【きょうのテーマ】幽霊・妖怪画 奥深い世界 福岡市博物館で特別展

「朝露・夕霧」では親しげなお岩(右)とお菊の姿に観方の愛情を感じた
「朝露・夕霧」では親しげなお岩(右)とお菊の姿に観方の愛情を感じた
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古い道具が付喪神になった姿を描く「百鬼夜行絵巻」 (尾形守房筆)
古い道具が付喪神になった姿を描く「百鬼夜行絵巻」 (尾形守房筆)
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あんどんの光を再現した鬼気迫る展示も
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「西郷隆盛霊幽冥奉書」
「西郷隆盛霊幽冥奉書」
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 ●「異界の者」 ただ怖いだけじゃない

 幽霊や妖怪を描いた作品を紹介する特別展が、福岡市博物館(同市早良区)で開かれています。同館が所蔵する京都出身の日本画家、吉川観方(1894~1979)のコレクションから56点を展示。恐ろしい「異界の者」を人はなぜ描き、ながめてきたのか。妖気漂う会場でこども記者がおっかなびっくり探りました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=幽霊・妖怪画 奥深い世界

 会場に入ると、江戸時代に描かれた全長約8メートルの「百鬼夜行絵巻」に圧倒された。画面にひしめくのは、古い楽器や台所用品など身近な道具に精霊が宿った「付喪神」の姿だ。付喪神は妖怪の原型の一つとされ、湯川記者は「古くから伝わる物は妖怪になるのか。今あるものを大切に使おう」と感じた。

 展示担当の佐々木あきつ学芸員の「昔は病気や悪天候、『なにかこわい』と感じさせるもの全てが妖怪の仕業とされた」という言葉に、人間にとって妖怪は身近な存在だったと知った。

 会場の絵も古い物ばかりだ。井上記者が「妖怪や幽霊の絵をどんな気持ちで扱っているのか」と聞くと、佐々木さんは「学芸員も幽霊や妖怪の気持ちをくみ取り、失礼が無いように大切にしている」と笑った。

 ■泥棒もびっくり

 幽霊画は江戸時代に盛んに描かれた。その理由の一つが「泥棒除け」という。当時の長屋の明かりを再現し幽霊画を掛けたコーナーもあり、垣内記者は「うらめしやーと絵から飛び出してきそうだ」と驚いた。

 「お岩」のうらみを描いた「東海道四谷怪談」や「お菊」の悲哀が伝わる「番町皿屋敷」など亡霊が登場する歌舞伎が人気を博し、怪談のテーマも広がっていく。難産で死んだ母親が幽霊になって残された赤ん坊を抱きに現れる絵を見た姫野記者は「幽霊画は怖いだけではなく、涙が出てきそうになるものもあり奥深い」と心を打たれた。

 百本のろうそくを立て、何人かで怪談を語るごとに1本ずつ吹き消す遊び「百物語」も流行し、会場の雰囲気づくりにも幽霊画は無くてはならない物だった。

 ■観方の愛感じた

 展示の最後を飾るのが吉川観方自筆の「朝露・夕霧」だ。お岩とお菊という怪談の二大スターを描いた作品で、福田記者は2人の姿に観方の愛情を感じ「とてもかわいらしく、いとおしい。幽霊でも怖がらず声を聞いてあげたくなる」と感動した。この絵は敗戦後の1948年に制作された。佐々木さんは「時代は変わっても見えない世界を愛する日本人の感性は受け継がれると観方は信じていたのでは」と考える。

 吉武記者は「幽霊や妖怪は本当にいないのかはっきりしないからこそ興味がわく」と関心を深め、稲田記者は「妖怪は姿は見えないが会場にいる。取材で取りつかれたのでは」とぞくぞくした。百物語では最後のろうそくが消えたときに怪奇なことが起こるという。会場の幽霊・妖怪画を全て見れば…。

 ●「西郷どん」も幽霊に?

 大河ドラマの主人公「西郷どん」も幽霊に? 月岡芳年の浮世絵「西郷隆盛霊幽冥奉書」(1878年)では鹿児島出身の政治家、西郷隆盛が描かれている。

 西郷は明治維新の立役者の一人だが、新政府の政治に不満を抱いて西南戦争を起こし、命を落とす。絵は死の翌年に出版された。

 佐々木さんは「西郷の生きざまを惜しむ民衆の気持ちをくんで描いた」と推測。死してなお建白書(意見書)を手に世を問う姿に、芳年の西郷への共感がにじむ。

 江戸時代、重税に苦しむ農民を救おうと将軍に直訴し処刑された佐倉惣五郎の幽霊の絵もあった。山下記者は「絵に幽霊になった人と絵師の二つの感情が込められている」と思った。

 ●わキャッタ!メモ

 特別展「幽霊・妖怪画の世界」 8月26日まで福岡市早良区の市博物館。観覧料は小学生以上500円。同時開催している「ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信」のチケット提示で200円で入場できる。休館日など問い合わせは市博物館=092(845)5011。

【紙面PDF】きょうのテーマ=幽霊・妖怪画 奥深い世界

=2018/07/31付 西日本新聞朝刊=

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