外国人や高齢者にも期待 【第13部】老いの支え手 支えるには<4>

かむ、のみ込むことが難しい要介護5の利用者に、丁寧に食事介助をするタパ・プレイティさん
かむ、のみ込むことが難しい要介護5の利用者に、丁寧に食事介助をするタパ・プレイティさん
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 ネパール人の専門学校生タパ・プレイティさん(22)が、スプーンでスープを90代女性の口元に運ぶ。「あーん、ですよ」。介護付き有料老人ホーム「グッドタイムホーム5・山王公園」(福岡市)の夕食の風景だ。

 女性は要介護5。口の開け閉めが苦手なため、一口ごとに口の端からこぼれる。その口元を丁寧に拭い「おいしい?」と声を掛けると、女性は目を細めてうなずいた。

 同ホームを運営する株式会社創生事業団(同市)は、人手が必要な時間帯の業務軽減のため、2年前から留学生を「介護補助スタッフ」として雇っている。日本語学校などに求人を打診すると、4校が紹介してくれるようになった。「留学生のアルバイト先がなくて困っていた」という声もあった。

 現在、同社が運営する有料老人ホームのうち2施設で、計24人の留学生が働く。介護施設では、法律上資格がなくても働ける。留学生は、食事の配膳や後片付けなど、初歩的な仕事を担当。仕事に慣れ、タパさんのように適性の高い人は、服薬やベテランと組んでの入浴介助などもしている。

 国籍はネパール、ベトナム、ミャンマー、モンゴルとさまざま。日本人のパートと同じ時給750円から始まり、昇給や賞与もある。

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 人手不足が慢性化している介護業界は、あらゆる人材の受け入れを模索している。その一つが、外国人だ。

 国内では経済連携協定(EPA)に基づきインドネシア、フィリピン、ベトナムから介護福祉士候補者を受け入れており、資格を取った人のうち、1月現在で250人が働いている。さらに政府は、技能実習制度に介護分野を追加する方針。在留資格「介護」の創設を盛り込んだ入管難民法の改正案も、国会で継続審議になっている。

 事業所は、文化や習慣の違いに対する配慮が欠かせない。同ホームでは、時間を守るなど働く上での基本事項を英語で書いて配布。礼拝がある留学生は、その日にシフトを入れないなど宗教への配慮もしている。

 中には、すぐ辞める留学生もいるが、同ホーム生活支援部主任の水巻孝成さん(40)は「この仕事は合う人と合わない人がおり、その割合は日本人と差はない」とみる。

 タパさんは「(利用者が)ネパールの私のおじいちゃん、おばあちゃんと同じ感じ。家に帰ってきたみたい」とほほ笑む。卒業後も日本で介護職に就きたいが、現行制度では難しい。同社で留学生の雇用を担当する西野由美さん(47)は「介護で働き続けたい留学生が働けずに帰国するのを、何人も見送ってきた。早く改正法が成立してほしい」と願う。

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 もう一つ、介護業界が熱い期待を寄せるのが、高齢者だ。

 60歳以上の求職者が登録する福岡県70歳現役応援センター(同市)では、求人を寄せる企業・団体のうち、「介護補助」「介護施設での調理、清掃」など医療福祉分野が22%に上り、この4年間で倍増した。「年齢が近く、話が合う」と需要があるという。

 このため、センターは7月から、介護求人に特化したアドバイザーを置いている。11月からは、介護の基礎を学ぶセミナーなどを登録者向けに実施する予定。介護は体力が必要な仕事も多いため、事業所向けに、体力の個人差が大きい高齢者に配慮した手引きも作成中だ。

 若者向けに、介護職の悪いイメージを拭い去ろうという取り組みも進む。福岡県介護福祉士会では「仕事の魅力をPRできていなかった」(因利恵会長)との反省から、高校生に現場を体験してもらうツアーを企画している。因会長は「現場で高齢者と触れ合えば、介護の魅力がきっと伝わるはずだ」と自信を持つ。秋から実施する。


=2016/09/02付 西日本新聞朝刊=

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