【きょうのテーマ】噴火の記憶 子どもたちに 雲仙岳災害記念館 遊びと体験で伝えたい

「こどもジオパーク」にある普賢岳をイメージした遊具で遊ぶ子どもたち
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土石流が海に流れ込む様子などをプロジェクションマッピングで再現した展示
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大火砕流で死亡したテレビカメラマンの焼けこげたビデオカメラに言葉を失う
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溶岩ドームを登る気分が味わえる遊具を前に「火山を知るきっかけに」と語る長井学芸員
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「普賢岳の恵みも発信したい」と話す林さん
「普賢岳の恵みも発信したい」と話す林さん
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 1990年から約6年間続いた雲仙・普賢岳(長崎県)の火山災害の教訓を伝える雲仙岳災害記念館「がまだすドーム」(同県島原市)がリニューアルし、話題を呼んでいます。地元のこども特派員2人が新たに加わった展示や「語り部」を取材し、災害の記憶を受け継ぐ大切さを考えました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=噴火の記憶 子どもたちに

 館に入った2人は、室内にこだまする笑い声と歓声に驚いた。学芸員の長井大輔さん(43)が、新設されたエリア「こどもジオパーク」に案内してくれた。普賢岳をイメージした遊具「ジオマウンテン」では子どもたちが跳びはね、溶岩ドーム(平成新山に見立てた壁面を登るコーナーもにぎわっていた。

 長井さんは愛媛県出身の火山研究者で、噴火中の普賢岳を調査し、そのまま島原に移り住んだ。新エリアの狙いを「遊びや体験で子どもたちに普賢岳に親しんでもらい、火山や災害について知るきっかけの場にしたい」と説明した。

 火山や防災について学ぶ実験室「ワンダーラボ」も新設。親子連れが増え、毎月の来場者数は、リニューアル前の2倍にあたる約2万人になったそうだ。

 ■「6・3」に涙も

 噴火災害を紹介するエリアでは映像を使った新展示に注目した。火砕流(高温の砕けた溶岩や火山ガスなどが山を流れ下る現象)や土石流(降り積もった噴石や火山灰が大雨で一気に流出する現象)の被害をプロジェクションマッピングで再現したり、ドローンで撮影した溶岩ドームなどの写真を足元に映し出したりしていて、迫力があった。

 大型スクリーンでは火山災害としては当時戦後最悪の43人が亡くなった1991年6月3日の大火砕流を描いたドラマを見た。報道関係者、地元の消防団員、警察官、タクシー運転手らが犠牲になった状況を知り、2人は涙ぐみ、心の中で手を合わせた。

 ■火山情報の共有を

 2014年の噴火で、普賢岳を上回る58人が犠牲になった御嶽山(長野・岐阜県)を監視するライブ映像など、国内外の主要な火山の情報を発信するコーナーも充実していた。長井さんは「地域をこえて火山情報や噴火の記録を共有することが災害への備えとなり人命を救う」と、各地の火山研究者や災害体験者との連携を深めていくつもりだ。

 普賢岳の噴火災害は「終息宣言」まで約6年かかった。それでも温泉や雄大な景色などの恵みへの感謝と親しみを込めて、島原の人は普賢岳を「普賢さん」と呼ぶ。火山への関心を高め、災害への備えを忘れず、「普賢さん」と一緒に生きていこうと2人は誓った。

 ●「あなたたちが伝える役目を」 「語り部」の林さんに聞く

 災害体験を来場者に伝える「語り部」の役割も大きい。同館でボランティアとして活動する10人のうちの1人、林京子さん(70)=島原市出身、同市在住=に話を聞いた。

 林さんは90年の噴火当初、長崎県の五島で小学校の先生をしていた。噴火災害が続く中、異動の希望を出して島原に帰った時、「街は火山灰で覆われ、灰色一色だった」と語る。雨の日は、火山灰が泥となって降り注ぎ、子どもたちは外出の際、ヘルメット、ゴーグル、マスクを着けた。

 一部の小中学校が休校し、一つの学校に2校の生徒が通った時期もあった。「人数が倍になりプールや運動場もぎゅうぎゅうになったが、お互いさまだから助け合おうという気持ちも生まれた」と振り返る。

 噴火から30年近くが過ぎた。林さんは「災害の記憶が風化しないように、あなたたちが次の世代に噴火のことを伝える役目を果たして」とほほえんだ。

 林さんは島原半島ジオパークのガイドもつとめ「火山がある島原ならではの地形や自然の魅力を観光客に紹介したい」と言った。こども特派員たちは「普賢岳の恵みと危険を理解した上であふれ出る、ふるさと島原への強い愛」を感じた。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼雲仙岳災害記念館(愛称・がまだすドーム) 2002年に長崎県が寄付金など43億円を投じて開館させた。入場料は災害展示が大人1000円、中高生700円、小学生500円。こどもジオパークは300円。ワンダーラボは500円。同館=0957(65)5555

【紙面PDF】きょうのテーマ=噴火の記憶 子どもたちに

=2018/09/06付 西日本新聞朝刊=

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