【きょうのテーマ】海の清掃船 作業に密着 家庭ごみ、流木も回収 航路の安全を守る

停泊した大型クルーズ船の前方を進む「第2かもめ」。小さくても大きな役割を果たしている
停泊した大型クルーズ船の前方を進む「第2かもめ」。小さくても大きな役割を果たしている
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コンテナ内に集めたごみを岸壁からクレーンでつり上げ回収する
コンテナ内に集めたごみを岸壁からクレーンでつり上げ回収する
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船首にあるごみを吸い取る装置を見る。最後の仕上げは人力だ
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 海外からの大型クルーズ船など年間3万隻以上の船が出入りする博多港(福岡市)。航路の安全を守るために海に浮かぶ流木やごみを収集しているのが同市の清掃船「かもめ」と「第2かもめ」です。海のごみは放置すると、船にぶつかるなど重大な事故につながることも。5人のこども記者が、海上から「第2かもめ」の作業に密着し、海のごみ問題を考えました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=海の清掃船 作業に密着

 ■多様な船が行き来

 東浜ふ頭から福岡市の船「なのつ」に乗り博多湾に出た。「ほら、いろいろな船が働いているだろう」。潮風に吹かれながら市港湾空港局維持課の船舶業務の現場を管理する合屋重信統括機関長(53)の指さす方向を見ると、国内外の多様な船が行き来し、着岸して作業していた。

 博多港国際ターミナルの近くで「第2かもめ」と合流。全長約15メートルの双胴船(2隻の船体を合体させた船)で、停泊したクルーズ船と比べるととても小さく見えた。

 博多港の水深は平均約8メートルだが、大型船の航路は約10メートルまで掘り下げられ、14万トン級が進入できる。合屋さんは「ルートを外れると大型船は座礁の危険がある。航行を妨げるごみはすぐに取り除く」と力を込めた。芝葉和(はな)記者は「こんな小さな船がたくさんのごみを回収し、安全に大きな役割を果たしている」と驚いた。

 ■河川から流れ込む

 2隻の「かもめ」による海上清掃は博多湾のほぼ全域で行われている。湾に注ぐ河川の多くは都市部を流れているため、さまざまなごみが運ばれてくる。合屋さんは「第2かもめ」は「右舷と左舷の間にコンテナがあり、ごみのあるところを通過し回収できるように設計されている」と解説。白石哲士(さとし)記者は「清掃船がとてもゆっくり走っているのはごみを小まめに吸い込んでいるからだ」と気付いた。

 「一番危険なのは流木」と合屋さんは言う。台風シーズンには倒れた木が湾に流れ込む。「水を吸って大部分が沈んでいる流木は見つけにくい」。大きなごみや流木は船に装備された最大荷重2トンのクレーンで積んだり、港までロープでつないで回収する。父親が航海士の五島(ごしま)優芽記者は「船が流木にぶつかると大事故になる。清掃船のおかげで船で働く人はとても助かっている」と感謝した。

 ■仕上げは人の手で

 市鮮魚市場では「なのつ」を下船して、岸から清掃作業を間近に見た。岸壁のすみなどにある回収しにくいごみを吸い込む装置が作動すると、船首から船尾へ水流が発生し、コンテナに発泡スチロールのかけらなどが送り込まれて行った。

 鈴木智喜記者は2人の乗組員が船の左右に立ち、長い熊手でごみを集める姿が印象に残った。「小さなごみも見逃すまいと一生懸命作業していた。仕上げは人の手だ」と感心した。

 港内にあるごみの集積所で積み降ろし作業を見学した後、停泊した「第2かもめ」に乗り込んだ。

 折居佑二船長(49)から不法投棄されたテレビや冷蔵庫、家具も回収するという話を聞いた5人はルールが守られないことにあぜんとした。

 折居船長の「家庭ごみを適切に処理すれば海のごみは必ず減る。私たちの海をごみ捨て場にしないで」という言葉に、喜内(きない)美羽記者は「日頃の生活の中でもっとリサイクルを意識して、ごみを出さないように心がけよう」と決意した。

 ●「目視や経験が大事」 折居船長に聞く

 「第2かもめ」の船長として10年のキャリアを持つ折居佑二さん=写真=に質問した。

 -「かもめ」の2隻で集める1年間のごみの量は?

 「年末年始を除く359日、しけなどで船の出航が困難な場合以外は毎日少なくとも1隻が出航し、過去5年で年間平均約2000立方メートルを回収した」

 -主なごみの種類は?

 「草や木の葉、流木、発泡スチロールの箱、ペットボトルなど家庭ごみが中心。特に梅雨の時期は多くのごみが川から流れてくる」

 -広い博多湾をどうやって清掃している?

 「基本的には作業を予定したエリアを航行。双眼鏡を使った目視や経験が大事で、その日の潮流や風向きによってごみが集まりやすい海域を特定する。船首の左右にある見張り場所に乗組員が立ち、往来する船舶の妨げにならないよう安全確認しながら作業する。市営渡船やフェリー、海上保安庁などから浮遊物の連絡を受けて対応することもある」

 -危険を感じることは?

 「他の船の往来による航跡波で突然船が大きく揺れることがあるので、救命胴衣の着用を徹底している。毎日、始業前に行う朝礼で当日の業務内容や安全を確認するなど乗組員のコミュニケーションを図り事故を予防している」

 -今までで驚いたごみは?

 「この船と同じくらいの長さ約15メートルの木が流れてきたこと」

 -4月に外国の貨物船の積み荷が炎上し博多湾に大量の油が流出した。「かもめ」も出動した?

 「緊急出動した。油のある箇所を何度も通過し、油を拡散(油を微粒子化して微生物などによる自然な浄化を促進)させたり、油吸着マットを海にまいて回収するなどの処理にあたった」

 -やりがいを感じることは?

 「博多湾の景観を守っていること、安全な海上交通に貢献していることにやりがいを感じます」

 ▼清掃船「第2かもめ」 2007年3月進水。総トン数19トン。長さ15.1メートル、幅6.9メートル。収容できるごみの量は最大約20立方メートル。乗組員数は3人。福岡市から清掃業務を委託された博多湾環境整備(同市博多区)が運用している。博多湾を中心に「かもめ」(1992年進水)と2隻態勢で活動している。

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=2017/11/29付 西日本新聞朝刊=

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