【きょうのテーマ】ファラオの謎に迫る 王の視線の、その先には…

ファラオの威厳にあふれた「カフラー王像」
ファラオの威厳にあふれた「カフラー王像」
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文様の意味は…。ミイラが安置されていた彩色木棺
文様の意味は…。ミイラが安置されていた彩色木棺
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こども記者の1番人気だった「クヌムト王女の襟飾り」
こども記者の1番人気だった「クヌムト王女の襟飾り」
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背中に手が添えられている「アメンエムハト1世像」
背中に手が添えられている「アメンエムハト1世像」
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吉村作治さん
吉村作治さん
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 国立カイロ博物館(エジプト)所蔵の貴重な文化財を紹介する「黄金のファラオと大ピラミッド展」が8月27日まで、福岡市早良区の同市博物館で開かれています。歴史好きのこども記者8人が、古代の謎とロマンに迫りました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=ファラオの謎に迫る

 ■「神」として尊敬

 「本展の特徴はギザ(カイロ近郊)の三大ピラミッドを建設したクフ、カフラー、メンカウラーの3人の王にスポットを当てていることです」と同館学芸員の堀本一繁さん(50)が教えてくれた。

 「ファラオ」とはエジプトでは「大きな家」という意味だったが、やがて「王」を指す言葉になった。ファラオは人々から「神」として尊敬され、死後はピラミッドに葬られた。会場ではエジプト古王国時代(紀元前2686~2160年ごろ)を中心にした文物約100点が展示されている。

 堀本さんはまず「アメンエムハト1世像の背中を見てほしい」と促した。竹元美結記者は「王ではない誰かの右手が、背中に当てられている」不思議な造形に興味を持った。堀本さんは「もともとは2人の像で、隣に神様がいて手を添えて王様を守っていたと考えられる」と解説してくれた。

 堀本祐良(ゆら)記者は「センウセレト1世像頭部」に魅了された。「他のファラオ像はやや斜め上を向いて天を見ているようだが、このファラオは正面をまっすぐ向いている。民や未来を見ているのか」と王の視線の先に思いをはせた。

 ■死者を守る文様

 堀本さんは「王家を支えた女性たちの暮らしにも注目してほしい」と王女らが愛用した装飾品のコーナーに案内してくれた。「イタ王女の襟飾り」は赤と青のビーズを使った鮮やかな色が印象的だ。松下陸寿夢(りずむ)記者はお守りのような力を感じ、その豪華さに「農民とは比べものにならない王や貴族の生活」も見て取った。

 こども記者の1番人気が「クヌムト王女の襟飾り」だった。城戸淳壱記者は「美しい輝き。両端に付いた黄金のハヤブサもかっこいい」。中野由莉記者は「生命」「安定」「支配」を意味するヒエログリフ(古代エジプト文字の一つ)がつながれている点に注目し「死者を来世に導く役割もあったのでは」と推測した。

 ■棺の中に女神が

 「黄金に輝く来世」と題されたコーナーにはミイラに関する展示があった。「アメンエムペルムウトの彩色木棺とミイラ・カバー」の棺の中には、手と羽を広げた女神の姿などが描かれていた。森山由里記者は「一つ一つの絵がとてもきれい」と目を凝らした。

 最後の部屋には同展の“顔”である「アメンエムオペト王の黄金のマスク」が飾られていた。倉橋凛子記者は「ファラオ像は普通きりっとした顔をしているが、このマスクは笑っているようだ」と感じ、厚さ約1ミリの金の板を打ち出して作られていることに吉田瑞希記者は「薄い金を細かく打ち出す当時の技術の高さを感じた」

 輝きを放つマスクを前に中野記者は「エジプト文明への興味がさらに湧いた。いつかエジプトに行ってミイラを見たい」と願った。

 ●考古学者・吉村作治さんにインタビュー 「あきらめない。だから発見ができた」

 8人は展覧会の監修者でエジプトでさまざまな発見をしてきた考古学者・吉村作治さん(74)=東日本国際大学長、早稲田大名誉教授=に話を聞いた。

 -なぜエジプト専門の考古学者になろうと思ったのか。(竹元)

 「10歳で英国のハワード・カーターが書いたツタンカーメン王墓の発掘記を読んで、20世紀になっても大きな発見ができるエジプトにあこがれた。担任の先生からそれは考古学者の仕事だと教わり、なりたいと思った」

 -金製の装飾品が多く、高貴な色とされた理由は?(松下)

 「さびない金は王と神々の不滅を象徴した。マスクや装飾品の金色の中に王や貴族は輝かしい来世を見ていたのだろう」

 -ピラミッドを一つ完成させるのに何年かかり、何人くらいが作業したのか。(吉田)

 「最大級のクフ王のピラミッドは高さ140メートル、底辺の長さが230メートル。平均2.5トンの石を300万個積み上げてできている。完成まで23年ほどかかり、延べ約1億人が建設に参加したとされる」

 -最もうれしかった発見は?(森山)

 「エジプト文明を調査、発掘し51年が過ぎた。クルナ村の貴族の墓から200体のミイラを発見したり、ダハシュール北で四つの未盗掘の墓を発見できたことかな」

 -棺に描かれている絵や文字の意味は?(中野)

 「コフィンテキスト(棺の文書)と呼ばれている。ミイラになった人の名前や生きていたときの業績、あの世でどういう暮らしをしたいのかなどが描かれている」

 -尊敬するファラオは?(城戸)

 「アクエンアテン王。多神教のエジプト社会の中で、アテン神だけを信じ、その後の一神教の世界を開いた独自性にひかれる」

 -何も発見できないと調査をあきらめるのか。(倉橋)

 「あきらめない。だからさまざまな発見ができた。あきらめたらそこでおしまい。苦しいときほど知恵を働かせてピンチをチャンスに変えよう」

 -エジプト考古学者になりたい。必要なことは?(堀本)

 「英語の勉強。家の仕事をきちっとやる。道具を知らないと出土品が何に使われたのか想像できないから。なによりも好奇心。考える前に動く。現場に行かなければ何も始まらないからね」

 -先生の夢は?(同)

 「クフ王のピラミッド南壁に二つの船坑があり、それぞれに大型木造船の部品が納められていた。ファラオと太陽神ラーが乗って天かける『太陽の船』だ。1954年からエジプト人が1隻(全長40メートル)を復元し約30年後に公開。87年から私のチームが2隻目の復元作業を進めていて、完成させるのが夢だ。後に続く研究者の育成にも取り組みたい。君たちもぜひ考古学者を目指してほしいね」

 ●わキャッタ!メモ

 ▼黄金のファラオと大ピラミッド展 8月27日まで、福岡市早良区百道浜の同市博物館。入場料は一般1500円、高大生900円、小中生500円。月曜休館。同14日は開館し、同16日は休館。金、土、日曜と同14、15日は「トワイライトミュージアム」で午後8時まで開館。同館=092(845)5011。

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=2017/07/29付 西日本新聞朝刊=

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