フォーク編<412>永井龍雲(15)

永井龍雲は沖縄の自然からインスピレーションを受けた
永井龍雲は沖縄の自然からインスピレーションを受けた
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 〈島風に吹かれ 心放ち 昂(たか)ぶる魂の詩(うた)を想(おも)う 阿檀(あだん)の涙 誰が知るや 朱色の実を付けて 嘆き鎮める…〉(島風詩想)

 21世紀を目前にした1999年、永井龍雲は沖縄に一家で移住した。アルバム「沖縄物語」(2006年)に収録されているこの「島風詩想」は移住して、最初に作った曲だ。同アルバムの中の「君色の夏」の中にも〈500mlの缶ビール片手に 海に沈む夕陽(ゆうひ)を ぼんやり見てる…〉とあるように、豊かな自然に囲まれた新天地で手足を伸ばし、深呼吸する龍雲の姿がある。南国の日々について龍雲は次のように語る。

 「サンセットの時間帯に約1時間、ジョギングをしている。それ以外は基本的に創作活動。飽きれば本を読んだり、映画に行ったり、買い出しに出かけたり。たまに友人に誘われ飲みに出る」

 龍雲が「基本的に創作活動」と話しているように、シンガー・ソングライターとして問われるのは、どこに住もうと作品そのものであることは言うまでもない。特に「常に今を歌うこと」を標榜(ひょうぼう)し、自らに課してきた。そのリアルタイムのアルバムが「沖縄物語」である。龍雲は「意地のアルバム」とも言っている。

   ×    ×

 「島の自然、特に海や空を身近に感じて、それとの対話からインスピレーションが生まれた」

 アルバムには自作曲以外に沖縄の民謡「てぃんさぐぬ花」や喜納昌吉の名作「花-すべての人の心に花を」を収録している。てぃんさぐはホウセンカという意味だ。この曲は沖縄民謡の中で「一番好きな曲」と言う。

 「沖縄の民謡からは三線のゆったりとしたリズムと発声のトーンの低さから異国独特の安らぎ、余裕すら感じる」

 「花」はテレビのCMで、女性シンガーが歌っているのを聴いて胸に入った。

 「こんないい歌が生まれる沖縄に住むしかないと思った。沖縄移住を後押ししてくれた曲です。喜納さん本人には一度、彼のお店でお会いしたが、ただただスケールの大きな人と言う印象を持ちました」

 自作曲にも「うりずん(初夏)」「三線(さんしん)」「泡盛」など沖縄の言葉、名物などが歌詞に盛り込まれるなど南国の色彩感を放っている。その意味でも今までになかったアルバムに仕上がっていることは確かだ。ただ、アルバムには南国の情緒感だけでなく、それ以上に強いメッセージが込められている。

 (田代俊一郎)

=2019/03/04付 西日本新聞夕刊=

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