鍵は風力 デンマークの挑戦(中) 北欧は一つの電力市場

コペンハーゲン沖の洋上風力発電施設
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 デンマークの首都コペンハーゲンの港から船で15分ほど沖合に出ると、出力2千キロワットの風車20基が並ぶ「ウインドファーム」があった。首都の電気需要の約3%を賄う。

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 20基のうち大手電力会社ドンク・エナジーが10基を所有、残りを約1万人の市民が出資する形態。年間で8~10%の安定配当があり、業界関係者は「人気がありすぎて所有権が出回って売買されることもない」という。

 同社は欧州各地で効率が良い大型の洋上風力を計画中。仮に約40万キロワットのウインドファームを造るとなると、投資額は約1200億円に上る。そこに過大なリスクを負わない保守的な資金運用をする大規模投資家、年金ファンドも参画し始めている。

 「市民風車の長い歴史があったから、風力発電の拡大政策を国民が理解している」。地元大手紙記者、ソエン・スプリングボーはこう指摘した。

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 2020年までに電力の50%を風力発電で賄う目標を掲げるデンマークは、したたかな戦略を持ち合わせている。

 デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北欧4カ国は02年、電力を相互融通する市場「ノルド・プール」をスタートさせた。4カ国を送電網で結び、電力の安定供給を図っている。

 参加国の電力構成はノルウェーは95%が水力、スウェーデンは水力が45%で原子力40%、フィンランドは35%が火力で原子力32%(11年のデータで電力量ベース)と各国ばらばら。雪解け水が多い春はノルウェー、風の強い時期はデンマークの風力などと国を超えた“エネルギーミックス”が各国の安定供給と価格抑制に寄与している。

 デンマークはこの市場で電力を上手に輸出入しながら、出力にばらつきがある風力発電の技術革新を促し、普及させてきた。政府は固定価格買い取り制度を含めたすべての支援策を20年に終了する。そのころには市場に委ねても風力発電は成り立つとみているのだ。

 気候エネルギー建設相、マーティン・リデゴーは力を込めた。「デンマークは小国。風力の余力を販売できるよう市場を大きくするため、ドイツや英国とも電力ネットワークを強化する」

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 デンマークは年間消費量の最大約10%をノルド・プールから調達。間接的には、原発に依存するフィンランド、スウェーデンを頼っていることになる。「そばに原発は欲しくないが、他国の原発の恩恵を受けているのはみんな分かっている」。地元記者、スプリングボーはこう明かす。

 さらには、50年には「すべてのエネルギーで脱化石燃料を実現する」としながら、北海油田の開発を続け、石油などを輸出して外貨を稼ぐ方針。「北海油田の開発と輸出をやめても、他国が生産するだけだ。われわれはその辺をうまく考えている」。気候相リデゴーに迷いは見えない。

 デンマークでは政権交代が約10年ごとにあるが、課題や矛盾を抱えつつも、再生可能エネルギーにぶれずに取り組んでいる。日本の外務省関係者は「長期的な視点が必要なエネルギー政策を大きく変更しない合意形成が強み」と指摘する。

 四方を海に囲まれた日本でもノルド・プールのような国際電力市場を創設できないか-。元総務相の増田寛也を座長とする「日本創成会議」は11年10月、日本を含む「アジア大洋州電力網」構想を提言した。 (敬称略)

=2013/03/21付 西日本新聞朝刊=

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