【地域再生座談会1】地方創生、使いこなせ

津屋崎ブランチ代表 山口覚氏(やまぐち・さとる) 北九州市出身。大学卒業後、大手ゼネコンの鹿島に就職して東京へ。建設省(当時)所管の財団に出向したときに過疎地域の現実を知る。2002年に鹿島を退職し、NPO法人地域交流センター理事。05年九州へUターン、09年に津屋崎に移住。1級建築士。46歳。
津屋崎ブランチ代表 山口覚氏(やまぐち・さとる) 北九州市出身。大学卒業後、大手ゼネコンの鹿島に就職して東京へ。建設省(当時)所管の財団に出向したときに過疎地域の現実を知る。2002年に鹿島を退職し、NPO法人地域交流センター理事。05年九州へUターン、09年に津屋崎に移住。1級建築士。46歳。
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首都大学東京准教授 山下祐介氏(やました・ゆうすけ) 富山市生まれ。九州大大学院文学研究科社会学専攻博士課程中退。九大助手、弘前大准教授などを経て2011年から現職。専門は都市社会学、地域社会学、環境社会学。主な著書は「限界集落の真実 過疎の村は消えるか」「地方消滅の罠」など。46歳。
首都大学東京准教授 山下祐介氏(やました・ゆうすけ) 富山市生まれ。九州大大学院文学研究科社会学専攻博士課程中退。九大助手、弘前大准教授などを経て2011年から現職。専門は都市社会学、地域社会学、環境社会学。主な著書は「限界集落の真実 過疎の村は消えるか」「地方消滅の罠」など。46歳。
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一般社団法人・MIT専務理事 川口幹子氏(かわぐち・もとこ) 青森市生まれ。北海道大大学院環境科学院で学位取得後、東北大研究員、長崎県対馬市委嘱の対馬市島おこし協働隊を経て隊員と2013年3月にMIT設立。対馬市上県町志多留地区に移住し、高齢者も参画できる共同栽培、田んぼの再生などに取り組む。36歳。
一般社団法人・MIT専務理事 川口幹子氏(かわぐち・もとこ) 青森市生まれ。北海道大大学院環境科学院で学位取得後、東北大研究員、長崎県対馬市委嘱の対馬市島おこし協働隊を経て隊員と2013年3月にMIT設立。対馬市上県町志多留地区に移住し、高齢者も参画できる共同栽培、田んぼの再生などに取り組む。36歳。
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元宮崎県五ケ瀬町長 飯干辰己氏(いいほし・たつみ) 宮崎県五ケ瀬町生まれ。山口県下関市立大卒業後、五ケ瀬町役場に入庁。企画商工課長を辞職し町長選に出馬した2002年5月、初当選。五ケ瀬ハイランドスキー場の運営会社社長や社団法人全国国土調査協会副会長を務め14年5月に3期12年で町長を退任。59歳。
元宮崎県五ケ瀬町長 飯干辰己氏(いいほし・たつみ) 宮崎県五ケ瀬町生まれ。山口県下関市立大卒業後、五ケ瀬町役場に入庁。企画商工課長を辞職し町長選に出馬した2002年5月、初当選。五ケ瀬ハイランドスキー場の運営会社社長や社団法人全国国土調査協会副会長を務め14年5月に3期12年で町長を退任。59歳。
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 人口減少社会の中で、東京一極集中を是正し、地域に活力を取り戻すための政府の地方創生施策が進められている。「地方消滅」の危機も指摘される中、全国の自治体では人口対策、雇用創出策などを地方版総合戦略として策定中だ。学識経験者や元首長、地域づくりに携わる実践者などを集め、地方創生の今の動きや九州の現状、必要な視点などについて話し合ってもらった。(敬称略、司会は西日本新聞社編集企画委員長・山浦修)

 -国が主導する地方創生の動きをどう見るか。

 山下 人口減少の原因は東京一極集中だと、政府自身が明確にしたのは評価できる。だが、(1)地方が頑張らないから人が地方から中央に流れる(2)地方が人口移動を止めなさい-という話になり、「仕事をつくりなさい」と言っている。まちづくり、人づくりより仕事づくりが中心だ。政府は中央から地方へ移住を進めるのが切り札と明示しているが、人を動かしたからといって人口が増えるわけではない。(総和がゼロになる)ゼロサムゲームでしかない。最大の問題は東京でメニューを作り、地域にやらせる東京一極集中型の権力構造で、一極集中の阻止を図る点。政府の人口減への問題意識は間違っていないだろうが手法は疑問だ。

飯干氏 分権型社会の確立急げ

 飯干 2000年に地方分権一括法が施行された当時、「地方と中央の状況が変わる。地方分権が進む」と考えた。しかし、起きたのは平成の大合併だった。増田リポートが出されたのは14年5月の五ケ瀬町長退任直前。多くの自治体に消滅の可能性があるとショッキングに報じられたが、「各自治体は人口減少を織り込み済み。自らの町を考え、住民と議論する契機になる」と思ったものだ。

 だが国の地方創生の手法には、合併の時と同じ香りがする。自治体が浮足立っている。地方版総合戦略の年度内の提出を国に迫られるだけでは冷静な判断、議論ができない。地域は絶対に消えない。住民も心配していない。やるべきことは、分権型社会を早く確立することだ。自分たちの町は自分たちで考える。住民、NPO、大学が連携して町の未来を考えることだ。

 川口 総務省の地域おこし協力隊制度で、4年半前に長崎県対馬市上県町志多留地区に移住した。従来の地域支援は公共事業で仕事を創出し、働き手を養う形が多かった。協力隊は起業家、つまり仕事をつくる人そのものを増やす。その起業に当たり、地域にどういう資源、ニーズがあるか調べた。必要な人・金・ものを見つけた。すると、なぜこれが産業にならないのか、生かさないのかと思った。観光もそうだ。活用されない資源が多く、資源がお金になっていない。

 地域資源の豊かさと、経済的資源の豊かさが同じ尺度で測られていないことが都会への人口流出を進めている要因ではないか。企業・工場誘致や本社機能移転が論議されがちだが、その土地にある資源を産業に生かす視点で、産業構造の議論をもっと行うべきだ。

山口氏 東京にはない価値観を

 山口 地方創生は日本変革の好機だと明るい未来を感じたが、地方分権という名を使って中央集権を進めている印象だ。地方にお金をばらまいて、東京のコンサルタントが、金太郎あめのような計画を立て、お金を東京へ持ち帰る。地方も「東京の最先端情報がいい」と、競争原理にのみ込まれてあがいている。

 都会に近づくのがいい、人口が1人でも増えた方がいい未来などという都会を頂点にした価値観が地方の疲弊を生んでいる。東京では考えもつかない、新たな価値観をつくることだ。

 例えば仕事だ。下級武士が傘張りや裏庭の農業もしていたように、昔は仕事を幾つか組み合わせて生きていた。だから活動する津屋崎で副業を掲げ、月5万円の仕事四つで20万円稼ぐ手法を取った。「所得」を「そこそこの幸せを得るためのコスト」に変えてみた。生活するのに必要なお金は東京より地方の方が安い。つまり、地方の方が幸福な暮らしができる。

(続)

【地域再生座談会】(2)地域づくり論ずるとき

=2016/01/03付 西日本新聞朝刊=

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