「死にたい」という女性を捜す心理は ある男性に訪れた変化

検索窓に「死にたい」と書き込むと相談先が表示される
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出会いを求める人たち<4>

 一歩間違えば、座間事件の被害者のようになるかもしれない。でも、怖くなかった。どうせ死ぬから。

 イズミさん(21)=仮名=は今春、自分を「殺(や)りたい」と自殺サイトに書き込んだ。発達障害の影響もあって就職先が決まらず、自暴自棄になっていたころだった。

 昨年10月、神奈川県座間市で9人の遺体が見つかった。殺害された被害者の多くに自殺願望があり「一緒に死のう」と誘い出されたとされる。自分にも「手助けします」と書き込みがあった。会いには行かなかった。東京の人だったから。近ければ行っていた。

 今もアルバイト先の同僚とうまくいかないときなどは、自殺サイトのほか、SNSで見知らぬ人に寂しさを漏らす。慰めてくれるのは最初だけで、たいてい二言目には「エッチさせて」と心の隙を突いてくる。

 味方はどこにもいないのか。これまで3度、自殺を図った。腕には傷が残る。

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 正直、最初はエッチ目的だった。福岡で暮らすヒロさん(25)=仮名=はSNSで知り合った「死にたい」という女性たちと接するうちに自分に変化を感じた。

 昨年、宮崎から家出してきた高校生を自宅に泊めた。学校や家庭の悩みを聞いていると突然、6階から飛び降りようとした。必死にすがりついて止めた。

 20代女性は介護の仕事で失敗し、施設を辞めた。遠距離なので電話しかない。介護だけが仕事じゃない、ゆっくり考えて。そんな会話を1カ月、交わした。携帯電話代は40万円かかったが、持ち直してくれた。

 理解してほしい、必要とされたい…。彼女たちの心の奥底にある思いが分かる気がした。自身も5年前、服薬自殺を図っていた。

 福島出身で、幼くして親が離婚し、父の実家で肩身を狭くして育った。2011年の東日本大震災の時は少年院にいた。故郷は原発事故で避難区域に入り、帰る場所はなくなった。

 福岡に流れ着き、気晴らしにSNSで「死にたい」の言葉を検索した。会っているうちに、心が満たされていくのに気付いた。「必要とされたことがなかったから」。今、彼女がいる。その人の味方でいたい。

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 ヤフーもグーグルも、ツイッターもフェイスブックも、検索窓や投稿欄に「死にたい」と書き込むと相談窓口が表示される。味方はいるよ-。そう呼び掛けるような自殺予防の試みが、座間事件を前後してネット上に広がっている。

 ツイッター社と協力する認定NPO法人3keys(スリーキーズ)=東京=によると、投稿から相談サイトMex(ミークス)へのアクセスが17年度は14万件を超え、4258件が相談につながったという。

 イズミさんも最近、味方を見つけた。フェイスブックで生母を探し当て、18年ぶりに再会した。3歳で別れて覚えていないはずなのに、なぜか懐かしかった。「会えて良かったな」。生きたいと思えてきた。

●連載で伝えたいこと

 出会い系サイトや専用アプリ、SNS…。インターネットの普及で出会いの間口が広がっている。半面、見えない世界だけに危険も潜む。

 神奈川県座間市で昨年10月、9人の切断遺体が見つかった。今年2月には大阪市の民泊で女性の遺体が見つかり、米国人の男が傷害致死罪などで起訴された。いずれも被害者と加害者はSNSで通じていた。

 子どもたちも巻き込まれている。警察庁によると2017年、アプリやSNSを介して買春などの被害に遭った児童生徒は1813人に上り、5年連続で最多を更新した。

 もちろん健全な出会いもたくさんある。婚活市場は盛り上がり、新ビジネスも続々と登場している。光と影、灰色の世界。この連載では「出会い」をキーワードに時代の今を切り取る。

=2018/06/21 西日本新聞=

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