さまよう核のごみ(7) 読者の声 原発の「ツケ」 悩み挑む

日本原子力研究開発機構が地下300メートルに建設した高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究坑道=2月中旬、岐阜県瑞浪市
日本原子力研究開発機構が地下300メートルに建設した高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究坑道=2月中旬、岐阜県瑞浪市
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 原発から出る高レベル放射性廃棄物をどうすべきか-。これをテーマにした連載「さまよう核のごみ」(掲載日は3月2~7日)に、読者からメールやファクスで意見が寄せられた。賛否にかかわらず原発の恩恵を受けてきた世代として処分責任を認識しつつ、数万年も埋め続ける地層処分に不安の声も。容易に解決策を見いだせないもどかしさがにじむ(太文字は読者の「声」)。 

 ◆施設や費用 課題山積

 「これまで正面から向き合おうという姿勢が薄い部分だった」。メールを寄せた男性は「原発推進、反対にかかわらず避けては通れない道」と、原発稼働の賛否を超えて核のごみ問題の議論を急ぐべきだと強調した。福岡県芦屋町の男性(64)は「核のごみをどう始末するのか考えぬまま、原発が稼働してきたと思うと恐ろしくなる」と従来の原子力政策に首をかしげた。

 福岡県久山町の男性はファクスに率直な思いを記した。「今まで自分たちも電気を使い、原発の恩恵にあずかってきたが、後世の人たちに負の遺産を残すのはいかがなものか、と自身も反省しています」

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 「膨大な核廃棄物を地下に10万年も埋める安全な所が日本にあるのか」(福岡県内の男性)という不安から、「放射線量を減らす技術開発を進めるべきだ」という提言もあった。

 実際、日本でも研究が続いている。構想されているのが「高速炉」と呼ばれる次世代型原子炉を使うやり方。使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出し再利用する現行の「核燃料サイクル政策」を維持する場合、両物質以外の放射性廃棄物を対象に、高速炉で核分裂を起こさせ、放射線量を減らす考え方だ。

 ただ、現在の再処理工場(青森県六ケ所村)には廃棄物を細かく分別する能力がなく、実施には次世代型の再処理工場が必要。高速炉も建設しなければならない。現在の再処理工場でさえ、技術的なトラブルで稼働が遅れている。大がかりな施設を新たに受け入れる自治体がすぐに見つかるとは考えにくい。

 資源エネルギー庁は「技術開発を諦めたわけではないが、すぐにできそうにない。費用がどのくらいになるかも分からない」(放射性廃棄物等対策室)としている。

 ◆議論進化へ 政治鈍く

 連載では最終処分場の準備が進むフィンランドを紹介した。連載初回に登場してもらった三菱重工業の元常務取締役、金氏顕(かねうじあきら)さん(68)は「国の規模、工業力などが日本と違う。その比較も必要だった」と指摘した。

 フィンランドの人口は約542万人。日本の24分の1程度、福岡県(約508万人)とほぼ同じだ。金氏さんは「フィンランドは村のすぐ上は国、途中に県や州がない」とし、中央政府と自治体が直結し意思決定の手続きがシンプルであることも付記した。

 人口が多く自治体が多層構造になっている米国や英国では、政権交代や一部自治体の反対で最終処分場候補地の選定手続きが頓挫している。

 海外事情に詳しい原子力環境整備促進・資金管理センター(東京)は「人口が多い先進国ほど関係者が増え手続きが煩雑になり、合意形成が難しい」と分析。難しい手続きを省き、事実上、政府の一存で適地選びが進んでいる新興国もある。いかに合意を取り付けるか、民主主義のあり方が問われている。

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 最終処分場の誘致方法について、連載2回目は「札束で釣る手法 限界」と見出しを付けた。福岡県八女市の男性は「過疎で悩む自治体が自分たちの土地を国のために役立ててもらうという自負心に目を向けてほしい」と、誘致する側の心情の一端を代弁した。

 受け入れた地元がメリットを享受するのは当然だろう。一方で、今の手法については「『利益誘導』の外観を呈しているため、地域住民の反発をかえって増幅し、国民が議論のテーブルに着くことを妨げている」(日本学術会議の提言)という見方もある。実際、選定作業は進んでいない。

 では、議論を喚起すべき政治の動きはどうか。

 安倍晋三首相は「2030年代原発稼働ゼロ」という民主党政権の方針を「白紙で見直す」と述べるものの、エネルギー政策全般にわたり議論を深める姿勢は見えない。

 霞が関の官僚は取材に漏らした。「自民党政権としても簡単に解決しない核のごみ問題で失敗したくない。動きだすとしても7月の参院選以降だろう」

 結局、先送りにならないか。科学的知見も含め、幅広い議論を始めるときだ。福岡県久山町の男性は「核廃棄物をこれ以上増やさないように行政、企業、市民が意見を出し合うべきだ」と訴えた。

 (相本康一、竹次稔がまとめました)

=2013/03/14付 西日本新聞朝刊=

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