今、このまちに注目(上) 脱「地方消滅」のヒントとは

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鹿児島県鹿屋市の魅力を発信するアイドルグループ「AKB」の結成を発表する(左から)タレントの半田あかりさん、かのやカンパチロウ、ばらら
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モミジの葉などを「つまもの」として出荷する葉っぱビジネスが盛んな徳島県上勝町
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宿泊用に改装された長崎・小値賀町の古民家
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楽しい学校生活を送る大分県宇佐市の院内中部小上院内分校の児童3人(2016年03月撮影)
楽しい学校生活を送る大分県宇佐市の院内中部小上院内分校の児童3人(2016年03月撮影)
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 政府が地方創生策を打ち出さなければならないほど疲弊し、危機的状況にあるとされている地方。だけど住民主体で活性化に挑戦している事例は、全国津々浦々にある。その中から特に元気な取り組みを、「ここで生きるネット」メンバーによる推薦と、記者の取材によってセレクトし、2週にわたってテーマごとに紹介する。脱「地方消滅」のヒントが隠れている、このまちに注目!

 地域の宝 あるものをビジネスに

 その地にしかないモノ、その地でしかできないコト。そんな「地域の宝」を生かした、ユニークな活性化策をピックアップした。

 徳島県中部の山あいにある上勝町の「宝」は一風変わっている。和食に添える葉や花などの「つまもの」を、高齢者が商品化する「葉っぱビジネス」を1986年に始めたのだ。現在は農家約170戸が、モミジや南天など320種類以上の葉っぱを栽培・収穫し、全国に出荷している。年収1千万円以上の世帯もある。

 鹿児島県鹿屋市は、遊び心を付加価値にした特産品で話題づくりに努める。地域資源の豚バラ肉と薔薇(ばら)を組み合わせた「豚ばら丼」。カンパチを首都圏の環状8号線(通称カンパチ)周辺でもPRする「かのやカンパチロウ」。イベントに登場する「薔薇王」。オフィシャルリポーターになった移住関西女性タレント。全国丼サミットまで開催した実践の底流には、「あるもの生かせ」「愛着育め」の思いがある。

 鹿屋市がカンパチなら、同県長島町はブリだ。ブリ養殖日本一の同町では町出身の高校生、大学生、専門学校生に「ぶり奨学金」を貸与して修学を支援。卒業後、Uターンした場合は奨学金の返済を補助する仕組みをつくった。ブリをはじめデコポンや和牛など地元食材を、作り手の思いをストーリーにまとめた冊子とともに発送する「長島大陸食べる通信」も2015年にスタート。「長島町ファン」を開拓している。

 交流 都市の住民に体験提供

 他の地域、特に大都市圏の住民との交流を続け、深めることで活性化の糸口を探す取り組みもある。

 新潟県十日町市にある「NPO法人十日町市地域おこし実行委員会」は、2004年の新潟県中越地震を機に生まれた。被害を受けた限界集落の存続を目指し、都市住民を受け入れる移住促進事業、都会と農村をつなぐ体験交流事業、農産物直販事業などを展開。この地は限界集落から脱し「奇跡の集落」と呼ばれている。

 長崎・五島列島の北部にある小値賀町は、小値賀島と周辺の島々から成る人口約2600人の離島の町。「NPO法人おぢかアイランドツーリズム協会」が、一般家庭約25軒による民泊や築100年以上の古民家を再生した「古民家ステイ」などに取り組んでいる。素朴な暮らしや自然体験が都市住民の人気を呼んで、福岡などの宿泊利用者が年間約6千人に上っている。

 岡山県美作市の上山地区では、都市の若者がつくる異業種交流会メンバーとの交流から、荒れていた棚田の再生が始まった。地区に通う若者たちはNPO法人英田上山棚田団を結成。一部が移住して住民と一緒に一般社団法人を設立し、中山間地での新たな移動手段(モビリティー)の実証実験や地域医療、伝統行事の継承などに取り組んでいる。

 鳥取県日野町が交流を目指すのは、町外に住む出身者らゆかりの人たちだ。昨年2月、全国に先駆けて「ふるさと住民票」を導入した。町政に関心を持ってもらい、将来の移住につなげるのが狙い。登録すれば、ふるさと住民カードを発行し、広報紙やイベント情報などを毎月届けるほか、町の計画や政策づくりへの参加を依頼する。登録数は1月17日現在、22都府県の136人。目標は町人口の1割に当たる300人だ。

 教育 地域ぐるみで学校守る

 「教育」を中心に据え、地域を次代に引き継ごうという試みが各地にある。

 過疎地で小規模な小学校の閉校が相次ぐ中、大分県宇佐市は「小規模校の維持」を掲げる。児童減で休校していた上院内小が、2010年春に新1年生が入学し、院内中部小の上院内分校として再出発した。学校行事に多くの住民が出席するなど地域ぐるみで分校を支える。児童数は春から2人に減るが市は廃校を避け、現在の27校(うち休校2)を維持する方針。

 島根県海士(あま)町では、廃校の危機にあった隠岐島前高の存続が町の未来を左右すると、魅力を高めるプロジェクトを展開。Iターン者も参加して地域住民の暮らしに学ぶ教育形態を整え、公設塾での学力向上、生きる力の養成に取り組んだ。同校に関心を持って島留学する生徒が増え、住民を訪ねて魅力を知るツアーも全国の中高生を対象に毎年行われている。

 鹿児島県出水市の蕨島(わらびしま)地区にある蕨島小は2010年度に児童が6人に減少。「学校は地域の核」との思いで住民らが委員会をつくり、児童増加を目指した。移住用に空き家を補修、校区外からの通学を認める制度の説明会を市内の小学校を回って開いた。無人販売所に住民が持ち寄った野菜の収益は、児童募集ポスターの製作費に充てた。この運動で児童数は回復した。

   ◇   ◇

 ここで生きるネット 本紙が連携する、地域活性化に携わる50人のネットワーク。メンバーは九州在住を中心とした学識者や実践者、行政の担当者らで、紙面を通して地方の未来を見据えた「現場起点の知恵」を発信してもらう。「今、このまちに注目」に取り上げた地域は、メンバーが回答したアンケートを基に選んだ。

=2017/02/03付 西日本新聞朝刊(オピニオン)=

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