【きょうのテーマ】山は誰のもの?森の中で考えた 木を切る 「森の健康」を守るため

森に差し込んだ日光で、間伐された切り株を見る子どもたち
森に差し込んだ日光で、間伐された切り株を見る子どもたち
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高さ2.5メートルの枝打ち用のはしごを使って木に登る
高さ2.5メートルの枝打ち用のはしごを使って木に登る
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こども記者に木工を指導する手塚館長
こども記者に木工を指導する手塚館長
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 ●木工体験実習館「トンカチ館」(福岡県糸島市)

 森林面積約1万ヘクタールの豊かな自然を誇る福岡県糸島市の木工体験実習館「トンカチ館」では、木工や森林体験を通じて山や木の大切さを伝える「木育」に力を入れています。こども記者8人が森で木々の“声”に耳を澄まし、自然と私たちの暮らしについて考えました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=山は誰のもの?森の中で考えた

 トンカチ館のスタッフの案内で、怡土小の学校林に足を踏み入れると、市民団体「糸島市林業研究クラブ」の坂本朋幸さん(42)と秋吉完治さん(62)がヘルメットをかぶり作業着姿で待っていた。

 2人は木を切って森の密度を調整する「間伐」のプロだ。「せっかく育った木を切り倒すなんて訳が分からない」(木原記者)。納得がいかないこども記者に2人は語りかけた。

 人工林は間伐をしないと(1)森の中に光が届かず、木が成長できないので倒れやすくなる(2)下草が生えず、むき出しの地表を雨が流れてしまう(3)木の根が張らず、土の中で水を保つ力が低下して土砂の流出を招く-など、災害にもつながる。間伐は「森の健康」を守るために必要なのだ。

 ■木の「命」を奪う

 間伐の作業を見せてもらう。坂本さんが1本のスギを選び、「目を閉じて幹をなでて」と促した。木々の間を風が渡る音、野鳥のさえずり、虫が飛ぶ音が聞こえた。「今からこの木の命を奪います」。坂本さんの言葉に息をのんだ。

 チェーンソーの刃が幹に食い込む。ある程度切ると、木に結ばれたロープを笛に合わせて全員で力を込めて引いた。「メキメキッ」という大きな音がした。ロープには滑車がくみ込まれていて、木は人がいる位置とは反対方向に倒れた。

 見上げると、枝葉に遮られていた所に、ぽっかりと穴が開いていた。日光が降り注ぎ、切り株が輝いているように見えた。年輪を数えると樹齢45年。守真記者は「人はいい環境や材木を森から得ている。人も森のためにできることを考えなければ」と思った。

 ■木を抱きしめて

 節がなくまっすぐな木にするには下枝を切り落とす「枝打ち」も必要だ。スタッフに見守られながら、スギに固定された高さ2・5メートルのはしごのてっぺんまで上った。スギに抱きつき見渡すと、自分の体も森の一部になった気がした。

 林業人口の減少で間伐や枝打ちなど山の手入れは進まないそうだ。春田記者は「高い所で木の世話をするのは怖いし難しいだろう。森を守る人の熱意が伝わった」、篠原記者は「人が植林した山は人が責任を負うべきだ。林業を振興させて森の荒廃を防がなければ」とそれぞれ思った。

 トンカチ館に戻り、間伐材を使った木工体験で椅子を作った。森で感じた木のぬくもりがよみがえった。

    ×      ×

 本間記者は糸島の森の中で聞いたさまざまな音を詩にした。

「森の音楽隊」
山に入ると
鳥や虫、そして川の声が
聞こえてくる
チュンチュン
ミーンミーン
ザー
森はまるで大きな音楽隊

    ×      ×

 ●「災害の多くは人災」 手塚館長

 トンカチ館の手塚敏彰館長(84)は元フェリーの機関長だ。趣味の木工を通じて森の大切さを知り、2016年に国土緑化推進機構の「森の名手・名人」にも選ばれた。

 手塚さんは森の働きを(1)二酸化炭素(CO2)を吸って酸素を生み地球温暖化を防ぐ(2)雨水を土に戻し、川の水量や水質を調節し豊かな海にする(3)生き物のすみかになる-と説明。松井記者は「山が健康でないと、いい水が生まれない。山は川や海の生き物も支えている」と気付いた。

 林業の衰退で多くの人工林が荒廃している。「今起こっている災害の多くは天災ではなく人災ではないか」と手塚さん。大久保記者も「災害をなくすために、いつまでも元気な森であってほしい」と祈った。

 木を切ったら植えるサイクルを回復させ、森を守り、防災につなげるには、国産木材の消費量を増やすことも大事だ。喜内記者は「森林の大切さがよく分かった。これからの生活にどう木を取り入れていくか考える」と心に決めた。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼糸島市木工体験実習館「トンカチ館」 福岡県糸島市高祖(たかす)のファームパーク伊都国内。1996年に同市が設立し、現在は手塚さんが代表を務める「とんかち会」が運営。季節に応じて山や森の大切さを考えるイベントや木工体験(有料)が楽しめる。月・木曜(祝日の場合は翌日)と年末年始は休館。利用には予約が必要。電話=092(322)7662。

【紙面PDF】きょうのテーマ=山は誰のもの?森の中で考えた

=2018/06/07付 西日本新聞朝刊=

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