日記で引き継ぐ父の魂 福岡県行橋市のイチジク「蓬莱柿」

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 福岡県行橋市の橋口農園。園主の橋口俊徳さん(61)に習い、イチジクの果実を成り口から下に皮を引いた=写真。ガブリとやると、軟らかくしっとりとした果肉が甘く溶け、かむたびに種がぷちぷちとはじける。このイチジクは「蓬莱柿(ほうらいし)」という品種。他のものよりちょっと小ぶりだが、ショ糖の割合が多いため、より甘く感じるそうだ。

 400年ほど前、中国から持ち込まれたといわれ、イチジクがなかった時代の日本人が柿に見立ててそう呼んだ。福岡県が開発した品種「とよみつひめ」は、その甘さを継承している。

 薬品会社に勤めていた橋口さんが、父親からイチジクと桃などの果樹園を引き継いだのは6年前のこと。その1年後に父親が他界。途方に暮れていた折、父親の日記を見つけた。

 「妻とケンカ」のようなほほ笑ましいのもあったが主体は作業の段取りや作物を観察した詳細な記述。経験の浅い橋口さんは、これを指南書として農業に取り組んだ。

 今だから分かることがある。それは、豊作時にあった「今年は出来が良い」という一言。それは「もうかるぞ」でなく、「こんなに良いのができた。見てくれ!」と、まるで立派に成長したわが子を誇るような気持ちで書いたということ。その真意が分かった時、橋口さんは父親に少しだけ近づけた気がしたという。

 江戸の世から、いろんな形で親から子へと伝えられてきたイチジク。心して頂戴つかまつる。

 ▼京築のイチジク蓬莱柿 福岡県みやこ町豊津物産直売所「国府の郷」などで300グラム500~750円で販売。10月下旬まで。今月19日午前11時~午後2時は福岡市博多区の県庁地下売店横会場で即売も。橋口農園=080(4698)1119。


=2017/07/15付 西日本新聞夕刊=

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