民謡編<339>ゴッタンの世界(22)

ゴッタンを弾く黒坂周吾
ゴッタンを弾く黒坂周吾
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 京都市の和太鼓バンド「バチ・ホリック」の黒坂周吾(41)がゴッタン奏者の荒武タミとゴッタンの故郷である南九州を旅したのは先月の中旬だった。1週間かけてタミを知る人々やゴッタン製作者を訪ねた。黒坂は約10年前からバンドにゴッタン演奏を取り入れ、国内外でツアー活動をしている。

 「郷土の楽器はその土地の風土から生まれたもので、ゴッタンという楽器の根にあるものを感じることができました。充実したゴッタンの旅でした」

 10年以上前、黒坂は人づてに「九州に幻の楽器、ゴッタンがある」と耳にして、心に何か引っ掛かった。まず、電話で問い合わせた福岡県庁は「知りません」。宮崎県庁で都城市のゴッタン製作者、黒木俊美を紹介された。黒木と連絡を取り、ゴッタンを1本、購入した。タミの演奏のテープも一緒に受け取った。タミの演奏を聴いた。

 「ブルース感、ロック感があり。かっこいいと思った」
 弾き方は自己流だ。ゴッタンは三線や三味線と違い、素朴で音が低い。バンドの演奏ではどうしても和太鼓の音に負けてしまう。黒坂はギターのようにフレットを付け、ピックアップを内蔵させて、いわゆるエレキ化して演奏した。

   ×    ×

 黒坂は「昔の形にとらわれる必要はない」と思う。その一方で改良すればするほど本来のゴッタンの音や形から遠のいてしまうのではないか。伝統と革新の葛藤。今回はその答えを見つける旅でもあった。

 黒坂は黒木を訪ね、改良したゴッタンを見せた。

 「どうですか」と黒木に聞いた。黒木は少し、時間を置いた後、「いいじゃないですか」と言った。旅の間、黒木以外にもゴッタンを継承している人や製作者に会い続けた。その人たちのゴッタンにかける熱意を知った。また、タミが長年住んだ鹿児島県曽於市の家などを見て回った。霧島山麓へ入り込むことで、ゴッタンが生まれた土壌や生活の中の楽器であったことを肌で感じることができた。

 和太鼓バンドは海外公演も多い。日本通の人でもゴッタンを知っている人はいない。「なんという楽器ですか」「どこで買えますか」。こう質問されるシーンもある。黒坂は答える。

 「これはゴッタンという楽器です。九州の鹿児島に行けば買えますよ」

 黒坂の今後の演奏には初めてゴッタンの風土を訪ねたことで、さらに新しい響きが加わることになるだろう。今年9月には福岡公演も予定している。 =敬称略

 (田代俊一郎)


=2017/06/19付 西日本新聞夕刊=

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