原発のゆくえ 岐路に立つ米国(中) 大需要支える多電源

写真を見る

 米国東海岸、ワシントンの9月は日差しが心地よい。長袖シャツ1枚で快適だ。国務省のビルに足を踏み入れると、上着を持って来なかったことを後悔した。エアコンが効き過ぎているのだ。

     ◇     

 室内の設定温度を警備員に尋ねた。「いまカ氏72度(セ氏約22度)ですね」。オフィスでは真夏でも男性はネクタイにジャケット姿が一般的。日本のクールビズのスタイルを説明しても、国務省の職員たちはまったく関心を示さなかった。

 「米国人に節電という考え方はほとんどない」。移住して6年の日本人女性(32)はそう話す。行政側がエネルギー効率向上のため建造物に規制を設けるなどの動きはあるものの、帰宅時に快適なようにと外出時にはエアコンをつけっぱなし。集合住宅では全体の使用電力を住民が均等に割って支払うため、節電意識が根付きにくいという。

   □   □

 「All of the above(活用できるものはすべて使う)」-。オバマ大統領はそんな言葉で自らのエネルギー政策を語る。電力の安定供給のために電源の多様化を図る狙いとはいえ、旺盛な電力需要を支える、米国ならではの理念とも取れる。

 米国はいま、地下深い岩盤に埋まる天然ガスと石油の「シェール革命」に沸く。掘削技術の革新により生産量が急増。シェールガスは全米の電力需要100年分の埋蔵量があるとされ、増産で価格も下落した。日本への輸出も現実味を帯びる。しかもガスを使う火力発電所の建設費は原発の5分の1で済むという。

 米国の電源構成に占める原発の割合は現在約20%。エネルギー政策に詳しいシンクタンク「ブルッキングズ研究所」のチャールズ・エビンガー上級研究員は「シェールガスの登場で原発依存度は今後10年間で15~16%に減少する」と予測する。

 だがオバマ氏は、地球温暖化対策に取り組むとして、再生可能エネルギーとともに二酸化炭素の排出量の少ない原発も重視する。

   □   □

 米国では原発は稼働期間が40年と定められているが、原子力規制委員会(NRC)の許可を得れば20年の延長が可能。既に104基中73基が延長手続きを済ませた。安全確保のため延長にかかる審査を厳格化すると同時に、80年まで再延長を認めるかどうかの検討も進められている。

 一方で、米国の原子力業界は作業員の高齢化という課題を抱えている。TMI原発事故後、原発の新設が中止になり、技術者の育成が進まなかったからだ。現在、大手電力会社は大学にプログラムを提供するなどして人材育成に力を入れる。ある州政府関係者は「連邦政府も産業界も技術継承の大切さに気付くのが遅かった」と打ち明ける。

 34年ぶりに建設許可が下りた新規原発4基はいずれも東芝の子会社の米ウェスチングハウス・エレクトリックが建設する。米国は日本と原子力協定を結び、日本の核燃料サイクル政策の後ろ盾だが、日本の原発技術は米国の「34年の空白」を埋めるものでもある。

 「日本国内の市場を失えば、日本の原発メーカーが最新技術を維持するのが難しくなる」

 エビンガー研究員は米国の立場から日本の動向を注視する。

=2012/12/22付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]