【きょうのテーマ】田原坂で平和を考えた 「戦死した若者にはどんな未来があったんだろう」

田原坂を歩く。昔は道幅がせまく政府軍を迎え撃つには絶好の地形だった
田原坂を歩く。昔は道幅がせまく政府軍を迎え撃つには絶好の地形だった
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正面を横切っている細い道が田原坂
正面を横切っている細い道が田原坂
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資料館で中村館長から西南戦争の説明を聞いた
資料館で中村館長から西南戦争の説明を聞いた
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田原坂公園内には戦闘で被弾した家屋を復元した「弾痕の家」もある
田原坂公園内には戦闘で被弾した家屋を復元した「弾痕の家」もある
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「美少年像」の背後に立つクスノキには銃弾が食い込んでいる
「美少年像」の背後に立つクスノキには銃弾が食い込んでいる
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榴弾の実物を持つ。ずっしりとした重さにおどろいた
榴弾の実物を持つ。ずっしりとした重さにおどろいた
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博愛社ゆかりの正念寺の境内に立つ石碑
博愛社ゆかりの正念寺の境内に立つ石碑
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 薩摩(現在の鹿児島など)出身の明治維新の英雄、西郷隆盛は1877年2月、新政府に反旗をひるがえし、西南戦争を起こします。薩摩軍と政府軍の最大の激戦地が田原坂(熊本市北区植木町)です。こども記者が史跡や資料館がある田原坂公園と田原坂を歩き、戦争と平和を考えました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=田原坂で平和を考えた

 なぜ田原坂が激戦地になったのか。田原坂西南戦争資料館の中村和徳館長(61)に聞いた。田原坂は熊本城を築いた武将、加藤清正が北からの攻撃に備えて開いた道とされる。長さ約1・5キロ、道幅は約4メートルで曲がりくねっている。中村館長は「この地形では大部隊でも実力を出せない。応援に来る政府軍を迎え撃つ絶好の場所」と解説した。

 降りしきる雨の中、戦いは3月4日から17日間続いたが、途中で薩摩軍は弾薬や食糧が尽きてしまう。田原坂の戦いの前、薩摩軍は熊本城に籠城した政府軍を攻めあぐね、物資を消耗した。これが田原坂での敗因の一つになった。西郷は熊本から撤退する際に「政府軍に負けたのではない。熊本城に、清正公に負けたのだ」と悔やんだという。

 館内には両軍の兵器も展示されていた。私たちは地上で爆発して破片をまき散らす殺傷能力の高い砲弾「榴弾」の実物を持ち上げた。冷たい手触りから戦争の残酷さが伝わった。

 ■13歳も戦争に行った

 ボランティアガイドの山内俊雄さん(46)が田原坂公園内の史跡を案内してくれた。民謡「田原坂」に出てくる「美少年」の像があった。薩摩軍側に馬に乗って戦場を駆けた少年がいたという逸話から生まれた。像の背後にある樹齢350年以上のクスノキには銃弾が食い込んでいる。激戦を物語る「生き証人」だ。

 山内さんは「西南戦争の最大の悲劇は両軍とも多くの若者が動員され、犠牲になったこと」と語った。記録では薩摩軍には13歳の少年もいたと知り、心がざわついた。山内さんは「戦死した若者にはどんな未来があったんだろうね」と像を見上げた。

 ■鳥の声に平和かみしめ

 政府軍の出撃地点だった豊岡眼鏡橋を渡って、田原坂を歩いた。西南戦争での戦死者数は薩摩軍6784人、政府軍6843人で、約4分の1がこの地に散った。今はミカン畑がある静かな場所で多くの人が死んだとは信じられなかった。

 歩きながら中村館長から聞いた「警視抜刀隊」のことを考えた。元士族(武士だった人たち)の巡査で編成した隊で、政府軍に刀の腕を見込まれ戦いに参加し、勝利に貢献した。幕末の戊辰戦争の際に旧幕府側で敗れ、西郷にうらみを持つ者も多く、「戊辰の復讐!」と叫び、薩摩軍に切り込んだという逸話もある。

 戦争が生んだ憎しみは次の戦争を生み出していく。田原坂でさえずる鳥の声に平和をかみしめながら、今も内戦が続く国々の未来を思った。

 ●悲劇から生まれた光……博愛社

 熊本での戦いに敗れた薩摩軍は、最後は城山(鹿児島市)で包囲され、9月24日に西郷が自決。西南戦争は政府軍の勝利に終わる。西郷が挙兵した理由は、武士の役割や経済的特権を否定した政策への不満とされる。鹿児島に帰った西郷への政府の監視や挑発が原因とする説もある。

 西南戦争の悲劇から生まれた「光」もあった。佐賀出身で医学を学んだ元老院議員・佐野常民は熊本の戦地を視察し、「敵人の傷者といえども救える者はこれを救うべし」と掲げる医療組織「博愛社」(日本赤十字社の前身)を設立した。

 博愛社の最初の活動地と伝えられる正念寺(熊本県玉東町を訪ねた。田原坂に近く、政府軍の病院が置かれた。境内には同社発祥を記念する石碑が立っていた。寺の門には銃弾の痕が残り、危険の中で治療を続けた医師たちに感動した。

 薩摩軍の壊滅で「武力より言論で国を変えよう」という政党や思想家の動きも生まれ、「自由民権運動」につながっていく。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼熊本市田原坂西南戦争資料館 同市北区植木町。1983年に旧植木町の施設として開館し、熊本市と合併後の2015年にリニューアルオープンした。映像と音で田原坂の戦いをリアルに再現したコーナーや武器や古文書などの展示がある。入館料は高校生以上300円、小・中学生100円。12月29日~1月3日は休館。同館=096(272)4982。

【紙面PDF】きょうのテーマ=田原坂で平和を考えた

=2018/10/23付 西日本新聞朝刊=

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