「ここで生きるネット」発 坂本毅啓・北九州市立大准教授

坂本毅啓氏
坂本毅啓氏
写真を見る

 都会への若者流出 「この地域が必要」と思う経験を

 人口減対策には、移住によって流入を増やす手法のほか、流出を抑制する手法があるが、政策としては後者はあまり語られていないように感じる。

 兵庫県のある市で以前、地域課題を町内会の人たちが考える催しに参加した。地元の方が「若者がいない」としきりに嘆くので、アドバイザー役の私が「皆さんのお子さんはどこに?」と尋ねると、「都会に出て行った」「うちの地域は優秀な子が多かったからな」とうれしそうなんです。それを聞き、申し訳ないが、「出て行ったんじゃなくて、皆さんが追い出したんじゃないですか」と言いたくなった。都会の有名大学に行き、有名企業に入ることが、わが家の誉れ、地域の誉れという発想自体を、立ち止まって考え直すべきではないかと思う。

 若者の多くが高校卒業後、大学に進む時代。都会の大学に進学し、そこで生活基盤を築き、便利で自由な暮らしを知った彼らが簡単に地方に戻ってくるでしょうか。地方に雇用の場が少ない問題は大きいが、進学が人口流出の大きな契機になっていることは確かだ。地方大学を魅力的にすることが、実はすごく重要。若者流出の防波堤機能として、地方大学の活性化を打ち出した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は正しい方向だ。2014年末に閣議決定されている。

 どうすれば子どもたちに、地方で暮らし続けたいと思ってもらえるか。答えは「地域のために君が必要」ではなく、彼らに「自分にはこの地域が必要なんだ」と感じられる経験があるかどうかが鍵。手前みそになるが、それを教えてくれたのが、北九州市立大の「ハッピーバースデープロジェクト」だ。

 同市小倉南区の東朽網小学校の放課後児童クラブから、毎月開く誕生会を「ケーキを食べて終わりのイベントにしたくない」と相談があった。そこで大学でボランティアを集め、毎回学生が企画した誕生会をやった。宿題の後、一緒にゲームをしたり、歌を楽しんだり。ある時、児童クラブを卒業する1人の子が「自分も将来、ここに戻ってきて、ボランティアをするんだ」と言ってくれた。誕生会は10年ごろに始まり、今も続いている。

 要は、子どもたちに体験や思い出を通じ「自分が生きる場所はここだ」と愛着を持ってもらうこと。それが、彼らを地域に引き留める力になると思う。
(談)

 坂本 毅啓氏(さかもと・たけはる) 1975年生まれ、大津市出身。2010年から現職。北九州市内で高齢化団地や生活困窮世帯の子どもたちへの支援に携わる。専門は社会福祉学。

   ◇   ◇

 地域活性化に取り組む「ここで生きるネット」メンバーの意見や見解、見識を月に1度、紹介します。

=2017/03/24付 西日本新聞朝刊(オピニオン)=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]