【脊梁の山里発】暮らしの豊かさ感じ移住 諸塚村観光協会事務局長 田邉 薫さん(31)

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この春結婚し、新居に移った田邉薫さん。「根を張ることになるかもしれませんね」
この春結婚し、新居に移った田邉薫さん。「根を張ることになるかもしれませんね」
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 宮崎県諸塚村は標高300~500メートルの山の斜面に集落が張り付いています。そこから眺める朝日、夕日が好きです。「山村暮らしが面白そう」と学生時代に初めて来て、林業やシイタケ栽培、畜産などを手伝いました。イノシシやシカ猟、ウナギ釣り、蜂の子採りを教わり、秋祭りで青年団が演じる地芝居、冬の夜神楽にも参加しました。一年を通し自然の恵みを受けて暮らし、人とつながり、出身地の東京よりも暮らしの豊かさを感じました。振り返ってみても、人生で最も濃い時間でした。

 【東京学芸大3年だった2006年4月、全国の農山村にボランティア派遣するNPO法人「地球緑化センター」(東京)の「緑のふるさと協力隊」に応募、1年を諸塚で過ごした。】

 復学後も卒業論文を“口実”に通いました。テーマは「蜂の子採り」。恩師は「研究自体が環境学習なので、無理して学習活動に結びつけた論文にしなくてもいい」と言ってくれました。高校時代から山登りをし、大学関連のNPO組織に入ると東京・多摩地方で子どもたちとのキャンプや生活文化などを体験しました。そんな経験から、「いずれ東京を離れるだろう」と感じていました。卒業後は静岡の自然学校で研修職員として富士山の自然を案内していましたが、「やりたい仕事ができる」と知って諸塚に移住しました。

 【09年5月、村観光協会に就職。職員5人中、自らも含め移住者は3人。村の暮らしの体験交流、移住相談などを担う。】

 諸塚は人が一番の観光資源で、「付き合ってなんぼ」の世界。ブラッと立ち寄るだけでは分かりづらいけれど、暮らしを体験し会話すれば良さが分かります。観光に数値目標は必要ですが、それだけでもない。移住者なら誰でもいいと招き、「やっぱりだめ」と立ち去られると地域の方がダメージが大きい。移住にもお見合い期間が必要で、お試し滞在などを通じて諸塚の良さを理解してもらうようにしていきたい。

 【昨年から始めた移住相談業務も含め、観光協会の土台を整備していくことが夢だ。】

 村の人々が認め、村の子が働きたいと思う職場にしたい。深い山の中ですが、人々は環境を生かし自然の中で生きている。諸塚の山は針葉樹、照葉樹、広葉樹がパッチワークのように組み合わさり「モザイク林」と呼ばれています。建築用の針葉樹、シイタケ栽培用の広葉樹など、家族の労働力で土地を有効利用し、長年かけてつくってきた山が景観になっている。自然と寄り添い、楽しむ良さを多くの人に伝えたい。

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 九州脊梁(せきりょう)と呼ばれる宮崎県の山村地域に、豊かな自然とともに生きる人々がいる。高齢化、人口減の中、土地の魅力を感じ地域を創る人々に思いを聞いた。

=2016/07/01付 西日本新聞朝刊=

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