【きょうのテーマ】昔ながらの映画館訪ねて 小倉昭和館(北九州市小倉北区)

小倉昭和館の外観
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ロビーには俳優や映画監督らのサインがいっぱい
ロビーには俳優や映画監督らのサインがいっぱい
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スクリーンの場所は、かつて芝居の舞台だったという
スクリーンの場所は、かつて芝居の舞台だったという
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映写技師の椎葉さん(右から2人目)の話を聞き、フィルム映写機を見せてもらった
映写技師の椎葉さん(右から2人目)の話を聞き、フィルム映写機を見せてもらった
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高倉健さんから樋口館主に届いた手紙も見せてもらった
高倉健さんから樋口館主に届いた手紙も見せてもらった
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 ●人と人をつなぐ場に

 昔ながらの映画館が北九州市小倉北区にあります。その名は小倉昭和館。昭和14年(1939年)に創業し、ことしで79年です。時代を超えて愛され続ける同館を、こども記者5人が取材しました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=昔ながらの映画館訪ねて

 館内に入ると、たくさんのサイン色紙が迎えてくれる。同館のことが好きな映画監督や俳優らが書いたものだ。壁に展示されたものだけで72枚。「他にもあるから全部で100枚以上」と館主の樋口智巳さん(57)がうれしそうに言った。

 ロビーの天井は低く、V字型の照明がついていた。お客さんの安全などを祈願する神棚もあり、レトロで落ち着いた雰囲気だった。

 「古い映画館ならではの良さは何ですか」と聞くと、樋口さんは「人と人との距離が近いこと」と答えた。複合型映画館(シネコン)のような自動券売機はなく、スタッフがお客さんにチケットを手渡しし、楽しげに言葉を交わしていた。

 ◇ ◇

 売店では、地元の障害者自立支援の塩キャラメルなどを売っている。お客さんは60代以上が多いため、包装が開けやすく、食べやすく、のどにつまりにくい商品を選んでいるそうだ。

 休憩時間には、樋口さんが「売り子」になって客席を回る。お菓子を入れたかごを抱えて売りながら、「温度は寒くないですか」と聞いたり、次回作を紹介したり。笑顔で接している姿を見て、「プロだなあ、すごいなあ」と思った。

 上映作品は2本立て。新作順ではなく、スタッフのお薦めや、お客さんのリクエストで決めている。実際にロビーのアンケート箱に用紙を入れているお客さんを見て、うれしくなった。

 ◇ ◇

 スクリーンに映像を送る映写室も見せてもらった。小部屋にデジタルの映写機と35ミリフィルム映写機があった。映写技師の椎葉新さん(74)は、ちゃっちゃっと慣れた手つきでフィルムをセットし、回して見せてくれた。椎葉さんは50年以上の経験を振り返り、「昔はクーラーがなかったから、機械の熱で汗だくになった夏場が大変だったね」と穏やかに話した。

 樋口さんは「映画は映画館で見てほしい」と言った。知らない人たちと同じスクリーンを見て、「うれしかったり、ドキドキしたり。感情を共有できる場所が映画館です」と力を込めた。その言葉を聞いて、人と人とをつなぐ昭和館を守り続けてほしいと思った。

 ●お客さんの笑顔が励み 樋口館主

 こども記者たちは、小倉昭和館館主の樋口智巳さんに苦労などを聞いた。樋口さんは「毎日が大変です。建物は古いし、映画がDVDなどになるのも早いから、いろいろ工夫しないといけません」と明かした。

 上映作の監督や出演者を招き、思いを語ってもらう「シネマカフェ」を月1回、一晩じゅう映画を上映する「オールナイト」を年に1度など、さまざまなイベントを続けているという。お客さんが「あー楽しかった」と笑顔を見せるのが一番の励みになるそうだ。

 樋口さんは「映画の神様からの大きなプレゼントだと思っています」と言って、昭和の大俳優、高倉健さんから届いた励ましの手紙も見せてくれた。そこには「自分に嘘のない充実した時間を過ごされてください」と書かれていた。

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=2018/07/05付 西日本新聞朝刊=

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