ハンドボール農家と「兼業」 「フレッサ福岡」糸島で1月始動

選手が農作業する「日高農園」のビニールハウスで日高代表取締役(左)と握手するフレッサ福岡の前川代表=福岡県糸島市
選手が農作業する「日高農園」のビニールハウスで日高代表取締役(左)と握手するフレッサ福岡の前川代表=福岡県糸島市
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 選手は全員「兼業農家」-。そんな異色の男子ハンドボールチームが2016年1月、福岡県糸島市で始動する。2018年の日本ハンドボールリーグ(JHL)参入を目指す糸島市の「フレッサ福岡」。クラブは選手へ給与を払う代わりに、地元農家を紹介。農作業をし、収穫物を売って稼ぐ。資金不足のクラブと労働力不足の農家が悩みを解決しあう取り組みに、前川健太代表(37)は「新たなモデルケースになれば」と期待する。

 前川さんは警察官を辞め出馬した4月の福岡市議選で落選。新たな人生を模索する中、高校1年から続けているハンドボールの厳しい現状を見つめた。男子日本代表の五輪出場は1988年ソウル大会が最後。実業団中心のJHLは景気悪化などで休廃部が相次ぎ、最大18チームあった男子は9チームまで減った。九州でもホンダ熊本が2007年に撤退し、現在はトヨタ紡織九州(佐賀)だけ。「福岡で一流選手を育て、大舞台に送り出したい」との思いが募った。

 最大のネックは人件費。選手1人あたり年間約300万円は必要とされる。資金の工面に悩んでいた8月、知人に紹介されたのが糸島市で洋蘭を栽培する「日高農園」代表取締役の日高輝富さん(57)だ。日高さんは昨年からイチゴも生産。贈答用として中東に輸出する計画を業者から持ちかけられ、人手を探していた。「労働力なら選手がいる」と前川さんは提案。日高さんも「今は求人しても来ない。後継者も探していた」と歓迎した。

 選手たちは夜に練習。日中は農家の下でノウハウを学び、一緒に生産する。作物は福岡の農業生産法人が買い取り、主に海外で販売される。収入の一部が選手に渡る仕組みだ。「農作業は選手の体力強化にもつながるし、地域に根ざせばチームも注目される。引退後の生計も立てられるので、有力選手も来やすいはず」と前川さんは見込む。

 農家側も歓迎する。農林水産省の「農林業センサス」によると、糸島市の農家数は1990年の3618戸から減り続け、2010年は2425戸。「高齢化が激しく、仲間と話しても明るい話題を探すのが難しかった。何か始まるという期待がある」と日高さん。賛同農家は7戸になった。

 1月10日に糸島市で選手の選考会を行い、12人を採用予定。16年に国体出場、18年JHL参入を目指す。夢は20年の東京五輪で代表を送り出すことだ。「みんな覚悟を持ってくる。選手も自分もここで骨をうずめるつもり」。前川さんは鼻息を荒くした。

=2015/12/26付 西日本新聞朝刊=

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