【きょうのテーマ】市民の命を守れる人に 福岡県消防学校(嘉麻市)を訪ねる

ロープを使って壁を登る訓練では、生徒たちの「上がれ上がれ」の声がひびいた
ロープを使って壁を登る訓練では、生徒たちの「上がれ上がれ」の声がひびいた
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倒壊した家屋から被災者を救助する訓練に使う施設
倒壊した家屋から被災者を救助する訓練に使う施設
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野見山教官(左)から消防士が着る防火服を着せてもらった
野見山教官(左)から消防士が着る防火服を着せてもらった
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 ●災害現場再現 伝わる緊張感

 災害現場で活躍する消防士など消防職員の新人教育を行う学校があります。危険な状況で自分の命を守りつつ市民の命を守る人材の育成を目指しています。その一つ、福岡県消防学校(同県嘉麻市)をこども記者が訪ね、訓練に汗を流す生徒と教官を取材し、任務への思いを聞きました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=市民の命を守れる人に

 同校の敷地面積はヤフオクドームより一回り大きい約8・3万平方メートルある。屋外で防火服姿の生徒がホースを延ばす訓練をしていた。野見山陽平教官(40)がこども記者に防火服を着せ、呼吸用ボンベを持たせてくれた。ボンベはずっしり重く2人でも持てない。火災現場で消防士が身に着ける装備は重さ30キロにもなると聞き、力持ちにしかできない仕事だと思った。

 生徒は4月入校、9月卒業の全寮制。本年度は119人で、このうち9人が女性だ。平日は毎朝6時半に起床し、訓練と講義)が計7時限ある。夜11時消灯だが、野見山教官から「災害はいつでも起こる。深夜に不意打ちで非常呼集の訓練も行う」と聞いて驚いた。

 ■壁を乗り越えて

 高さ7メートルの壁をロープで登る訓練では、生徒たちが「上がれ上がれ」と大声をかけ、緊張感が伝わってきた。2階建ての家、コの字形のダクト(排気管、真っ暗な部屋…。あらゆる現場の状況を想定した施設があった。倒壊家屋の屋根から入って被災者を救助する訓練のための施設を見て、熊本地震の被害を思い出した。災害現場をリアルに再現し、より実践的な訓練にするための工夫を感じた。

 屋外訓練場の一角に高さ約3メートルの分厚い壁が立っていた。野見山教官は「この壁を道具を使わず乗り越えて一人前の消防士と言える」と話した。壁には無数の靴跡が残っていた。生徒の体力と精神力に感動した。

 ■自分の命も大切に

 取材中、生徒とすれ違うと大きな声で「こんにちは」とあいさつしてくれた。訓練で汗まみれの笑顔が印象的だった。野見山教官は「あいさつは大切。まずは地域に親しまれるすてきな人間になろう」と言った。生徒に一番教えたいことを聞くと「消防の仕事には危険が伴う。自分の命を守れない者は人の命も守れないと、訓練で心に刻んでほしい」と表情を引き締めた。

 校内には殉職した消防士の名前が彫られた慰霊碑があった。こども記者たちは手を合わせて、9月19日に卒業し、現場に出る生徒の無事も祈った。

 ●人のために働く消防士 一生の仕事に

 こども記者たちは、福岡県消防学校で学んでいる茅原真衣さん(26)=北九州市消防局=と新原圭祐さん(26)=春日・大野城・那珂川消防本部=に話を聞いた。

 志望動機について、茅原さん=写真(右)=は「消防士の訓練を見る機会があり、私も困っている人を助けたいと思った」、新原さん=写真(左)=は「人のために働ける消防士にあこがれ、一生の仕事にしたいと思った」と語った。

 訓練や講義を受けて成長した点を聞くと「粘り強く訓練に付いていく、あきらめない心をもらった」(茅原さん)、「訓練が進むにつれ、命に関わる現場を知る教官の言葉の重さを実感している」(新原さん)。

 2人は「きついときは仲間が励ましてくれて、誰も訓練から脱落させない絆を育てることができた」と共同生活の成果を話した。こども記者たちは「消防学校で得られるのは災害現場で役立つ知識や技術だけではない。市民と仲間の力になりたいという強い心だ」と思った。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼消防士になるには 高校や大学などを卒業した後、各自治体の消防局、消防本部の採用試験に合格しなければならない。試験は主に1次が筆記、2次が体力と面接。採用された職員全員が「消防士」になり、消防学校で約800時間の初任教育を受けて、現場に出る資格を得る。卒業後、それぞれの消防局、消防本部の各部署に配属される。

 福岡県消防学校では消防学校がある福岡市を除く、県内の新人消防士などに訓練を行う。

【紙面PDF】きょうのテーマ=市民の命を守れる人に

=2018/09/13付 西日本新聞朝刊=

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