【きょうのテーマ】昆虫学者に会いに行く それぞれに役割。昆虫いてこその地球

貴重な標本を手に昆虫の魅力を語る丸山さん
貴重な標本を手に昆虫の魅力を語る丸山さん
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宝石のように輝く甲虫に見とれる
宝石のように輝く甲虫に見とれる
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世界で最も美しいとされるガ「ニシキオオツバメ」(マダガスカル)
世界で最も美しいとされるガ「ニシキオオツバメ」(マダガスカル)
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 宝石のようにきらめくコガネムシ、チョウのように美しいガ、木の枝のような姿のナナフシ…。世界20カ国で昆虫を採集・調査し、数多くの新種を発見している九州大総合研究博物館(福岡市東区)の昆虫学者・丸山宗利准教授(43)を取材。貴重な標本を見せてもらいながら、昆虫の魅力、環境や人間との関わりを聞きました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=昆虫学者に会いに行く

 ■貴重な標本次々と

 同博物館では歴代の研究者が採集した、国内最大の昆虫コレクション約400万点を所蔵。丸山さんの案内で標本室に入ると、標本を保存する薬のツーンとするにおいが鼻をついた。

 丸山さんは東京都出身。少年時代から昆虫好きだったが「町中で出合える昆虫は空き地にいるバッタやカマキリくらい。昆虫が少ないからこそ貴重に感じた。興味がわいて図鑑で調べるようになり、今の研究につながっている」と語った。

 「世界最大の昆虫は」と質問すると「全長なら50センチを超えるキルビーオオナナフシ、羽の面積ならガの一種のヘラクレスサンかな」と貴重な標本を次々と取り出した。特徴や生態を熱っぽく語る姿に昆虫への探求心と知識の深さを感じた。

 丸山さんによると世界中で300万から500万種の昆虫がいるという。特に森が多く標高差がある土地には、多様な種が生息。最も種類が多い地域は東南アジアで「行くたびに新種が見つかる。その時の感動は言葉にできない」。1年の半分近くを海外で過ごすことも。「死にもつながる病気に感染させるツェツェバエに3回刺されたときは本当に怖かった」

 ■完成された美しさ

 丸山さんは中米やアフリカも含め20カ国で数万匹の昆虫を採集。発見した新種約150種に学名を付けた。見た目が違うだけでは新種発見とはならない。色や形など、特徴や近い種との違いを明らかにした論文を発表して初めて新種と認められるという。

 ずっと昆虫を研究していて飽きないのか。「飽きないね。その辺を飛んでいるハエも顕微鏡で見ると羽や足があるべき所に実にうまく付いていて、見れば見るほど完成された美しさに驚く」と魅力を語った。

 世界各地で昆虫を採集して不安に思うことがあるという。「マレーシアに行ったとき、以前あった森が消えていた。たくさん昆虫がいたのに…。でも木が切られる原因の一つに僕たちも関わっているんだ」

 菓子やカップラーメンに使われるパーム油はアブラヤシの実を搾って作る。特に東南アジアでは「お金になる」と年々広大な森林が伐採され、アブラヤシに植え替えられている。私たちの生活のために海外の自然や昆虫が犠牲になってもいいのか-。丸山さんの問いが重く響いた。

 昆虫が苦手なこども記者が「昆虫がいなくなったら地球はどうなる?」と尋ねた。「大変なことになる。昆虫が花粉を運ばないと果物は実らない。蚊に刺されるのは嫌だろうけど、幼虫のボウフラは水中のバクテリアなどを食べて浄化してくれる」。家の中ではシロアリは害虫だが、森では倒れた木を分解して土に戻してくれる。「昆虫にはそれぞれの役割があり、自然の中で活躍している。昆虫がいてこその地球なんだ」と丸山さんは力を込めた。

 昆虫という小さな存在を通じて世界を見つめるまなざしが6人の心に残った。

 ●150種の新種発見 九州大総合研究博物館准教授 丸山宗利さん

 ▼丸山宗利 東京都出身。農学博士。国立科学博物館(東京)、フィールド自然史博物館(米国)の研究員を経て、2008年に九州大総合研究博物館助教、17年から現職。専門はアリと共生する好蟻性昆虫。特定外来生物の強毒アリ「ヒアリ」対策にも取り組んでいる。著書は「昆虫はすごい」(光文社新書)「きらめく甲虫」(幻冬舎)など多数。

 ●昆虫標本展 福岡市で 丸山さんが監修

 丸山さんが監修した展覧会「密やかな部屋-きらめく昆虫標本」が3月11日まで、福岡市中央区天神のイムズ8階、三菱地所アルティアムで開かれている。

 九州大総合研究博物館所蔵の標本から選んだ約2000点を展示。色とりどりに輝く甲虫や植物の葉のように擬態するバッタなど昆虫の美と多様性を紹介している。同博物館にある旧帝大時代の家具を用いた標本の見せ方も面白い。入場料は一般400円、学生300円、高校生以下無料。会期中無休。アルティアム=092(733)2050。

【紙面PDF】きょうのテーマ=昆虫学者に会いに行く

=2018/02/24付 西日本新聞朝刊=

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