【おしごと拝見】獣医師 遠藤拓人さん ふくおか県酪農業協同組合・久留米地区乳牛診療人工授精所

牛に点滴をする遠藤さん
牛に点滴をする遠藤さん
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牧場にいる牛は全て雌。出産前後が病気になりやすいそうだ
牧場にいる牛は全て雌。出産前後が病気になりやすいそうだ
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牛を診察する遠藤さん
牛を診察する遠藤さん
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人工授精に使う道具
人工授精に使う道具
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遠藤さんの車に積まれた薬や治療用の道具を見せてもらった
遠藤さんの車に積まれた薬や治療用の道具を見せてもらった
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 ●牧場で家畜を診療、人工授精も

 獣医師といえば、ペットをみる動物病院を思いうかべる人が多いかもしれない。一方で牛やブタなどの家畜をみて農業をささえる獣医師もいる。乳牛を専門にみる「ふくおか県酪農業協同組合・久留米地区乳牛診療人工授精所」の獣医師、遠藤拓人さん(33)を訪ねた。

【紙面PDF】おしごと拝見=獣医師 遠藤拓人さん

 この日、遠藤さんが向かったのは福岡県久留米市北野町の「森光牧場」。約50頭の乳牛がいて、牛舎に入ると牛が興味津々の様子で私たちに目を向けてきた。遠藤さんは「牛は僕のことを覚えていて、今日も注射とか痛いことをされるかな、とちょっと警戒します」と笑う。

 治療を待つのは、おなかをこわした牛と出産後に栄養不足になっている牛だという。遠藤さんはまず体温計を牛の肛門に入れて熱を測った。体温計は私たちが使うものとほとんど同じで不思議な感じがした。

 次は注射や点滴の準備だ。注射針にも種類があり、太いものでボールペンの芯ぐらいの太さだった。牛の体重は600~700キロで私たちよりもはるかに大きいから注射針も太くなる。でも遠藤さんは「牛も太い針だと痛いだろうから、なるべく細いものを使うようにしています」という。

 遠藤さんの車には治療に必要な薬や道具がそろっていた。遠藤さんが担当するのは福岡県南部の広い範囲。遠いところでは車を1時間近く走らせて牧場に出向き、診察や治療をしている。

 治療のほかに大事な仕事の一つが、人工授精だ。農家が飼う牛は私たちが飲む牛乳になるおっぱいを出す牛だから、全て雌。乳牛とはいっても赤ちゃんを産まないとおっぱいは出せないので、雄のいない牧場では、大きな注射器のような道具を使って人工授精をするという。私たちは獣医師の技術に驚いた。

 ペットとは違い、家畜は農家の経営に関わる。けがなどで立てなくなったり牛乳を出せなくなったりした牛は、食肉用として牧場を出て行くことが多い。

 「命を無駄にしないということ。牛の病気が治らないとつらいけれど、敬意を持って牛たちをみています」と遠藤さん。その分、牛の病気を治し、農家に「ありがとう」と言われる瞬間が、一番うれしいそうだ。

 (殿川はな記者、中野和己記者)

 ●子どもの頃から動物好き 遠藤さん

 獣医師になって9年目という遠藤さんは、子どもの頃から動物好きだったそうだ。

 東京で生まれ育ち「自宅で飼ったペットはハムスターぐらい」だったが、近所の動物園に家族でよく遊びに行っていた。昆虫や爬虫類にも興味があり、小学校高学年ごろには「漠然とですが、将来は獣医師になりたいと思っていた」と遠藤さんは話す。

 高校卒業後は、獣医学を学べる北海道の大学に進学した。動物が好きなのはもちろん、獣医師の資格があれば、公衆衛生に関わる公務員になったり薬品開発の会社などへ就職したりと「仕事の幅が広いとも思った」。大学で勉強するうちに家畜の牛に関わる仕事に興味を持ち、就職活動で縁があったという福岡の今の職場で働くようになったそうだ。

 それにしても、私たちの10倍以上も重く大きい牛を相手にして、怖くないのだろうか。「牛にけられたこともあります。自分がその牛の性格を分かってなかったからで、慣れるとそんな失敗も少なくなりますね」と笑って話してくれた。

 (佐藤きわこ記者、橋本藍(らん)記者)

 ●わキャッタ!メモ

 ▼獣医師になるには 国家資格である獣医師免許が必要。免許を取るためには、専門の教育を受けられる大学で6年間勉強し、試験に合格しなければならない。

【紙面PDF】おしごと拝見=獣医師 遠藤拓人さん


=2017/11/25付 西日本新聞朝刊=

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