鹿屋「やねだん」再生23年 公民館長にふるさとづくり大賞 集落で焼酎開発、寺子屋も

「やねだん」の地域づくりをけん引している豊重哲郎さん
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 やねだんはまだまだ元気いっぱい-。鹿児島県鹿屋市の柳谷(やなぎだに)集落(通称・やねだん)で、「行政に頼らない地域づくり」をけん引してきた公民館長の豊重哲郎さん(77)が、総務省の2018年度「ふるさとづくり大賞」最優秀賞を受賞した。23年間に及ぶ集落再生の取り組みが評価され、個人での受賞は初めて。豊重さんは「住民、亡くなられた先人の方たちのおかげ。地域づくりへの自信と、『ぼやぼやするな』との宿題をもらった」とさらなる活動に意欲をみせた。

 大隅半島のほぼ真ん中に位置し、平野部にある集落で、地元の呼び方で「やねだん」という。130世帯252人(18年12月末現在)が暮らしている。

 1996年、過疎や高齢化に悩む住民の危機感に押され、豊重さんが55歳で公民館長に就任。以来、休耕地でのサツマイモ栽培やいも焼酎の開発、空き家を活用した「迎賓館」提供、子どもに勉強やピアノを教える「寺子屋」などを住民総出で次々に実行。2015年には、当時の石破茂地方創生担当相も泊まり込みで視察に来た。

 住民自治、自主財源、収益還元を柱に「地域活動に補欠はいない」が豊重さんのモットー。活動10年の節目には全世帯にボーナス1万円を配り、今も85歳以上の住民に支給している。

 近年はリーダー育成にも力を入れる。07年に始めた「故郷創世塾(ふるさとそうせいじゅく)」(年2回)の卒塾生は18年に千人を突破。県内外問わず行政マンらが3泊4日で、地域振興を学び、豊重さんの理念が各地で芽吹いている。

 地元やねだんを任せられる人材も育ってきた。豊重さんが中学校で指導したバレーボール部出身の50代男性だ。「創世塾の講師も務めていて安心して託せる」と豊重さん。「あと3年ぐらいで地域づくりの“運転手”をバトンタッチしたい。その後、私は一兵卒のボランティアだから思う存分使ってほしい」と笑う。

 この23年間で亡くなった64人の住民たちへの感謝も忘れていない。まだ実績はないものの、公民館を活用する「集落葬」の準備が整った。無縁仏を防ぐため、広場の一角に集団墓地を併設し、住民で管理する構想もあるという。

 集落の人口は増えた時期もあったが、最近は減少傾向にある。それでも、ここ3年ほどでUターンした家族が7組いて、去年は小学校への新1年生が3人誕生。今春は4人が入学する。「現在8世帯いる4世代家族を、20世帯にすることが私の夢。高齢者の孤食もなく、子どもが地域の中で育つ、みんなが笑って暮らせるコミュニティーを目指し続けたい」。やねだんと豊重さんは、今年も春の訪れを待っている。

 ◆豊重 哲郎(とよしげ・てつろう) 1941年生まれ、鹿児島県串良町(現鹿屋市)出身。地元の高校を卒業後、東京の銀行に就職。71年に帰郷してウナギ養殖などを始める。中学校男子バレーボール部も指導し、96年に柳谷自治公民館長に就任。3人の子は独立、妻と2人暮らし。

=2019/02/06付 西日本新聞朝刊=

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