースで実施していくために、高速炉を使うなど大規模な施設と費用が必要になる」

 「それが実現できなければ、結局は埋設する今の方針を推し進めるしかなくなる。今進めるべきは、長期の安全性に問題がないことをどのように科学的に示し、国民に理解してもらうかということだ。総量規制は意味不明。国際的にも総量規制をやっている国はない」

 -核のごみの発生責任がある電力会社は、ニューモに国民への説明を任せすぎてきたのでは。

 「それはあると思う。だが、受け入れた自治体は地域発展につながる可能性が高い。100年ぐらい施設が操業するし、何世代にも及ぶ。関連の研究施設も併設される。そのような重要拠点であることを、全電気事業者が国民に説明すべきかどうか。電力会社が表に立つよりも、国の政策としてやらないと難しい」

 -最終処分はだれが責任を持つのか。

 「長期事業なので不透明なことはあるが、電気事業者は国のサポートを受けながら安全性の証明をしていかないといけない。ただ、(最終的に)誰がどのくらいの責任を持てるかは分からない」

 =おわり

 文は相本康一、竹次稔、山下真、岩谷瞬、コラージュは大串誠寿、茅島陽子が担当しました。

 ■日本学術会議の提言■ 日本の科学者の代表機関である日本学術会議は2010年9月に内閣府原子力委員会から依頼を受け、高レベル放射性廃棄物の処分の在り方について審議を始めた。12年9月、同会議の検討委員会は(1)処分政策の抜本的な見直し(2)科学・技術的能力の限界の認識(3)暫定保管と総量規制の検討―などを提言。原子力委は同12月に提言を受けた「見解」を公表したが、提言を大きく取り入れた政策変更とはなっていない。

 ■政府の核のごみ処分方針■ 日本政府は地下300メートル以下に核のごみ(高レベル放射性廃棄物)を埋め、人間界と隔離する処分方針だ。核のごみは、使用済み核燃料から再処理工程でウランとプルトニウムを分離し、残った廃棄物をガラス固化体にしたもの。それを30~50年間地上で貯蔵した後、埋設処分する。政府は、ガラス固化体を覆う金属容器、埋設時に注入する粘土、岩盤がバリアーとなって放射性物質の漏れなどを抑えられるとしている。

=2013/03/07付 西日本新聞朝刊=

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