「ここで生きるネット」発 大津 愛梨さん NPO法人田舎のヒロインズ理事長

大津愛梨さん
大津愛梨さん
写真を見る

 ◆女性農家

 夫の郷里である熊本県南阿蘇村で、後継者として就農したのは2003年のこと。以来、「東京から来た農家の嫁」として、田舎暮らしの楽しさを発信し続けている。その地道な取り組みが功を奏し、16年間で13組(15人)の移住にきっかけを与えた。そのうち9人が独身だったが、それぞれ伴侶を見つけて子どもができた。

 それだけではない。14年に女性農家の全国組織である「NPO法人田舎のヒロインズ」の代表に就任し、役員や運営体制を一新したのだが、この4年間で役員と事務局の職員あわせて7人が結婚し(新たな「農家の嫁」も誕生!)、11人の子どもが生まれた。

 なぜ?と移住定住推進に取り組まれている方々から尋ねられる。答えは簡単だ。自分自身が楽しんでいるから。人にアドバイスができるほど偉くもないし、社会経験もない。でもこの16年間、南阿蘇村を出ていこうと思ったことは一度もない。阿蘇が好き。ここでの暮らしが好き。それをひたすら発信しているだけである。私は人に「おいでよ」とは言わない。

 「農家の嫁」という立場についても同じだ。「農家のお嫁さんになるといいよ」とは言わない。「農家の嫁は特権階級だよ!」と言うだけだ。好きで結婚した人と長く一緒にいられることの幸せ。自分たちがつくった農産物を家族や友人に食べさせられることの幸せ。子どもができた時、夫が比較的近くで仕事をしてくれていることの幸せ。子どもに父親の働いている姿を間近で見せてあげられることの幸せ。農業はラクな仕事ではもちろんない。でもラクな仕事なんぞない、と思えば、「農家の嫁」と言うのは、なりたい人が続出してもおかしくないと本気で思っているほどだ。

 たった一つだけ、田舎で変えていきたいと思っていることがある。それは教育の選択肢を増やすことだ。公教育が悪いと言っているわけではない。農村の自然豊かな環境を活(い)かして、多様な学び方ができる場になっていけば、それを理由に都会から移る人が増えると思うのだが、いかがだろうか。

 大津 愛梨さん 1974年生まれ、東京都出身。阿蘇地域で地元食材の生産現場を巡る「レストランバス」のプロデュースも。2017年、国連食糧農業機関(FAO)の「模範農業者賞」に選ばれた。

=2018/12/02付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]