慢性残業、業種に差 背景に商習慣 長時間労働抑制 制度化進まず 過労死等防止対策白書から<下>

表(1)
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グラフ(3)
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 政府が初めてまとめた「過労死等防止対策白書」は、企業約1万社、労働者約2万人を対象に実施したアンケート結果から、業種別の長時間労働の傾向や、睡眠時間と疲労・ストレスとの関係についても報告している。

 表(1)は、企業アンケートの結果から、平均的な月の時間外労働(残業)が45時間を超える企業の割合を業種別に並べたものだ。

 「運輸業・郵便業」が14%と突出し、慢性的な長時間労働となっている実態が分かる。

 最も多い月の残業が80時間を超える企業の割合を業種別に示したのが表(2)。全体では22・7%だが、情報通信業では実に44・4%に達している。

 残業が必要な事情について、企業側は「顧客(消費者)からの不規則な要望に対応する必要があるため」との理由を挙げる会社が最も多い。一方労働者へのアンケートでは「人員が足りないため(仕事量が多いため)」と回答する例が最多で、労使間の意識のずれもうかがえる。

 白書では、運輸業のトラック運送業について、コストに見合った適正な運賃を得られない中で「発注者である荷主の要請が厳しくなっているとされている」と指摘。取引先との関係や業界の商習慣が背景にあるとの見方を示している。

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 過労死リスクを高めるとみられる睡眠不足については「足りていない」「どちらかといえば足りていない」と答えた労働者が計45・6%に上った。睡眠時間が短いほど、疲労の蓄積やストレスが高い人の割合が多いという結果=(3)のグラフ=も示された。

 労働者全体では36・9%が「高ストレス状態」にあると報告されている。

 こうした現状について北里大医学部の堤明純教授(公衆衛生学)は「ストレスチェック」制度の活用を勧める。働く人の精神的不調を防ぐため、昨年12月から労働者が50人以上いる事業所に義務付けられた検査だ。堤教授は「ストレスの要因を従業員に挙げてもらうことで企業側が環境を改善することが可能になる」と話している。

 深夜まで残業し、早朝に出勤する-。こうした長時間労働の悪循環を防ぐためには、社会全体が働かせ方、働き方についての考えを変えていく必要がある。残業を抑制する具体的な取り組みとしては、残業の上限を厳格に定めることに加え、仕事を終えてから次の勤務までに一定時間の休息を義務付ける「勤務間インターバル」制度を導入すべきだとの声が多い。

 しかし白書によると制度を導入した企業はまだ2・2%にすぎず、導入を「予定」「是非を検討したい」との回答も合わせて8・6%にとどまる。

 厚生労働省は、導入した中小企業に助成金を出す方針を示しているが、過労死遺族からは「企業努力任せでは浸透は難しい」と、法律による義務化を求める声が上がっている。

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 ▼22日から九州各地でシンポ 厚生労働省は、過労死をなくす対策について考えるシンポジウムを11月の防止啓発月間に合わせ各地で開いている。本年度の九州分は次の通り。

 22日午後1時半、ホルトホール大分(大分市)▽23日午後2時、長崎市立図書館(長崎市)▽26日午後2時、佐賀県教育会館(佐賀市)▽同、宮日会館(宮崎市)▽12月3日午後1時、福岡商工会議所(福岡市博多区)。熊本会場は来年1月を予定。問い合わせはプロセスユニーク=03(6264)6433。

 鹿児島県では12月10日午後2時、NCサンプラザ(鹿児島市)で、民間団体が独自に過労死遺族の講演会を開く。問い合わせは同県働く者の健康問題懇談会=099(219)1765。


=2016/11/19付 西日本新聞朝刊=

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