【地域再生座談会4】住民が愛する町にする

夕日の里の農家民泊(宮崎県五ケ瀬町)
夕日の里の農家民泊(宮崎県五ケ瀬町)
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(左から)飯干辰己さん、川口幹子さん、山下祐介さん、山口覚さん
(左から)飯干辰己さん、川口幹子さん、山下祐介さん、山口覚さん
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山下氏 子孫へ 資源守る覚悟を


 -中長期的な視点としては何が必要だろう。

 山下 地域を外部の人に開くことによって、その土地の大事な資源を奪おうとする人々も現れる。地域には本当は資源があるのに役立てられておらず、継承されていないという指摘があるが、今の世代には無理でも子孫には伝えるべきものがある。守らなければならない資源を確認して、それを守る覚悟を持たなければならない。

 これまでに成功した地域づくりというものは、その1回だけの手法。なかなか他の地域に応用できるものではない。覚悟したからできたのであって、物まねでなく覚悟を持つことだ。「こんなうまい話がある」という誘いには気を付けるべきだ。移住者についても、本当に自分たちの地域を守ってくれる人かどうか見極める必要がある。

 -模範解答はない。

 山下 注意しないといけないのは、依存しているのは地方ではなく都会の人だということ。離島、山村のお年寄りは1人で生きていけるが、都市住民は生きる力が一番弱いのに自立していると錯覚している。この感覚を変えなければならない。都会と地方は共依存の関係だ。都会は農村があって初めて成り立つし、農村も都会があって成り立つ。銀座のレストランは農業がなければ成り立たない。「お互いさま」の関係が持続的な社会を可能にするのだが、経済成長や競争を重視してきた社会の中で、地方が財政的に中央に依存しているかのような構造になってしまった。

 どちらの世界も成り立つようにするのが政治の役割だし、それを怠って競争だけを促すのは無策だ。だからこそ、地方創生に関して、地方はもっと声を上げなければならない。霞が関の役人の中にも今の国のかたちに疑問を感じている人はたくさんいる。声を上げれば、この国にはまだ希望がある。

山口氏 誰と生きる 考える時代

 -地方集落にはコミュニティーが残り自力があるとされ、大規模開発された郊外型集合住宅の高齢化問題がより深刻とも言われる。処方箋はあるのか。

 山口 「どんな仕事をするのか」というこれまでの価値観から、「どこで生きていくのか」という段階を経て、人々は「誰と生きていくのか」を考える時代になった。

 郊外型集合住宅には、農山村のような自然環境の魅力はないが、あの人がいれば私も住み続けられるというコミュニティーがあれば生きていける。長崎市に「ダイヤランド」という団地があり、高齢化している。いま、都会に出て行った子どもたちがこの団地に戻ってきている。なぜだろうと自治会を訪ねてみたところ、住民がこの町をすごく愛していることが分かった。定年退職した人がシャッター通りと化した商店街で新たなパンの店などを開いている。この姿を見て、子どもたちはこの町に戻ろうと思うんだろうと思う。示唆に富む事例ではないか。

(了)

◎地方創生 人口減少の克服や東京一極集中の是正を目指す安倍政権の看板政策。政府は2014年末、60年時点で1億人程度の人口を維持するため、人口減少対策の5カ年計画「総合戦略」を閣議決定し、15年度を「地方創生元年」と位置付けた。今年3月末までに雇用創出や定住策を盛り込んだ「地方版総合戦略」を策定した都道府県と市区町村には、15年度補正予算案と16年度予算案に盛り込んだ合計2000億円の交付金を支給するなど財政支援。20年までの5年間に、東京圏から地方へ約10万人の人材を還流させるなどとしている。

◎増田リポートとその後 増田寛也元総務相が座長を務める日本創成会議は2014年5月、人口の減少と首都圏への集中がこのまま続けば、日本の半数の市区町村が行政サービスの維持が難しくなり消えてしまうと推計し、「2040年までに896の市町村が消滅する」と発表した。いわゆる増田リポートである。市町村名も公表したため、名指しされた自治体に大きなショックが走った。一方、人口推移の分析法や、東日本大震災後の「地方移住」の流れが加味されていないことなどを問題視する意見も少なくない。ただ増田リポートが、結果として地域の現在と未来を議論するきっかけの一つとなったのは確かだろう。

【地域再生座談会】(1)地方創生、使いこなせ

【地域再生座談会】(2)地域づくり論ずるとき

【地域再生座談会】(3)豊かさの価値観見直す

=2016/01/03付 西日本新聞朝刊=

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