【きょうのテーマ】「マーベル展」魅力をさぐる ヒーローは欠点も弱点もある「普通の人」

「すごい筋肉」。力強い造形の「ハルク」の像に見とれる
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こども記者が作品世界を描いたパネルを見ていると…誰かまじっているぞ! 扮装したファンも来場
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「スパイダーマン」の正体は平凡な高校生だ
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「キャプテン・アメリカ」の像
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 ●物語に正義や悪への身近な問い

 「アメコミ」(アメリカンコミック・米国漫画)を代表する雑誌の一つで「スパイダーマン」などのキャラクターを生んだ「マーベル」の世界を紹介する展覧会が10月1日まで、福岡市博多区の福岡アジア美術館で開かれています。漫画や映画が大好きなこども記者8人がヒーロー誕生の背景を取材しました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=「マーベル展」魅力をさぐる

 ■現実の人々反映

 アメコミの翻訳で知られ、展覧会の開催に協力した光岡三ツ子さんが会場を案内してくれた。

 マーベルのキャラクターの特徴として光岡さんは「平和を愛する人、何でも暴力で解決しようとする人など現実世界の人々の性格がそのまま反映されている」と教えてくれた。

 ヒーローの正体も「特別な人ではなく、その辺にいる普通の人」。スーパーマンやバットマンを生んだアメコミ誌「DCコミックス」が「古代ギリシャのゼウスのような神様が今の米国に現れたらどうなる」という“現代の神話”をテーマにしているのとは対照的だ。「主人公に欠点や弱点があって、それでも正義のヒーローなんだという物語を描くのがマーベルの魅力」と光岡さんは考える。

 ■力くれる何かが

 マーベル・ヒーローの多くは、宇宙や地球を舞台に活躍する「グローバル」と自分の街のために戦う「ローカル」に分類される。

 「普通の人」と「ローカル」の要素を備えたヒーローが「スパイダーマン」だ。光岡さんは「素顔は平凡な高校生。もしあなたが超能力を持ったらどう使うか。物語に正義や悪を身近に考えさせてくれる問いがある」と力を込めた。

 小野歩記者は「いやなことがあってもスパイダーマンの姿を思い浮かべると乗り越えられる。そんな力をくれる何かがマーベルの作品にはある」と感じた。

 福田楓記者は夏休みに海水浴場の漂流物を調査したとき、海岸がごみであふれていた光景を思い出し、「みんながマーベルのヒーローのような正義感を少しでも持つことができたら」と考えた。「私たちもヒーローになろう」。8人の胸に正義の光がともった。

 ●人気の秘密は? 人種、性別も多彩に 世界の動きと深くかかわる

 マーベルは、その前身であるタイムリー・コミックス社が1939年に「マーベル・コミックス」を創刊して以来、世界中でファンを広げている。人気の秘密を光岡さんに聞いた。

 -どうやって作品を生み出しているのか。

 「アメコミは大勢のスタッフでキャラクターや物語を創作している。チームプレーで息の長い構成を考えるのが大きな特徴だ」

 -多くの作品が映画化されているが漫画との違いは。

 「基本的に違いはないが、例えばスパイダーマンの登場は1962年。スタッフは長大な物語のどの場面がよかったかなど議論し、映像化するので、受け止め方はファン次第かも。俳優が動きづらい服のデザインを変更することもあるが、最小限にとどめている」

 -物語に現実の世界が入っているように感じる。

 「マーベルの全作品が戦争や世界の動きに影響されている。最初のヒーロー、キャプテン・アメリカは第2次世界大戦中に登場。最初は米国のためにヒトラーと戦う、国家に忠実な戦士だったが、後に政治に疑問を持って、星条旗風の衣装を変えたり、元に戻したりして葛藤を表現している」

 -「アベンジャーズ」など物語を超えてヒーローが集まれるのはなぜ?

 「マーベルの物語世界は全部つながっている。自由にキャラクターを動かせ、物語も壮大になり、読者がより自分の好みにあった世界に出合えるように考え抜かれている」

 -女性がヒーローの作品も多い。

 「マーベル・ヒーローは最初、白人男性ばかりだったが、現実の世界は違うという考えから、多彩な人種や性別のヒーローを生みだし、ファン層を広げている」

 -ヒーローものには魅力的な敵も必要。

 「ヒーロー同様、敵も普通の人が多いから、悪いことをするのも家族のためという設定も。ヒーローの裏返しとして、正義を問う『合わせ鏡』的な敵もいる」

 -日本からの影響は?

 「日本の漫画やアニメが世界に与えた影響は大きい。作画がどこか日本風のアメコミもある。マーベルでもサンファイア、シルバー・サムライからアイアンマンのガールフレンドまで日本人が登場。私たち日本人が読むとおやっ?と思う描写もあるが」

 -マーベルのこれからを教えて。

 「マーベルを読んで育った子どもたちが大人になって、作る側で活躍しているので、さらに面白くなるのでは。皆さんの世代がファンになって、日本でもアメコミ文化がさらに定着するとうれしいですね」

 ▼マーベル展 10月1日まで、福岡市博多区下川端町の福岡アジア美術館。ヒーローたちの迫力を再現した人形など約200点を展示。入場料は一般1500円、高大生1000円、小中生600円。水曜休館。同美術館=092(263)1100。

 (写真はすべて(C)2017 MARVEL)

【紙面PDF】きょうのテーマ=「マーベル展」魅力をさぐる


=2017/09/16付 西日本新聞朝刊=

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